包丁を買いに行く前に決めることがある
台所に立ってみようと思った日に、まず検索するのは道具かレシピのどちらかだろう。ところが最初の一週間でつまずく原因は、たいていそのどちらでもない。帰宅してから何を作るか決める段取りが用意されていないことのほうが多い。
農林水産省の食育に関する意識調査報告書(令和6年3月)現在の食生活についてを見ると、普段の食事をどう準備しているかという問いに対し、ほとんどのものを食材から調理していると答えた人は28.8%だった。一部に市販食品を取り入れている人が39.7%、ほとんど市販食品に頼る人が7.8%、自分では準備していない人が23.0%となっている。
つまり、全部を一から作っている人は3割に満たない。同調査の調査の概要によれば、この調査は全国の20歳以上を対象に5,000人へ配布し、2,309人から回答を得たものである。多数派は市販のものと手作りを混ぜており、そこを出発点にしてよいという裏づけになる。
この記事では、そろえる物、最初に作る物、買い物の順番という三つの入口から、止まらずに続く形を組み立てていく。
道具は五区分、調味料は六つで足りる
売り場に並ぶ調理器具は種類が多く、専用品ほど魅力的に見える。ただ、家庭料理で登場回数が多い動作は、焼く、煮る、和える、ゆでるの四つしかない。この四つを回せる最小構成が決まれば、残りは必要になってから足せばよい。
| 区分 | 最初にそろえるもの | 後回しでよいもの |
|---|---|---|
| 火にかけるもの | 直径20cm前後のフライパン、片手鍋 | 中華鍋、圧力鍋、両手鍋 |
| 切るもの | 三徳包丁1本、まな板1枚 | ペティナイフ、パン切り包丁 |
| はかる・混ぜる | 計量スプーン、耐熱ボウル、菜箸 | はかり、泡立て器、バット |
| 基本の調味料 | 塩、しょうゆ、みそ、酢、油、砂糖 | みりん、料理酒、市販のたれ類 |
| 保存 | 密閉容器を3つ、ラップ | 真空保存器、専用の冷凍容器 |
フライパンは直径20cm前後が扱いやすい。小さすぎると二人分が入らず、大きすぎると一人分で油が広がりすぎる。片手鍋は汁物とゆで物を兼ねるので、容量は1.5リットルほどあると困らない。ふた付きなら蒸し焼きにも使える。
調味料は塩、しょうゆ、みそ、酢、油、砂糖の六つを押さえる。和洋中の家庭料理はほぼこの組み合わせの配分で説明がつく。市販のたれや合わせ調味料は便利だが、最初から頼ると味の仕組みが見えないまま棚だけが埋まっていく。
住まいを整える段階で買い物を済ませたいなら、大学生の一人暮らし準備リスト|入居前にそろえる物と費用の目安のように入居前に並べておく考え方が無駄を減らす。後から買い足すほど、同じ役割の物が重複しやすい。
最初の一品は失敗しにくい形から選ぶ
何を作るかで迷ったときの基準は、おいしそうかどうかではなく、火加減と時間の許容範囲が広いかどうかである。多少長く煮ても短く切り上げても食べられる料理は、初めの数回で心が折れにくい。
その条件に合うのが、具だくさんの汁物、炊き込みご飯、野菜炒め、ゆで野菜の和え物あたりになる。いずれも材料を切って加熱するだけで、仕上がりの幅が広い。逆に、焼き加減が味を決めるステーキや、温度管理が要る揚げ物は、慣れてからのほうが楽しめる。
手順を覚えるときは、レシピを一回ずつ読み替えないで済む形に直しておくとよい。材料を切る、加熱する、味を付ける、という三段に分けて紙に書けば、同じ型で別の料理に置き換えられる。みそ汁の具を変えるだけで一週間は違う味になる。
味付けで迷ったときは、先に薄く作って後から足す順番を守るとよい。塩としょうゆは入れ過ぎると戻せないが、足りない状態からは何度でも直せる。レシピの分量の8割から入れて、食べながら合わせていくほうが、結果として自分の好みに早く近づく。
量については、最初から二人分を作る前提で始めるほうが続く。一人分は加熱時間の調整が難しく、材料も半端に余る。翌日に回せば調理の回数が減り、片付けの負担も自然に軽くなる。
知識が足りないと感じる人は3割近くいる
自信のなさは本人の資質ではなく、よくある状態である。先の食育に関する意識調査報告書(令和6年3月)現在の食生活についてでは、食品の選択や調理についての知識があると思うと答えた人が合わせて70.6%だった一方、あまりないと思う人が26.0%、まったくないと思う人が2.8%を占めている。
4人に1人以上が足りないと感じている計算になる。ここで効くのは網羅的な学習ではなく、判断に迷う場面を減らす道具立てである。計量スプーンを使えば味付けの再現性が上がり、同じ料理を二度目に作るときの修正ができる。
食材の扱いも、覚える順番がある。肉と魚は買った日に使うか冷凍し、葉物は立てて冷蔵する。この二つを守るだけで廃棄が減り、料理の失敗の多くは鮮度ではなく加熱時間の問題だと切り分けられるようになる。
同じ調査では朝食を食べる頻度も聞いており、ほとんど毎日食べる人が78.6%である一方、20歳代から30歳代の若い世代では61.8%にとどまり、ほとんど食べない人が18.7%に上る。朝に火を使わず、前夜の汁物を温め直すだけの形を用意しておくと、ここは埋めやすい。
買い物の順番が味と続きやすさを決める
献立を考えてから買いに行くか、買ってから考えるか。続いている人の多くは後者に近い。安い旬の野菜を2種類と、使い回しのきくたんぱく源を2種類買い、帰ってから組み合わせを決める形である。
買い出しの回数は週に1回か2回に固定すると、在庫の把握が楽になる。毎日寄ると判断の回数が増えるうえ、買い過ぎに気づきにくい。冷蔵庫に残っているものを先に使い切る習慣は、食費の面でも効いてくる。
家計との関係を整理したい場合は、大学生の節約の始め方|最初の1か月でやることと続けるための手順のように最初の一か月でやることを決めてしまうやり方が合う。月々の支出全体の中で食費がどの位置にあるかは、大学生の一人暮らしの月生活費|月10万4千円の内訳と固定費で示される内訳と突き合わせると把握しやすい。
人と一緒に作る機会があるなら、上達の速さは一人で続けるときの比ではない。FLASPOが関わる地域の催しのように、合宿や共同の台所で何十人ぶんかを回す経験は、段取りの組み方を一度に覚えさせてくれる。
よくある質問
レシピはどこで探すのがよいか。最初のうちは出どころを一つに絞るほうが混乱しない。分量の書き方や火加減の表現が媒体ごとに違うため、複数を行き来すると再現が難しくなる。同じ書き手の作る料理を10回作れば、書かれていない加減が読めるようになる。
一人分だと材料が余って損をしないか。使い切れない野菜は切って冷凍するか、汁物にまとめて入れてしまえばよい。余りを前提に、週の後半は残り物を集める日と決めておくと、捨てる量がはっきり減る。
電子レンジだけでも始められるか。加熱という点では十分に始められる。下ゆでや温め直しは電子レンジのほうが早く、鍋を出さない日があってもよい。ただし焼き色の付く料理と香りを立てる炒め物は再現しにくいので、どこかでフライパンが要る。
外食や総菜を使うのは負けになるのか。調査でも一部に市販食品を取り入れている人が39.7%と最も多く、混ぜて使うのが一般的な形である。惣菜を主菜にして汁物と野菜だけ自分で足す日があってよく、むしろその逃げ道があるほうが長く続く。
どのくらい続ければ慣れるか。目安は同じ料理を3回繰り返すことである。回数ではなく繰り返しが効くので、定番を3品決めて交互に作ると、2週間ほどで手が勝手に動くようになる。品数を増やすのはそれからでよい。
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