編入は抜け道ではなく、法律が用意した三本の入口である
短期大学や専門学校に入ってから四年制大学に移る道を、例外的な裏口のように語る人がいる。実際は逆で、学校教育法が条文で明記した正規の入口が三本ある。短期大学については第百八条が「第二項の大学を卒業した者は、文部科学大臣の定めるところにより、第八十三条の大学に編入学することができる」と定める。高等専門学校については第百二十二条が「高等専門学校を卒業した者は、文部科学大臣の定めるところにより、大学に編入学することができる」と置く。専門学校については第百三十二条が、専修学校の特定専門課程を修了した者に同じ資格を与えている。三本とも条文の構造は同じで、卒業または修了という事実に対して編入学の資格が付いてくる形になっている。進路の途中で方向を変える人が一定数いることを、制度の側が最初から想定して作られているということである。
専門学校から行く場合だけは、課程の側に条件が付く。特定専門課程とは、学校教育法第百二十五条の二が「修業年限が二年以上であることその他の文部科学大臣の定める基準を満たす専門課程」と定義したものだ。文部科学省の説明によれば、その基準は修業年限二年以上、全課程の修了に必要な総授業時数が千七百単位時間(六十二単位)以上、試験等による評価に基づいて課程修了を認定すること、の三点である。これは「専門士」の称号が付与される課程の要件とほぼ重なる。つまり専門士を取れる課程を選んでおけば、卒業時点で編入学の資格も手元に残る。入学する学校を決める段階で課程の時間数を確かめておくと、二年後の選択肢の幅が変わってくる。
年に6,784人が通っている道で、出発点によって行き先が違う
どれくらいの人が実際に移っているのかは、文部科学省の学校基本調査に出ている。令和6年度の学部別編入学者数を昼間部と夜間部を合わせて数えると、短期大学からが3,039人、高等専門学校からが2,584人、専修学校の専門課程からが1,116人、高等学校の専攻科からが43人、特別支援学校の専攻科からが2人で、合計6,784人になる。令和5年度の同じ集計は7,926人だったので、一年で1,142人減っている。減少の大半は短期大学からの分で、3,609人から3,039人へ落ちた。同じ調査では短期大学の在学者数が78,295人、前年度より8,394人の減少となっており、編入の母集団そのものが縮んでいることが数字に表れている。道が狭くなったのではなく、出発点に立つ人が減っている。
| 編入元 | 令和6年度 | うち国立 | うち公立 | うち私立 | 令和5年度 |
|---|---|---|---|---|---|
| 短期大学 | 3,039人 | 243人 | 108人 | 2,688人 | 3,609人 |
| 高等専門学校 | 2,584人 | 2,216人 | 86人 | 282人 | 2,583人 |
| 専修学校(専門課程) | 1,116人 | 180人 | 51人 | 885人 | 1,651人 |
| 高等学校(専攻科) | 43人 | 15人 | 8人 | 20人 | 83人 |
| 特別支援学校(専攻科) | 2人 | 2人 | 0人 | 0人 | 0人 |
| 合計 | 6,784人 | 2,656人 | 253人 | 3,875人 | 7,926人 |
表の横並びを見ると、出発点ごとに行き先がまるで違うことが分かる。高等専門学校から移った2,584人のうち2,216人、八割以上が国立大学に入っている。これは高専五十八校のうち五十一校が国立であることと無関係ではなく、学年進行と科目の対応が整えられてきた結果でもある。対して短期大学から国立大学へ入ったのは243人で、全体の八%ほどにとどまる。専修学校の専門課程からも180人である。国立大学を目標に置くなら、出発点をどこにするかの選択が、二年後の確率をそのまま左右するということになる。
編入組だけ、既修得単位の六十単位という上限から外される
制度上いちばん大きな利点は、人数ではなく単位の扱いにある。大学設置基準は、在学中の学生が他の大学で履修して修得した単位を認定できる範囲を第二十八条第一項で六十単位までと定め、大学以外の教育施設での学修を認める第二十九条、入学前の既修得単位を認める第三十条も、合わせて六十単位を超えないとしている。ところが第三十条第四項には「編入学、転学等の場合を除き」という書き出しが置かれている。編入学で入った学生については、この六十単位の枠が外されているのだ。卒業の要件は第三十二条第一項が百二十四単位以上と定めているので、短期大学や専門学校で積んだ単位を六十単位より多く認めてもらえれば、残りを二年で積む計算が立つ。三年次編入という形が成り立っているのは、この一文があるからである。
| 学生の区分 | 認定できる単位数の上限 | 根拠 |
|---|---|---|
| 在学中に他大学で履修した分 | 六十単位まで | 第二十八条第一項 |
| 大学以外の教育施設での学修 | 上と合わせて六十単位まで | 第二十九条第二項 |
| 入学前に修得していた分(一般) | 上と合わせて六十単位まで | 第三十条第四項 |
| 編入学・転学等で入った場合 | 六十単位の上限の対象外 | 第三十条第四項の除外 |
| 卒業に必要な単位数 | 百二十四単位以上 | 第三十二条第一項 |
ただし条文が許しているのは上限の撤廃までで、何単位を認めるかを決めるのは受入先の大学である。第三十条はいずれの項も「教育上有益と認めるとき」という条件から始まる。認定は権利ではなく判断であって、同じ成績証明書を持って行っても大学によって結果が変わる。大学の卒業要件と履修計画で整理した積み上げの順番は、編入した側にも同じように効いてくる。出願前に、志望先が過去にどの科目をどれだけ認めてきたかを問い合わせておくのが、唯一の確かめ方になる。
学費の払い方を途中で組み替えられる
お金の面でも組み替えが効く。国立大学等の授業料その他の費用に関する省令は、国立大学の学部の授業料を年額535,800円、入学料を282,000円という標準額で示している。短期大学の学科は授業料390,000円、入学料169,200円である。私立はこれより高く、文部科学省の令和7年度調査では私立大学の学部が授業料968,069円、入学料240,365円、施設設備費172,550円で、三項目の合計が1,380,983円。私立の短期大学と大学短期大学部は授業料734,328円、入学料236,054円、施設設備費170,132円で合計1,140,514円だった。二年分を短期大学で過ごしてから国立大学へ編入すれば、四年を私立大学で通う場合より納める総額を抑えられる組み方が成立する。
もう一つの効き方は、進路の決定を二年遅らせられるという点にある。十八歳の時点で四年分の学費を投じる先を決めきれないなら、まず二年の課程に入って資格と単位を積み、そのあとで四年制の学部を選び直す。この順番なら、二年目に方向が変わっても四年分の投資が無駄にならない。授業料の支払いも二つの学校に分かれるため、家計の側から見れば負担の山が低くなる。進学資金の手当てを考えるなら奨学金の種類を一覧で比較で扱った給付型と貸与型の違いを、編入の前後それぞれの時点で確かめておきたい。編入後に改めて在学採用で申し込む形も取れる。
二年の課程で先に手に職を付けてから、学士を取りに行ける
編入のもう一つの実利は、資格と学位を順番に取れることである。看護や保育、歯科衛生、調理、デザインのように、二年または三年の課程で国家資格や専門的な技能を先に身につけられる分野は多い。専門学校の特定専門課程を修了すれば「専門士」と称することができ、これは学校教育法第百三十一条の二が定めた称号である。先に働ける資格を手にしてから大学に移れば、在学中にその資格を使った仕事ができる。学費の一部を自分で稼げるという意味でも、就職活動で語れる経験が増えるという意味でも効く。資格取得のメリットを数字で確かめるで見た採用場面での位置づけは、編入してから学士を重ねる場合にそのまま当てはまる。
順番を逆にすると同じことは起きにくい。四年制大学を出てから専門学校に入り直す形も現実にはあるが、学費と年数は積み増しになる。二年で資格を取り、編入して二年で学士を取る組み方なら、通算四年のまま両方が手元に残る計算が立つ。もちろん認定される単位が足りなければ四年では終わらないので、計算が立つかどうかは志望先の認定実績に依存する。地域で働きながら学び直す選択肢を含めて進路を広く見ておきたいなら、若者と地域の事例を集めたFLASPOのような入口も当たっておくとよい。
よくある質問
編入すると必ず三年次からになるのか。三年次編入が多いが、認定される単位数によって二年次編入となる場合がある。設置基準は上限を外しただけで、編入後の在学年数を決めているわけではない。募集要項に何年次への編入かが書かれているので、出願前にそこを読む。
大学から別の大学へ移ることは編入と呼ばないのか。学校教育法が編入学の資格を定めているのは短期大学、高等専門学校、専修学校の特定専門課程などの修了者である。大学から大学への移動は転学として扱われることが多く、学校基本調査の編入学者数の集計にも含まれていない。
編入学の募集はどの大学にもあるのか。大学設置基準第十八条は「編入学定員を設けるときは入学定員及び編入学定員を明示する」と定めており、枠を置くかどうかは大学の判断である。学部や年度によって募集を出さないこともあるため、志望先の過去数年の実施状況を確かめる必要がある。
高等専門学校から国立大学への編入が多いのはなぜか。高等専門学校は五十八校のうち五十一校が国立で、在学者56,342人の大半が国立に在籍している。受入側の学部も工学系が中心で、科目の対応関係が積み上がってきた。令和6年度は高専から移った2,584人のうち2,216人が国立大学に入っている。
認定された単位は成績としても引き継がれるのか。認定は「授業科目の履修により修得したものとみなす」扱いで、元の成績評語がそのまま移るとは限らない。成績の平均値を使う奨学金の審査や研究室の配属に関わるため、認定単位が評価の計算に入るかどうかを受入先に確認しておきたい。
出典:学校教育法、大学設置基準、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(e-Gov法令検索)、文部科学省令和6年度学校基本調査 学部別編入学者数、専門士・高度専門士の称号とは、私立大学等の令和7年度入学者に係る学生納付金等調査結果について
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