返さないお金と返すお金、入口で二つに分かれる
進学費用を調べ始めた家庭がまず戸惑うのは、同じ「奨学金」という一語が、返さなくてよいお金と卒業後に返すお金の両方を指している点だ。日本学生支援機構(JASSO)の制度は、返還の必要がない「給付奨学金」と、返還が前提の「貸与奨学金」に分かれ、貸与はさらに無利子の第一種と有利子の第二種へ枝分かれする。入口でこの三つを取り違えると、家計の見通しが数百万円単位でずれる。
規模の感覚をつかむため、公的な調査を見ておきたい。令和6年度学生生活調査によると、大学学部(昼間部)で何らかの奨学金を受給している学生は51.1%で、前回調査から3.9ポイント減った。設置者別では国立43.8%、公立54.8%、私立52.4%。短期大学(昼間部)は57.3%である。受給者が使っている制度の内訳は、日本学生支援機構のものが83.0%、それ以外が6.8%、両方の併用が10.2%だった。
言い換えれば、候補を比べる作業はほぼ機構の三つの枠を見分けることに等しい。大学や自治体、民間財団の制度は残りの一割強を占めるにすぎず、まず機構の枠組みを押さえてから周辺を足す順番が効率的だ。
給付奨学金は世帯の区分で支給額が決まる
返還不要の給付奨学金は、申込者が金額を選ぶ仕組みではない。本人と生計維持者の「支給額算定基準額」を合計し、第1区分から第4区分までのどこに入るかで月額が自動的に決まる。予約採用の家計基準では、第1区分が市町村民税所得割の非課税相当、第2区分が100円以上25,600円未満、第3区分が25,600円以上51,300円未満、第4区分が51,300円以上154,500円未満と定められている。加えて、本人と生計維持者の資産の合計が5,000万円未満という条件がある。
月額は学校の設置者と通学形態でも変わる。大学・短期大学・専修学校(専門課程)の金額は次のとおりだ。
| 支援区分 | 国公立・自宅 | 国公立・自宅外 | 私立・自宅 | 私立・自宅外 |
|---|---|---|---|---|
| 第1区分 | 29,200円 | 66,700円 | 38,300円 | 75,800円 |
| 第2区分 | 19,500円 | 44,500円 | 25,600円 | 50,600円 |
| 第3区分 | 9,800円 | 22,300円 | 12,800円 | 25,300円 |
| 第4区分(多子世帯に限る) | 7,300円 | 16,700円 | 9,600円 | 19,000円 |
私立の自宅外が最も手厚く、第1区分なら月75,800円、4年間で360万円を超える。同じ資料には、生活保護を受けている生計維持者と同居する人や児童養護施設等から通う人への加算額も併記されている。
第一種は無利子、ただし選べる月額に上限がある
給付の区分に届かなかった場合に次の候補になるのが、無利子で借りる第一種奨学金だ。利息が付かないため返す額は借りた額と等しく、貸与型の中では条件が最も軟らかい。そのかわり、選べる月額は学校の設置者と通学形態ごとに上限が決まっている。平成30年度以降の入学者では、大学の場合、国公立・自宅が20,000円から45,000円、国公立・自宅外が最高51,000円、私立・自宅が最高54,000円、私立・自宅外が最高64,000円である。
注意したいのは、最高月額を誰でも選べるわけではない点だ。申込時の家計収入が一定額以上なら、最高月額を除いた選択肢の中から選ぶことになる。さらに給付奨学金と併せて受ける場合は併給調整がかかり、第一種の月額が引き下げられたり0円になったりする。給付が決まったのに第一種の入金が想定より少ないという相談は、ここを見落としたことが原因になりやすい。
学力の条件も貸与型では第一種だけが明確だ。予約採用の学力基準は、高校等での全履修科目の評定平均値が5段階で3.5以上、または高等学校卒業程度認定試験の合格とされている。
借りる前に決めておく項目がもう一つある。返還を保証する方法で、保証機関に保証料を払う「機関保証」と、連帯保証人と保証人を立てる「人的保証」のどちらかを申込時に選ぶ。機関保証の保証料は貸与月額に応じて毎月の振込額から差し引かれるため、手元に届く金額は申込んだ月額より少なくなる。人的保証は保証料がかからない一方、返還が滞れば保証人に請求が回る。第一種で所得連動返還方式を希望する場合は機関保証への加入が必要になる。
第二種は幅が広いかわりに利息がつく
必要額が第一種の上限を超えるときに検討するのが、有利子の第二種奨学金である。貸与月額は大学なら20,000円から120,000円まで10,000円刻みで選べ、大学院は50,000円・80,000円・100,000円・130,000円・150,000円の五択だ。学力の数値基準が緩やかで採用されやすく、金額の自由度も高い。
利息の扱いは独特で、在学中は利子がかからない。卒業後に適用される利率は、利子と利率の算定方法によれば上限が年3.0%と定められ、貸与終了時の利率を完済まで使う「利率固定方式」と、おおむね5年ごとに見直す「利率見直し方式」のどちらかを申込時に選ぶ。固定方式は金利上昇の影響を受けないが、見直し方式より当初の利率は高く出る傾向がある。同資料では、令和4年度入学で令和8年3月に貸与が終わった場合の固定方式の利率を2.423%と示している。
月12万円を4年間借りれば元金だけで576万円になる。金額の自由度は、そのまま返還の重さに直結すると考えたほうがいい。返還額の具体的な感覚は奨学金の返還額と初任給から逆算する記事でも扱っている。
授業料等の減免と組み合わせて初めて総額が見える
給付奨学金は単独の制度ではなく、授業料と入学金の減免とセットで「高等教育の修学支援新制度」を構成している。生活費を給付奨学金が補い、学校へ払う分を減免が引き受ける二階建てだ。したがって手元に入る月額だけを比べても、実際の負担は見えてこない。
令和7年度からは多子世帯への支援が広がった。機構の説明では、扶養する子が3人以上の世帯に属する学生は所得制限なく減免の対象となり、上限額は次のように定められている。
| 学校種別 | 国公立・入学金 | 国公立・授業料 | 私立・入学金 | 私立・授業料 |
|---|---|---|---|---|
| 大学 | 28万円 | 54万円 | 26万円 | 70万円 |
| 短期大学 | 17万円 | 39万円 | 25万円 | 62万円 |
| 高等専門学校 | 8万円 | 23万円 | 13万円 | 70万円 |
| 専門学校 | 7万円 | 17万円 | 16万円 | 59万円 |
ただし所得制限がないことと、何もかもが無償になることは別だ。私立大学の授業料の上限は年70万円で、これを超える分は自己負担として残る。資産の合計が5,000万円以上3億円未満なら、給付奨学生に採用されても給付奨学金は0円で、減免だけが適用される。制度の全体像は文部科学省の案内で確認できる。地域での学びや暮らしの選択肢を広げる取り組みはFLASPOでも紹介している。
よくある質問
給付奨学金と貸与奨学金は同時に受けられるのか。受けられる。ただし併給調整があり、給付の支援区分に応じて第一種の貸与月額が減額または0円になる。第二種は調整の対象外なので、給付と第二種の組み合わせは金額をそのまま受け取れる。
第一種と第二種を同時に借りる併用貸与という枠もある。家計基準と学力基準がそれぞれ単独で申し込む場合より厳しくなるため、採用のハードルは高い。月額の合計が大きくなるので、返還の試算を先に済ませてから検討したい。
成績が3.5に届かない場合はどうなるか。第一種の予約採用には例外が用意されており、生計維持者の貸与額算定基準額が0円、生活保護を受給中、社会的養護を必要とする人のいずれかに当たり、学修意欲があると学校から推薦されれば基準を満たす扱いになる。意欲の確認は面談やレポートで行われる。
機構以外の制度も見るべきか。見る価値はある。自治体や民間財団の給付型は返還不要で金額も上乗せできるが、募集時期が学校単位で異なり、情報が届きにくい。在学中の生活費全体の組み立ては生活費の内訳から削る順番をまとめた記事も参考になる。
申込の年度によって金額は変わるのか。変わる。ここで挙げた金額は令和8年度の案内に基づくもので、支援区分の基準額や減免の上限は制度改正で動く。実際に申し込む年度の募集要項と機構の公式ページで、必ず最新の数値を確かめてほしい。
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