フリーランスのデメリット|障壁1位が59.0%という調査の中身

フリーランスのデメリット|障壁1位が59.0%という調査の中身

六割が同じ一点を挙げている

独立の不安を言葉にすると、たいてい複数の心配が束になって出てくる。ところが国の調査でそれを選択肢に分けて数えると、答えは一箇所に強く寄る。

内閣官房日本経済再生総合事務局が全国のフリーランス7,478人から回答を得たフリーランス実態調査結果は、この働き方を続ける上での障壁を尋ねている。収入が少ない・安定しないが59.0%で、他を大きく離して首位に立った。二位は1人で仕事を行うのでネットワークを広げる機会が少ないの17.2%、三位は仕事がなかなか見つからないの15.3%である。

四位以下には、仕事が原因で負傷した場合の補償がないが12.7%、就業時間や休日に関する規制がないが11.1%、契約条件があいまい・事前に明示されないと社会的信用を得るのが難しいが同じ10.7%で並ぶ。収入の不安が突出している一方、残りの項目は一割前後で横並びになっている。つまり困りごとは一つに集中しているのではなく、収入という大きな柱の周囲に、性質の違う問題がいくつもぶら下がっている形である。

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取引先が一社に寄ると、自由の裏側が見えてくる

相手を選べるのが独立の利点だとされる。ただ現実の分布はそこまで広がっていない。同じ調査で直近一年間の取引先数を尋ねると、1社のみと答えた人が40.4%を占めた。2社が18.0%、3〜4社が21.8%、5社が19.8%である。

一社に集中すると、収入の全額がその相手の都合に連動する。しかも働き方そのものが勤務に近づいていく。事業者から業務委託を受けている人のうち36.8%が業務の内容や遂行方法について具体的な指示を受けており、16.0%が勤務場所や勤務時間を指定されている。報酬が作業に要した時間数に基づいて計算されている人も12.9%いた。

さらに10.5%は、具体的な仕事の依頼や業務従事の指示を断ることができないと答えている。断る自由がなく、指揮を受け、時間で報酬が決まるという三点が揃うと、それは契約の表題にかかわらず労働者として扱われるべき状態に近い。自由の代わりに裁量を手放していることに気づきにくいのが、この働き方の落とし穴である。

契約の入口でつまずくことが、いちばん多い

もめごとは例外的な事故ではない。事業者から業務委託を受けて仕事をしているフリーランス3,234名のうち、取引先とのトラブルを経験したと答えたのは1,220名で、およそ4割に当たる。

内容を見ると、支払や納品といった後工程ではなく、最初の一歩で起きていることがわかる。

取引先との間で経験したトラブルの内容 経験者のうちの割合(%)
発注の時点で、報酬や業務の内容などが明示されなかった 37.0
報酬の支払が遅れた・期日に支払われなかった 28.8
報酬の未払いや一方的な減額があった 26.3
仕様や作業期間・納品日を一方的に変更された 24.4
仕事の業務内容・範囲について揉めた 23.5
代金が低すぎるなど不利な条件での取引を求められた 22.8

首位は発注の時点で報酬や業務の内容などが明示されなかったケースで37.0%だった。報酬の支払が遅れた、あるいは期日に支払われなかったが28.8%、未払いや一方的な減額が26.3%と続く。仕様や納品日を一方的に変更された人も24.4%おり、着手してからの条件変更が常態化していたことがうかがえる。

これらは独立した人の技能不足で起きるものではない。発注の形式が整っていなかったことによって起きている。だからこそ、後述する法律が最初に手を付けたのも、この入口の部分だった。

もめたとき、引いてしまう理由がある

不利な扱いを受けたあとの行動も、調査は追いかけている。トラブルを経験した1,220名のうち、取引先と直接交渉した人は53.9%で過半を占めた。ただし交渉せず受け入れた人が21.3%、交渉せず自分から取引を中止した人が10.0%いる。弁護士など第三者を通じて交渉した人は3.7%にとどまった。

交渉せず不利益を受け入れた260名に理由を尋ねた結果が、この働き方の弱点をよく表している。受け入れないと今後の取引が打ち切られたり減らされたりして活動に大きな支障を来すためが41.2%、受け入れないとその取引が成立しなくなり支障を来すためが27.3%だった。

次の仕事を確保する立場と、条件を是正させる立場が、同じ一人の中で衝突している。取引先が1社のみという人が4割いる構造を思い出すと、引いてしまう選択は不合理ではない。ここは気合いで解決できる領域ではなく、制度の後押しがなければ動かない部分である。

備えと信用を、自分で用意しなければならない

勤め先がある間は自動で付いてきたものが、独立すると自分の手配に変わる。雇用保険の対象から外れるため、仕事が途切れた期間を埋める給付はない。年金は厚生年金から国民年金に移り、健康保険も国民健康保険などへ切り替わる。

けがや病気への備えも同様である。調査で仕事が原因で負傷した場合の補償がないを挙げた人は12.7%いた。これについては2024年11月1日から、厚生労働省の案内にあるとおり企業等から業務委託を受けているフリーランスは業種や職種を問わず労災保険に特別加入できるようになった。ただし特別加入は、都道府県労働局長の承認を受けた特別加入団体に自分で申し込む仕組みであり、放っておいて適用されるものではない。

信用の面では、社会的信用を得るのが難しくフリーランスに対する偏見や誤解があるを挙げた人が10.7%いた。就業時間や休日に関する規制がないと答えた人も11.1%で、休む判断まで自分で下す必要がある。技能の更新も後回しになりやすく、就業構造基本調査では本業のみのフリーランスのうち職業訓練や自己啓発をしなかった人が67.1%に達した。副業として取り組む人の45.0%と比べると、本業にしたほうが学び直しの時間を失っているという逆転が起きている。

職種別の収入の幅や繁閑については、動画編集の収入の相場やプログラミングで独立する場合の実態に具体的な数字がある。

2024年の法改正で埋まった部分と、残った部分

ここまで挙げた問題のうち、契約の入口に関するものは制度の側が動いた。2024年11月1日に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法は、発注側に業務委託をしたら直ちに取引条件を書面または電磁的方法で明示する義務を課した。明示項目は報酬の額や支払期日を含む9項目である。報酬は給付を受領した日から起算して60日以内に支払われなければならず、契約期間が1か月以上なら受領拒否や報酬の減額、買いたたきなどが禁じられる。6か月以上の契約を解除したり更新しない場合は、少なくとも30日前までの予告が必要になった。詳細は国のガイドラインに整理されている。

明示されなかった、支払が遅れた、一方的に減額されたという上位三つの不満は、いずれもこの義務の射程に入る。制度の側から見れば、トラブルの中身に対応する手当てはひととおり置かれたことになる。

一方で、埋まっていない部分も残る。59.0%が挙げた収入の不安定さは、発注側の義務では解消しない。取引先を一社から増やすのも、閑散期の資金を用意するのも、技能を更新し続けるのも、引き続き自分の課題である。制度は交渉の土台を整えたが、仕事を取ってくる仕組みそのものを代わりに作ってくれるわけではない。

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よくある質問

デメリットのうち、最初に手を打つべきものはどれですか

収入の不安定さが59.0%と突出しているため、ここに直結する取引先の数から着手するのが現実的です。1社のみという人が40.4%を占める現状では、二社目を開くだけで一社の都合に左右される度合いが下がります。

フリーランス法ができたので、トラブルは心配しなくてよいのでしょうか

義務の対象になるのは発注側の行為です。明示がない、支払が60日を超える、理由のない減額があるといった場面では法を根拠に是正を求められます。ただし違反を申し出るかどうかは本人の判断であり、交渉せず受け入れた人が21.3%いたという構図がすぐに消えるわけではありません。

労災保険に特別加入すれば、会社員と同じ保障になりますか

仕事中や通勤中のけがや病気への補償は得られますが、雇用保険にあたる失業時の給付は対象外です。年金も国民年金が基礎になるため、上乗せを用意するかどうかは自分で決めることになります。

指示を受けて働いている場合、立場は変わりますか

国のガイドラインは、契約の形式ではなく就労の実態で判断するとしています。仕事の依頼を断る自由がない、業務遂行に具体的な指揮監督を受けている、時間や場所の拘束がある、他人に代われないといった事情が重なると、労働関係法令が適用される労働者と判断される場合があります。


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