どこで探すかより先に、何を探すかが決まっていない
副業の募集を眺めていると、時給の高いもの、在宅でできるもの、すぐ始められるものに目が行く。それでも最初の数件で決めきれないのは、探す場所の問題ではなく、条件が自分の中で固まっていないからである。
先に決めておきたいのは三つだ。雇われる形で働くのか、仕事を請ける形にするのか。週のうち何曜日の何時から何時間を空けられるのか。そして本業の顧客や取引先と重ならない領域はどこか。この三つが決まると、見るべき募集の種類が一気に絞られる。
厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインも、労働者が副業・兼業先の求職活動をする場合には就業時間、特に時間外労働の有無等の副業・兼業先の情報を集めて適切な就職先を選択することが重要だと書いている。時給より先に時間の形を見る、という順番である。
ここでは国の指針が名前を挙げている二つの手がかりを起点に、実際にたどれる四つの経路を並べる。あわせて、募集を見るときに確認する項目と、どの地域で機会が多いのかを統計で確かめる。
国の指針が名前を挙げている二つの手がかり
指針の「労働者の対応」には、適切な副業先を選ぶ観点として具体的な方法が二つ書かれている。要約ではなく原文の指し方を見ると、どちらも公的に裏付けのある情報を使えという趣旨だとわかる。
一つ目は企業の公表情報である。指針は、自らのキャリアを念頭に、企業が自社のホームページ等において公表した副業・兼業に関する情報を参考にすることを挙げている。令和4年7月の改定で、企業の側には副業を許容しているか否かと条件付き許容の場合はその条件を公表することが望ましいという項目が加えられた。受け入れる側の条件が先に読める形になったということだ。
二つ目がハローワークだ。指針は、求人内容の適法性等の確認作業を経て受理され、公開されている求人について求職活動を行うことも有効だとしている。ハローワークインターネットサービスでは条件を指定して検索でき、短時間の求人も扱っている。民間の募集と違い、受理の段階で内容の確認を経ているという点が選ぶ理由になる。
この二つに共通するのは、働く条件が文章で示されていることである。時間外労働の有無、所定労働時間、賃金の決まり方が先に読めれば、本業との重なりを机の上で判断できる。問い合わせてから条件が違うと知る展開を避けられる。
実際にたどれる四つの経路を並べる
手がかりを実務の経路に落とすと、たどれる道は四つに整理できる。それぞれ向いている仕事の性質と、確かめておくべき点が違う。
| 経路 | 向いている仕事 | 先に確かめる点 |
|---|---|---|
| ハローワークの求人 | 雇われる形の短時間勤務、土日や夜間の勤務 | 所定労働時間が週20時間に届くかどうか |
| 企業が公表している受け入れ条件からの直接応募 | 本業の専門性をそのまま使う仕事 | 条件付き許容の場合の条件、本業との競業 |
| 仲介のサービスを通した受注 | 書く、作る、教えるなど成果物で納める仕事 | 雇用ではなく請負になること、手数料の率 |
| 本業の人脈や知人からの紹介 | 実績が信用になる専門の仕事 | 秘密保持と、断りにくさが生む時間の膨張 |
一つ目と二つ目は労働契約を結ぶ形になりやすく、この場合は労働時間が通算される。本業で法定時間まで働いた日に重ねると、超えた分が割増賃金の対象になるため、曜日の組み方に制約が出る。
三つ目は仕事を請ける形が多く、時間の通算はかからない。その代わり、報酬から手数料が引かれる率と、支払いが何日後になるかで手元に残る額が変わる。得た収入は、営利を目的とした継続的なものであれば業務に係る雑所得として扱われる。
四つ目は決まるのが早い反面、条件が口約束になりやすい。紹介であっても、作業の範囲と報酬と期限は文章で残しておきたい。本業の取引先に近い相手だと、秘密保持の線引きがそのまま問題になる。
四つを同時に回す必要はない。はじめは一つに絞り、三か月ほど続けてから、時間の収まり方と手元に残る額を見て他の経路を試すほうが、本業への影響を測りやすい。
募集を読むときに、順番に確かめる項目
条件の読み落としは、始めてから効いてくる。指針が挙げている就業時間と時間外労働の有無を軸に、確認する項目を順に並べると次のようになる。
| 確認する項目 | 見落としたときに起きること |
|---|---|
| 所定労働時間と曜日 | 本業の繁忙期と重なり、どちらかを休む形になる |
| 時間外労働の有無 | 定時で帰れる前提が崩れ、通算した時間が上限に触れる |
| 雇用契約か請負か | 時間の通算や保険の扱いが想定と違う |
| 報酬の締めと支払日 | 最初の入金が二か月先になり、資金の見込みがずれる |
| 経費の負担 | 交通費や通信費が自己負担で、手残りが想定を下回る |
| 業務の範囲と秘密の扱い | 本業の情報に触れる作業が含まれ、続けられなくなる |
契約の形については、表題だけで判断しない姿勢が要る。指針は、違法な偽装請負の場合や、請負であるかのような契約としているが実態は雇用契約だと認められる場合には、就労の実態に応じて使用者責任が問われると書いている。細かい指示を受け、時間と場所を指定され、断る自由がないなら実態は雇用に近い。
収入の扱いも募集の段階で見通しておくとよい。国税庁の雑所得の説明は、副業に係る所得として原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得を雑所得の例に挙げ、営利を目的とした継続的なものを業務に係る雑所得としている。金額は総収入金額から必要経費を引いて計算する。前々年分の収入金額が300万円を超えると現金預金取引等関係書類の保存が必要になるため、記録の手間も仕事選びの材料になる。
健康の管理も自分の側の仕事になる。指針は、過労によって健康を害したり業務に支障を来したりすることがないよう、労働者が自ら各事業場の業務の量やその進捗状況、それに費やす時間や健康状態を管理する必要があるとしている。募集を見る段階で、睡眠の時間を削らずに収まるかどうかを基準にしたい。
統計で見ると、機会はどこに多いのか
探す場所を絞るとき、どこでどれだけの人が二つ目の仕事を持っているかという数字が手がかりになる。総務省の令和4年就業構造基本調査は、この分布を都道府県まで示している。
2022年の調査では、農業と林業などを除いた非農林業従事者のうち副業がある者が304万9千人、副業者比率は4.8パーセントだった。地域で比べると京都府が7.5パーセントで最も高く、東京都が6.5パーセント、和歌山県が5.6パーセントで続く。
もう一つ押さえたいのが、副業をしたいがまだしていない人の数である。調査は追加就業希望者として別に数えていて、493万4千人、比率は7.8パーセントとなっている。五年前から93万人増えた。
| 指標 | 2022年 | 五年前からの変化 |
|---|---|---|
| 副業がある者 | 304万9千人(4.8%) | 60万人増、0.9ポイント上昇 |
| うち正規の職員・従業員 | 2.5% | 0.6ポイント上昇 |
| うち非正規の職員・従業員 | 7.2% | 1.3ポイント上昇 |
| 追加就業希望者 | 493万4千人(7.8%) | 93万人増、1.3ポイント上昇 |
| うち正規の職員・従業員 | 7.7% | 2.4ポイント上昇 |
| うち非正規の職員・従業員 | 8.4% | 0.1ポイント低下 |
追加就業希望者の比率は東京都と沖縄県が10.2パーセントで最も高く、神奈川県と京都府が8.8パーセントで続く。希望する人が多い地域は、受け入れる側の募集も比較的多いと見ていい。逆に言えば、居住地の近くで探すより、在宅でできる仕事や都市部の募集に目を向けるほうが選べる幅が広い地域もある。
正社員の側で希望が五年間に2.4ポイント伸びたことは、受け入れ先の性質にも影響する。平日の夜や週末に限って働ける人を前提にした募集が増える流れで、短時間でも専門性を使える仕事が探しやすくなっている。
職種から入る探し方も有効だ。映像の仕事なら動画編集と副業を扱った記事、企業で働きながら新しい事業に関わる形はベンチャーと副業の関係を扱った記事が入口の様子を伝えている。住む場所を変えて探す場合は地方移住後の仕事の探し方の記事が近い。地域と都市をまたぐ働き方の場づくりはFLASPOでも進めている。
よくある質問
どこで探すのが一番確実か。国の指針が名前を挙げているのはハローワークと、企業が自社のホームページ等で公表している受け入れ条件の二つである。どちらも条件が文章で示されるため、本業との重なりを事前に判断できる。
ハローワークは正社員の求人ばかりではないのか。短時間の求人も扱っており、条件を指定して検索できる。指針は、求人内容の適法性等の確認作業を経て受理された求人であることを選ぶ理由として挙げている。
募集を見るとき、最初に確認する項目は何か。所定労働時間と曜日、そして時間外労働の有無である。この二つが本業の時間割に収まらなければ、報酬がよくても続かない。
仲介のサービスと直接応募では、どちらが有利か。有利不利より形の違いで選びたい。仲介は成果物で納める仕事が多く時間の通算がかからない一方で手数料が引かれる。直接応募は雇われる形になりやすく、時間の通算と保険の扱いが絡んでくる。
知人からの紹介は避けたほうがよいのか。避ける必要はない。ただし条件が口約束になりやすいため、作業の範囲と報酬と期限を文章で残しておきたい。本業の取引先に近い相手なら、秘密の扱いを先に決める必要がある。
どのくらいの人が副業先を探しているのか。2022年の調査で、副業をしたいがまだしていない追加就業希望者は493万4千人、比率は7.8パーセントだった。実際に副業がある人の1.6倍の規模にあたる。
住んでいる地域で募集が少ないときはどうするか。在宅で納められる仕事や、都市部の企業が出す短時間の募集に広げるのが現実的だ。副業者比率は京都府の7.5パーセントから県によって大きく差があり、地元だけで探すと母数が小さくなる。
契約書に請負と書いてあれば、労働時間は気にしなくてよいのか。書き方だけでは決まらない。実態が雇用契約だと認められれば就労の実態に応じて使用者責任が問われるため、指示の受け方や時間の拘束の程度を見ておきたい。
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