学生NPOの事例|経常収益600万円・有給職員2人という実像

学生NPOの事例|経常収益600万円・有給職員2人という実像

名前が並んだリストより先に、分母を見ておく

「学生NPO 事例」で検索すると、団体名が十個ほど並んだページがいくつも出てくる。読めば気持ちは動くが、翌日に自分が何をすればいいかは残らない。理由ははっきりしていて、紹介されている団体が全体のどのあたりに位置するのかが書かれていないからだ。目立つものだけを抜き出した一覧は、分布を教えてくれない。

内閣府の集計によれば、2026年8月31日現在で48,754の法人が特定非営利活動法人として所轄庁の認証を受けている。このうち認定または特例認定を受けているのは1,315法人で、全体の3パーセントに届かない。記事で紹介される団体の多くはこの認定側に入る。

さらに見落とされやすいのが増減の向きである。認証法人の数は2021年度末の50,780から下がり続け、2025年度末には49,071になった。一方で認定法人は同じ期間に1,237から1,318へ増えている。総数は縮み、その中で寄附を集められる法人の比率だけが上がっている、という形だ。認証・認定数の遷移の表はこの二本の線をそのまま示している。参加先を探す学生にとっては、空席が増えているのか減っているのかを決める前提になる。

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定款に書いた分野と、実際にやっている分野はずれる

では、現に動いている法人は何をしているのか。内閣府は3年に一度、全国のNPO法人に郵送とオンラインの併用で実態調査をかけている。2023年度の調査は6,591法人を対象に、2023年7月19日から10月3日までの76日間で実施され、2,937法人が答えた。回収率は44.6パーセントである。

この調査が面白いのは、活動分野を二通りの聞き方で尋ねている点だ。定款に掲げた分野をすべて挙げてもらう複数回答と、主たるものを一つだけ選ばせる単数回答。両者を並べると、看板と中身の距離が見える。

活動分野 定款に掲げた分野(複数回答) 主な活動分野(一つだけ選択)
保健、医療又は福祉の増進 56.0% 40.4%
子どもの健全育成 40.2% 13.8%
まちづくりの推進 35.7% 8.1%
社会教育の推進 32.5% 2.3%
学術、文化、芸術又はスポーツの振興 26.7% 11.3%
環境の保全 19.9% 6.6%
国際協力 7.5% 1.5%

いずれも認証法人の数値で、複数回答はn=2,104、単数回答も同じ母数である。社会教育は3割超の法人が定款に書いているのに、主たる活動として選んだのは2.3パーセントしかない。まちづくりも35.7から8.1へ落ちる。定款の分野欄は将来やるかもしれない活動を広めに書く欄で、そこを根拠に事例を選ぶと空振りする。

中央値で描くと、一つの法人の輪郭はかなり小さい

規模の感覚も、平均値だけ見ると歪む。同じ実態調査で役員数を見ると、認証法人の中央値は6.0人、平均値は7.2人。役員以外の職員数は中央値4.0人に対して平均値9.4人で、ここから分布の偏りが読める。給与を受け取る有給職員は中央値2.0人、平均値8.1人。常勤の有給職員にしぼると中央値は1.0人まで下がる。

報酬を受ける役員の数は中央値0.0人だった。これは偶然ではなく、特定非営利活動促進法第2条第2項第1号ロが「役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること」と定めているためである。同法第15条は理事3人以上と監事1人以上を置けと命じているので、最小構成の4人なら報酬を取れる役員は1人までになる。

お金の規模も同じ傾向を示す。特定非営利活動に係る事業の経常収益は、認証法人の中央値が600.4万円、認定・特例認定法人で2,674.5万円。収益から費用を引いた収支差額の中央値は、認証法人でわずか1.1万円である。経常収益が1,000万円を超える法人は認証法人の41.7パーセント、認定・特例認定法人では69.4パーセントを占める。半数近くは、年間の収支がほぼ均衡する小さな事業体だと考えてよい。学生団体とNPOの違いで整理した社員10人という最低ラインと合わせると、手が届く距離にあることがわかる。

ボランティアが一人もいない法人が、三分の一ある

学生が関わる入口は、たいていボランティアである。そこで調査のボランティア欄を見ると、分布は真っ二つに割れていた。前事業年度に事業活動へ携わったボランティアの延べ人数がゼロだった認証法人は32.2パーセント。認定・特例認定法人では14.9パーセントにとどまる。逆に延べ100人以上を受け入れた法人は、認証法人で24.8パーセント、認定・特例認定法人では48.2パーセントに達する。

ここでいう延べ人数は、参加者数に参加者の活動日数を掛けた値だと調査票に明記されている。5人が20日来れば100人である。つまり「延べ100人以上」は大人数のイベントを意味するとは限らず、少人数が継続して通っている状態も含む。

日数で見ると、ボランティアの活動日数が50日以上だった法人は認証法人の29.1パーセント、認定・特例認定法人の50.0パーセント。各区分の中間値を使って平均すると、認証法人50.6日、認定・特例認定法人86.0日となる。週に一度のペースなら年50日前後だから、受け入れる側は週次の関わりを前提に組んでいる法人が多い。単発の手伝いを探しているのか、年間を通して席がほしいのかで、見るべき法人の層が変わってくる。

学生が入り込めるかを見分ける、三つの手がかり

個別の団体を調べる段になったら、確かめる順序を決めておくと早い。手がかりは三つある。

一つめは費用の扱い。何らかの形でボランティア参加者に還元している法人は、認証法人で52.5パーセント、認定・特例認定法人で60.8パーセントだった。内訳では食費・交通費・滞在費のいずれかを現金で支給する法人が26.1パーセントと40.1パーセント。裏を返すと、現金や謝礼を一切支給しない法人が認証法人では43.9パーセントある。交通費が自腹かどうかは、続けられるかを左右する。

二つめは発信の状況。ホームページやブログで活動内容を発信している認証法人は58.5パーセント、認定・特例認定法人は92.7パーセント。SNSでの発信になると33.7パーセントと63.3パーセントまで差が開き、デジタルツールを何も使っていない認証法人が12.0パーセント残る。外から様子が見えない法人は、募集の窓口も見えないと考えたほうがいい。

三つめは世代の構成。代表者の年代は、認証法人で70歳代以上が38.9パーセント、60歳代以上を合わせると67.8パーセントを占める。20歳代の代表者は0.5パーセントしかいない。若い参加者が珍しい現場だという前提で扉を叩くことになる。活動先の探し方そのものは学生ボランティアの探し方で整理したとおりで、自分で法人をつくる側に回るならNPO法人の作り方の手順が下敷きになる。地域の課題に関わる進路を広く見たい人は、FLASPOのような場で地域側の動きに触れておくと、団体選びの基準が具体的になる。

よくある質問

学生だけで運営しているNPO法人はあるのか。法律の側に年齢の壁はない。同法第20条が並べる役員の欠格事由は、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられて2年を経過しない者、暴力団の構成員等といった内容で、年齢による制限は入っていない。ただし代表者の年代の分布が示すとおり、実在する法人の大半は上の世代が担っている。

団体の活動が本物かどうかは、どこで確かめればよいか。所轄庁に提出された事業報告書は閲覧できる仕組みになっており、内閣府の実態調査のような公的な集計と突き合わせれば、規模の説明が誇張されていないかは判断できる。条文そのものはe-Gov法令検索で読める。

分野はどう絞ればよいか。定款ベースの活動分野別の認証数では、2026年3月31日現在の集計対象49,071法人のうち保健・医療・福祉が28,503、社会教育が25,020、子どもの健全育成が24,792と並ぶ。母数が大きい分野ほど受け入れ先の選択肢は多いが、主な活動として選ばれる比率は先の表のとおり別物になる。両方を見比べてから候補を絞るのが確実だ。


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