NPO法人の作り方|10人の社員と2週間の縦覧から逆算する

NPO法人の作り方|10人の社員と2週間の縦覧から逆算する

最初の関門は書類ではなく、人数である

法人化の相談で最も多く詰まるのは、定款の文言でも費用でもない。名前と住所を書いてくれる人を10人そろえられるか、という一点だ。特定非営利活動促進法第12条第1項第4号は、認証の基準として「十人以上の社員を有するものであること」を挙げている。ここでいう社員は従業員ではなく、総会で議決権を持つ構成員を指す。

人数の縛りはもう一段ある。第15条は役員として理事3人以上と監事1人以上を置くことを求め、第21条は役員の構成に親族の制限をかけている。ある役員について配偶者または3親等以内の親族が一人を超えて含まれてはならず、その役員と配偶者・3親等以内の親族を合わせて役員総数の3分の1を超えてもいけない。家族だけで固めた理事会は作れない設計になっている。

さらに第2条第2項は、役員のうち報酬を受ける者の数を役員総数の3分の1以下に抑えるよう求める。第20条には役員の欠格事由が並び、破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者、拘禁刑以上の刑に処せられて執行を終えた日から2年を経過しない者などが挙がっている。

つまり最小構成は、社員10人のなかに理事3人と監事1人を含め、理事と監事の兼任はできない前提で役割を割り振る形になる。学生団体の場合、卒業で抜ける人が毎年出るため、10人ぎりぎりで申請すると翌年に社員が足りなくなる。余裕を見て12人から15人で組むと、役員改選のたびに慌てずに済む。

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定款に書く14項目が、議論の材料になる

人が集まったら次は定款だ。第11条第1項は記載しなければならない事項を14項目列挙している。目的、名称、行う特定非営利活動の種類とその事業の種類、主たる事務所とその他の事務所の所在地、社員の資格の得喪に関する事項、役員に関する事項、会議に関する事項、資産に関する事項、会計に関する事項、事業年度、その他の事業を行う場合の種類など、解散に関する事項、定款の変更に関する事項、公告の方法である。第2項は、設立当初の役員を定款で定めるよう求めている。

この14項目は、法人化の是非を団体内で議論するときの論点表としてそのまま使える。会議の定足数をどうするか、会費を資産として扱うか、年度の区切りを4月にするか。条文が並べた順に答えを埋めていくと、曖昧なまま運営してきた箇所が可視化される。条文から会則の条項を起こす手順は学生団体の会則の作り方で扱っているので、任意団体の段階で先に整えておくと設立時の作業が軽くなる。

注意点が一つある。第11条第3項は、残余財産の帰属先を定款に書く場合、国または地方公共団体、公益社団法人または公益財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、そして他の特定非営利活動法人のなかから選ぶよう定めている。解散したときに残った財産をメンバーで分けることはできない。非営利という言葉の実質はここに表れている。

所轄庁に出す書類と、出した直後に起きること

提出先は第9条が定めている。主たる事務所が所在する都道府県の知事で、事務所が一つの指定都市の区域内だけにある場合はその市長が所轄庁になる。47都道府県と20の指定都市を合わせ、窓口は全国に67ある。条例で書式や部数が変わるため、申請前に所轄庁の案内を取り寄せるところから始まる。

第10条第1項は申請書に添付する書類を8号に分けて挙げる。定款、役員名簿、各役員の誓約と就任承諾の書面の謄本、各役員の住所または居所を証する書面、社員のうち10人以上の氏名と住所を記載した書面、宗教活動や政治活動に関する要件と暴力団に関する要件を確認したことを示す書面、設立趣旨書、設立についての意思の決定を証する議事録の謄本、設立当初と翌事業年度の事業計画書、同じ2年分の活動予算書。役員関係が3種類に分かれるため、実務上は10点の書類をそろえる作業になる。

提出するとどうなるか。第10条第2項により、所轄庁は申請があった旨をインターネットなどで公表し、定款、役員名簿、設立趣旨書、事業計画書、活動予算書を、申請書を受理した日から2週間、指定した場所で公衆の縦覧に供する。役員名簿のうち住所または居所の部分は除かれる。誰が何をしようとしているかが、審査の前に一般に開かれる仕組みだ。

書類に不備があった場合の救済は狭い。第10条第4項は、条例で定める軽微な不備に限って補正を認め、しかも所轄庁が申請書を受理した日から1週間を経過すると補正できないとしている。出す前の点検が効くのはこの1週間だけだと考えて準備したい。

認証から成立までの日数を数える

スケジュールを引くには、法律が区切っている三つの期間を足す必要がある。第10条第2項の縦覧が2週間。続いて第12条第2項により、認証または不認証の決定は、正当な理由がない限り縦覧期間を経過した日から2か月以内に行われる。条例でこれより短い期間を定めた所轄庁では、その期間が上限になる。

認証の通知が届いても、その時点ではまだ法人ではない。第13条第1項は「主たる事務所の所在地において設立の登記をすることによって成立する」と定める。登記の期限は組合等登記令第2条第1項にあり、設立の認可その他設立に必要な手続が終了した日から2週間以内となっている。登記を終えたら、第13条第2項により登記事項証明書と第14条の財産目録を添えて所轄庁に届け出る。

段階 法律が定める期間 根拠
申請書の受理から縦覧の終了まで 2週間 NPO法第10条第2項
軽微な不備を補正できる期限 受理の日から1週間 NPO法第10条第4項
縦覧終了から認証・不認証の決定まで 2か月以内 NPO法第12条第2項
認証の通知から設立の登記まで 2週間以内 組合等登記令第2条第1項
登記しないと認証が取り消され得る期限 認証の日から6か月 NPO法第13条第3項

合計すると、順調に進んで申請から成立まで3か月弱を見ておく計算になる。第13条第3項は、認証を受けた者が認証のあった日から6か月を経過しても登記をしないとき、所轄庁は認証を取り消すことができるとしている。認証はいつまでも手元に置ける切符ではない。

お金がほとんどかからないのは、偶然ではない

株式会社を作ると、定款の認証と設立登記で合わせて20万円前後が出ていく。NPO法人にこの出費がないのは優遇措置があるからではなく、二つの法令の構造がそうなっているからだ。

一つは登録免許税法である。同法第2条は「登録免許税は、別表第一に掲げる登記、登録、特許、免許、許可、認可、認定、指定及び技能証明について課する」と課税の範囲を限っている。別表第一の第24号は会社と外国会社の商業登記を扱い、保険業法による相互会社の登記と、一般社団法人および一般財団法人の登記を含めている。そこに特定非営利活動法人は現れない。課税対象の一覧に載っていないため、設立登記で納める税が生じない。

もう一つは公証人手数料令だ。第35条が定款認証の手数料を定めているのは、会社法第30条第1項による認証と、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第13条・第155条による認証に限られる。NPO法人の定款は所轄庁に提出して認証を受けるもので、公証人の認証を経る仕組みになっていない。

法人の種類 定款認証の手数料 設立登記の登録免許税
特定非営利活動法人 公証人の認証は不要 別表第一に掲げられていない
株式会社(資本金100万円未満) 3万円(要件を満たせば1万5千円) 資本金の額の1000分の7、15万円に満たないときは15万円
株式会社(資本金300万円以上) 5万円 同上
一般社団法人 5万円 申請1件につき6万円

実費としては、役員の住所を証する書面の取得費、登記事項証明書の交付手数料、書類の郵送費などが残る。数万円の桁には収まる。学生団体が法人化を検討するとき、費用は判断材料として小さく、むしろ後述の維持負担のほうが重い。

よくある質問

学生だけで役員を務められるのか。年齢の制限は法律に置かれていない。第20条の欠格事由に当たらなければ理事にも監事にもなれる。ただし監事は理事の業務執行を監査する立場なので、理事と兼ねることはできず、同じゼミの後輩に形だけ頼む運用は避けたい。

事務所は自宅でよいのか。主たる事務所の所在地は定款の記載事項であり登記事項でもあるため、住所は公開される。学生の自宅を登記すると引っ越しのたびに変更登記が必要になる。大学の施設や協力団体の一室を使えるか、申請前に確認しておくと負担が減る。

成立したあと毎年何をするのか。第28条第1項は、毎事業年度の初めの3か月以内に、前事業年度の事業報告書、計算書類、財産目録、年間役員名簿、前事業年度末日の社員のうち10人以上の氏名と住所を記載した書面を作成し、作成の日から5年が経過した日を含む事業年度の末日まで事務所に備え置くよう求める。第29条はこれを毎事業年度1回所轄庁に提出することを義務づけ、第28条の2は貸借対照表の公告を求めている。公告の方法は官報、日刊新聞紙、電子公告などから定款で選ぶ。

収益を生む事業は手がけられるのか。第5条第1項は、特定非営利活動に係る事業に支障がない限り「その他の事業」を行えるとし、利益が出た場合は特定非営利活動に係る事業のために使うよう定めている。第2項により、その他の事業の会計は特定非営利活動に係る事業の会計と区分して経理しなければならない。帳簿を分ける手間を含めて設計する必要がある。収益事業と非収益の線引きの実務はサークルの会計の記事でも触れている。

法人化しないという選択はありなのか。十分にありえる。登記が必要になるのは、団体名義で契約や口座を持つ場面と、法人格を応募条件にする助成金に挑む場面に限られる。そこに当たっていなければ任意団体のまま活動を続けるほうが身軽だ。分岐の立て方は学生団体の作り方で整理している。地域で動く若者の実践例はFLASPOにも集まっているので、先に事例を見てから判断してもよい。

参考にした資料

条文はe-Gov法令検索で確認した。特定非営利活動促進法、組合等登記令、登録免許税法、公証人手数料令の各条文が根拠である。手続の全体像は内閣府の認証制度について、所轄庁の一覧は認証申請受理数・認証数(所轄庁別)を参照した。


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