部室の鍵の話で止まってしまう
公認と非公認はどこが違うのかと先輩に聞くと、返ってくる答えはだいたい三つに収まる。部室がもらえる、掲示板に貼れる、助成金が申請できる。どれも当たっているが、並べる順番が違う。金額に換算していちばん大きいのは保険である。
課外活動中の事故は、多くの大学で学生教育研究災害傷害保険が受け止めている。入学時に大学がまとめて加入している場合も多く、学生の側は自分が被保険者になっていること自体を知らない。ところがこの保険は、何を課外活動と呼ぶかを自分の約款で定義しており、その定義が公認か非公認かという線とほぼ重なっている。
以下は公益財団法人日本国際教育支援協会が公開している約款の条文に沿って見ていく。読むべき箇所は三つだけで、第1条の定義、第2条の支払範囲、第7条に置かれたただし書きである。
約款の第1条が、課外活動をこう定義している
定義条項から入る。普通保険約款の第1条は、課外活動を「大学の規則に則った所定の手続により大学の認めた学内学生団体の管理下で行う文化活動または体育活動」と定め、「ただし、大学が禁じた時間もしくは場所にいる間または大学が禁じた行為を行っている間を除きます」と続ける。
短い一文に条件が四つ詰まっている。大学の規則に則った手続を経ていること、その手続で大学が認めた団体であること、学内の学生団体であること、活動の中身が文化活動または体育活動であること。非公認のサークルが落ちるのは最初の二つで、どれだけ熱心に練習していても、手続を通っていなければ約款のいう課外活動には当たらない。
ここで見落とされやすいのは、対象から外れるのが団体ではなく学生本人だという点である。この保険の契約者は大学、被保険者は個々の学生である。非公認の活動中に骨を折った学生は、自分が加入している保険から支払を受けられない。団体が罰を受けるという話ではなく、個人が補償を失うという話になる。
保険金が出る「間」は三つに分かれている
次に支払の範囲を見る。第2条第1項は、保険金を支払う「間」を三つに切っている。ひとつめは大学の正課中および学校行事に参加している間、ふたつめはそれ以外で学校施設内にいる間、みっつめは学校施設外で大学に届け出た課外活動を行っている間である。三番目に「届け出た」という語が入っているところが、公認の線そのものになる。
区分の違いは金額にも出る。第7条第1項は治療日数に応じた医療保険金の額を十一段に分け、そのうえで、第2条第1項の表のふたつめまたはみっつめに該当する場合は、下表の④から⑪に規定する金額に限ります、というただし書きを置いた。①から③の段、つまり治療日数が14日に届かない範囲は、課外活動中の事故では支払われないという設計である。
| 治療日数 | 医療保険金 | 課外活動中の事故での扱い |
|---|---|---|
| 1日以上4日未満 | 3,000円 | 支払われない |
| 4日以上7日未満 | 6,000円 | 支払われない |
| 7日以上14日未満 | 15,000円 | 支払われない |
| 14日以上30日未満 | 30,000円 | 支払われる |
| 30日以上60日未満 | 50,000円 | 支払われる |
| 180日以上270日未満 | 200,000円 | 支払われる |
| 270日以上 | 300,000円 | 支払われる |
入院は別立てになっている。第7条第2項は、治療日数のなかに入院による日数が含まれている場合、十一段の金額とは別に、180日を限度として入院1日につき4,000円を支払うとする。捻挫や打撲で数日休む程度の事故は課外活動の区分では拾われず、骨折や入院を伴うあたりから拾われ始める。公認を取るかどうかの判断は、この表のどこに自分たちの活動が落ちやすいかで変わってくる。
施設と助成は、省令の側から降りてくる
設備の話に戻る。部室がもらえるかどうかは大学の裁量に見えるが、上には省令がある。大学設置基準第35条は、大学は、学生に対する教育又は厚生補導を行う上で必要に応じ、運動場、体育館その他のスポーツ施設、講堂及び寄宿舎、課外活動施設その他の厚生補導施設を設けるものとすると定める。部室や練習場は、大学が厚生補導のために置いている設備という位置づけになっている。
置く義務がある以上、誰に使わせるかの基準も大学が作らなければならない。だから利用資格は公認団体に絞られ、鍵の貸出が名簿の提出と結びつく。非公認が部室を得られないのは担当者の意地悪ではなく、厚生補導の対象として届け出られていないからである。
窓口の根拠は第7条第3項にある。大学は、学生に対し、課外活動、修学、進路選択及び心身の健康に関する指導及び援助等の厚生補導を組織的に行うため、専属の教員又は事務職員等を置く組織を編制するものとする、という項で、ここに課外活動が明記されている。助成金の原資もこの厚生補導の予算から出る。学生団体という呼び名との関係は学生団体とサークルの違い|大学の公認という線はどこで効くかで分けて書いた。
非公認のまま走ると、請求は個人のところへ届く
非公認を選ぶ理由はある。活動内容に大学の審査が入らない、顧問を置かなくてよい、名簿を出さなくてよい、会計報告の締切に縛られない。小さく始めて様子を見るには向いている。
代わりに引き受けるのが、何かあったときの行き先である。民法第675条第2項は、組合の債権者は、その選択に従い、各組合員に対して損失分担の割合又は等しい割合でその権利を行使することができるとする。大学の名前に守られていない集まりの未払いは、構成員の頭数に割られて個人のもとへ届く。
第709条は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負うと定める。会場の設備を壊した、来場者に怪我をさせたという場面で、公認団体なら大学が用意している賠償責任の枠に乗る余地があるが、非公認では個人の責任としてそのまま残る。
届出の手間は、書類が数枚と年に一度の報告という程度である。その対価として、設備の利用資格、助成の申請先、そして学外活動中の傷害補償がついてくる。天秤にかけるなら、活動が学内で完結しているうちは非公認でも回り、学外へ出た日から公認の値段が跳ね上がる。立ち上げの手順そのものは学生団体の作り方|任意団体のまま進むか法人格を取るかで決めるに揃えてある。
よくある質問
Q. 非公認でも学研災に入っていれば補償されるのではないですか。
A. 加入していること自体は変わりませんが、支払の対象になる「間」に当たらないという形で外れます。学校施設内にいる時間は団体の公認と無関係に対象ですので、学内で練習しているぶんは拾われます。外れるのは学外で行う活動のほうです。
Q. 公認を取るには何年の活動実績が要りますか。
A. 一年から二年の準公認期間を置く大学が多く、その間は非公認と同じ扱いか、設備の一部だけ使える扱いになります。期間の長さと中間の区分の名前は大学ごとに違うので、学生課で現行の規程を見せてもらうのが確実です。
Q. 公認になると活動の内容に口を出されますか。
A. 活動計画と会計報告の提出が条件に入るので、そこを通じた確認は入ります。ただし審査されるのは安全と会計の筋であって、企画の中身を差し替えられるという性質のものではありません。禁止行為の一覧は規程に書かれているので、先に読んでおけば衝突は起きにくい。
Q. 公認団体の事故で、代表が賠償を負うことはありますか。
A. あります。大学の枠に乗るのは保険の支払であって、責任そのものが大学へ移るわけではありません。安全管理を怠った点があれば、第709条の責任は関わった個人に残ります。公認は責任の免除ではなく、備えの受け皿だと考えてください。
Q. 非公認のまま学外で公演をやる場合、どう備えればよいですか。
A. 行事単位で掛けられる傷害保険と施設賠償の特約を自前で用意するのが筋です。会場側が加入を条件にしている場合もあるので、見積の段階で確認してください。学生の活動を仕事の側からどう見るかという材料はFLASPOでも扱っています。
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