設問の語と答えがずれていないかを、書き始める前に確かめる
書き上げたのに通らないESを並べると、文章の出来とは別の場所で落ちていることが多い。「困難をどう乗り越えたか」と聞かれた欄に、困難の説明だけが四百字あって、乗り越えた手順が一行も入っていない。設問の動詞に答えが対応していない型である。
そこで最初の作業は、設問から動詞と目的語を抜き出すことになる。「力を入れたことを教えてください」なら答えるのは活動名ではなく、力の入れ方そのものである。「なぜ当社か」なら、業界の説明ではなく、他社と分かれる理由を書く。設問の文に線を引いて、その語が答えの一文目に入っているかを見る。これだけで書き直しの回数が目に見えて減る。
抜き出した語は、下書きの先頭にそのまま置いておくとよい。書いている途中で話が逸れても、先頭の語が戻る目印になる。設問の語を外して自分の言い回しに置き換えると、読み手は答えを探す側に回ることになる。
一文の長さには、国が示した目安がある
読みにくい文章の原因は、語彙や表現力よりも文の長さにある。文化審議会が令和4年1月7日に建議した公用文作成の考え方は、文の書き方について具体的な目安を置いている。適当な長さは一概に決められないとしながら、50字から60字ほどになってきたら読みにくくなっていないか意識するとよい、と書かれている。
同じ指針には、一文で扱う論点は一つにすること、一文の中に主語と述語の関係をいくつも作らないこと、三つ以上の情報を並べるときは箇条書きを使うこと、「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「どうした」という基本の語順を踏まえることが並んでいる。国の文書の作り方として示された条件だが、字数の限られた欄に事実を詰める作業とは相性がよい。
| 公用文作成の考え方が示す点 | ESで起きがちな形 | 直し方 |
|---|---|---|
| 一文を短くする(50〜60字で見直す) | 背景から結果までを一文でつなぐ | 句点で切り、長い修飾節を別の文に移す |
| 一文の論点は一つにする | 活動の説明と自分の学びが同じ文に同居する | 事実の文と解釈の文に分ける |
| 三つ以上並べるときは箇条書き | 取り組みを五つ読点でつなぐ | 数を先に示し、主要な二つだけ展開する |
| 基本の語順を踏まえる | 主語が最後まで出てこない | 時期、場所、自分、対象、動作の順に置く |
| 受身形をむやみに使わない | 「任された」「評価された」が続く | 自分を主語にして動詞を能動に戻す |
| 二重否定は必要なときだけ | 「できないわけではない」 | 「できる場合もある」と言い切る |
| 同じ助詞を連続して使わない | 「の」が三つ続く名詞の列 | 名詞の列をほどいて述語を立てる |
この一覧は、文章の上手さを測る基準ではなく、誤読を防ぐための点検項目である。書く力を上げようとする前に、ここを機械的に通すほうが早く効く。文そのものの整え方は読みやすい文章の書き方でも基本の形がまとまっている。
結論を先に出し、理由と詳細を後ろに回す
同じ指針は文書の構成についても触れており、結論は早めに示して続けて理由や詳細を説明すること、読み手の視点で構成を考えること、分量の限度を決めておくことを挙げている。ESの欄に当てはめると、一文目で設問に答え、二文目から場面と行動に入る形になる。
この順序にすると、途中で字数が尽きても答えは伝わっている。逆に場面の説明から始めると、字数の最後で結論に辿り着くか、辿り着かずに切れる。読み手が何十通も目を通す前提では、前者と後者の差は大きい。型として覚えるならPREP法が扱いやすく、結論、理由、具体例、結論の順で四つの文に割れる。
注意したいのは、結論を先に置くことと、答えを一つに絞ることが別だという点である。設問が二つのことを聞いている場合、一文目に両方の答えを入れる。「最も困難だった経験とその乗り越え方」なら、経験名と手法を同じ文に収める。片方だけを先に出して残りを後半に回すと、読み手は答えの片側を探しに戻ることになる。
読み手が探している欄に、言葉を寄せる
何を書けば読まれるのかは、採用側が何に印を付けているかから逆算できる。厚生労働省の令和5年若年者雇用実態調査は、新規学卒者の採用選考で重視した点を複数回答で集めている。上位は職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神が79.3%、コミュニケーション能力が74.8%だが、注目したいのはその下の帯である。
ストレス耐性が36.2%、免許や資格(専門知識や技能・語学力)が30.4%、柔軟な発想が29.3%、学歴・経歴が22.4%、従順さ・会社への忠誠心が20.1%、業務に役立つ職業経験・訓練経験が14.7%と続く。資格の列挙や経歴の立派さに字数を割く書き方は、この三割前後の帯を狙っていることになる。
平成30年の調査と並べると動きも見える。ストレス耐性は34.9%から36.2%へ、柔軟な発想は27.5%から29.3%へ上がり、免許や資格は31.5%から30.4%へ、従順さ・会社への忠誠心は20.5%から20.1%へ下がった。指示に従った話より、想定が崩れた場面でどう組み替えたかを書くほうが、動いている欄に当たる。筋道の立て方そのものは就活にロジカルシンキングが効くで扱われている整理の手順が参考になる。
ただし書ける範囲には線がある。厚生労働省の公正な採用選考の基本は、選考を応募者の適性と能力のみで行うものとし、人生観や思想、尊敬する人物、愛読書といった本来自由であるべき事項の把握を避けるよう示している。価値観を押し出したいときは、宣言ではなく、その価値観に沿って続いた行動を置く。
推敲は三回に分ける。混ぜると漏れる
書き終えてから一度だけ通して読む方法では、文の長さと表記の揺れと内容の不足が同時に目に入り、結局どれも直りきらない。見る対象を一回ごとに一つに絞ると取りこぼしが減る。一回目は内容、二回目は文、三回目は表記という順で回す。
一回目では、設問の語が一文目に入っているか、行動を示す動詞が具体的か、結果に相手や数値が出ているかだけを見る。足りなければ材料を足す。二回目では、長い文を探して句点で割り、受身と二重否定を能動と肯定に戻す。声に出して読むと、息が続かない箇所がそのまま長すぎる文になっている。
三回目は表記をそろえる作業にあてる。数字の全角と半角、「御社」と「貴社」の使い分け、組織名の略称と正式名称、送り仮名のゆれを一つずつ確認する。ここで指定字数の八割から九割に収まっているかも併せて見る。欄が余っていると準備の薄さに見え、あふれていると指定を読んでいないように映る。
よくある質問
一文を短くすると、文章が幼く見えないか。短い文が幼く見えるのは、述語が「でした」「思います」ばかりになるときである。動詞を具体的なものに替えれば、文が短くても内容は詰まる。目安の50字から60字は上限の感覚であって、すべてをそこまで伸ばす必要はない。
箇条書きはESで使ってよいか。欄の仕様によっては改行が反映されないため、入力画面で確認してから決める。使えない場合は、数を先に示して主要な二つだけ展開する形に置き換えると、同じ効果が出る。
生成系の道具で下書きを作ってもよいか。設問の語を抜き出す作業や文の長さの点検には使える。ただし行動と結果は自分の記録からしか出てこない。素材が手元にないまま文章だけを整えると、面接で同じ話を広げられなくなる。
字数が足りないときは何を足すか。感想や抱負を足すと薄くなる。足すのは結果の側で、相手の反応、続いた期間、数に表れた変化のいずれかを一行入れる。自分の活動を記録に残す習慣があると、この一行がすぐ出てくる。地域の現場に関わる機会をFLASPOのような場で持っている人は、役割と相手の反応を書き留めておくと後で効く。
手書きの欄で書き損じたらどうするか。修正液は使わず書き直すのが無難だが、提出期限との兼ね合いで決める。入力式が選べる企業では入力を選ぶほうが、推敲を三回に分ける進め方と噛み合う。
同じ文章を複数社に出していると見抜かれないか。素材が同じでも、設問の語に合わせた一文目と、志望先に結びつく最後の一行は毎回変わる。この二箇所だけを書き分ければ、使い回しという印象にはならない。
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