検索欄に「業界研究 始め方」と打ち込んでいる時点で、たいてい志望業界はまだ無い。にもかかわらず多くの手引きは「興味のある業界を三つ挙げる」から始まるので、最初の行で詰まる。順番が逆になっているのが原因で、先に決めるべきは業界名ではなく、どこから見渡すかという立ち位置のほうだ。
手が止まるのは調べ方ではなく、入口の置き方
よくある詰まり方は二つある。一つは、名前を知っている会社から入ってしまうこと。消費者として接する商品を出している会社は目に入りやすいが、それは日本にある仕事のごく一部で、しかも偏った一部だ。もう一つは、最初の一社をいきなり深く掘ってしまうこと。深さは後からいくらでも足せるのに、横の広がりは一度閉じると戻りにくい。
入口の置き方としてやりやすいのは、個別の業界に入る前に全体の形を一度だけ見ておく方法である。全体の形とは、どんな区分があるかという一覧ではなく、どの区分にどれだけの人と場所が集まっているかという量の分布を指す。量の分布を知っていれば、自分が思い浮かべた数社がどのくらいの代表性を持っているかが分かり、挙げた候補が偏っていることにも自分で気づける。
この一度の見渡しは、丸一日かける作業ではない。公的統計の概要版に載っている数字を読むだけなら一時間で足りる。そのうえで、名前を知らない区分が出てきたらそれを調べる対象に加える。始め方として実用的なのは、自分の知識の穴を先に見つけてから埋めにいく順番だ。
仕事の塊の大きさを、実数で先に見る
量の分布を取るのに使えるのが、総務省と経済産業省が公表している経済センサスである。令和3年経済センサス‐活動調査の産業横断的集計によると、2021年6月1日現在の民営事業所数は515万6063事業所、従業者数は5795万人だった。国と地方公共団体を含めると528万8891事業所、6242万8千人になる。これが母集団の全体像だ。
区分ごとに見ると、事業所の数が最も多いのは卸売業・小売業で122万8920事業所、全産業の23.8パーセントを占める。次が宿泊業・飲食サービス業の59万9058事業所で11.6パーセント、建設業が48万5135事業所で9.4パーセントと続き、上位3区分で全産業の44.9パーセントに達する。第三次産業だけで事業所全体の81.7パーセントになる。
従業者の数で並べ替えると順位が変わる。卸売業・小売業が1161万2千人で20.0パーセント、製造業が880万4千人で15.2パーセント、医療・福祉が816万2千人で14.1パーセントとなり、上位3区分で49.3パーセントを占める。事業所の数では上位に入らない製造業と医療・福祉が、人の数では前に出てくる。一つの事業所に何人いるかが区分ごとに違うからだ。1事業所当たり従業者数は情報通信業が26.0人で最も多く、運輸業・郵便業が25.5人、電気・ガス・熱供給・水道業が22.1人と続く。
| 産業大分類 | 事業所数 | 構成比 | 従業者数 | 構成比 |
|---|---|---|---|---|
| 卸売業,小売業 | 1,228,920 | 23.8% | 1,161万2千人 | 20.0% |
| 宿泊業,飲食サービス業 | 599,058 | 11.6% | 467万8千人 | 8.1% |
| 建設業 | 485,135 | 9.4% | 373万7千人 | 6.4% |
| 製造業 | 412,617 | 8.0% | 880万4千人 | 15.2% |
| 医療,福祉 | 462,531 | 9.0% | 816万2千人 | 14.1% |
| 情報通信業 | 76,559 | 1.5% | 198万7千人 | 3.4% |
| 全産業(民営) | 5,156,063 | 100.0% | 5,795万人 | 100.0% |
この表を眺めたときに「自分が挙げた候補はどこに入るのか」と「名前も浮かばなかった区分はどれか」の二つを書き出せば、最初の作業は終わる。候補が三つとも構成比1パーセント台の区分に固まっていたなら、それは狭いという事実が数字で分かる。
業界名が浮かばないなら、職業の側から逆算する
区分の名前を見ても具体的な仕事が想像できないことは珍しくない。その場合に回り道として効くのが、業界ではなく職業から入る経路だ。厚生労働省が運営する職業情報提供サイト、通称job tagには約500の職業が載っていて、一般的な仕事内容と作業、その職業に就く経路、必要なスキル、都道府県単位の労働条件、求人倍率、求人賃金まで並んでいる。
このサイトは米国労働省が1998年から公開している職業情報データベースを参考に作られたもので、未来投資戦略2018や成長戦略フォローアップといった閣議決定を受けて整備された。就業経験のない人が、どんな仕事が存在するのかを手探りで調べられるように設計されている点が、就活の入口と相性がよい。
使い方として有効なのは、切り口別の検索機能である。企業間で行われる仕事、IT関連、介護関係といった軸で職業を並べられるので、消費者として接点のない仕事がまとめて目に入る。気になった職業の説明を読み、その職業が多く置かれている区分を逆にたどれば、自分では思いつかなかった業界が候補として立ち上がる。業界名から職業を想像するより、職業から業界を当てるほうが、知識の少ない段階では当たりやすい。
最初の一周は、一業界一枚で止める
候補が五つから七つくらいに揃ったら、次は深掘りではなく横並びの作業に入る。一つの業界につき一枚、書く欄をあらかじめ固定したメモを作る。欄は、規模を表す数字、仕事を担っている人の職業、客は誰か、どこで利益が出ているのか、直近で起きた変化、そして自分が外すならその理由の六つで足りる。
欄を固定する理由は、比較できる形にそろえておくためだ。業界ごとに違う観点で調べると、読み返したときにどちらが自分に合うのか判断できない。同じ欄に同じ粒度で書いてあれば、空欄になった箇所がそのまま次に調べることになり、作業が自動的に続く。
一枚に収める量は、十五分で埋まる程度に抑える。七業界で二時間弱だ。この段階で一つの業界に三時間かけてしまうと、残りを調べる気力が尽きて、結局は最初に目についた業界に流れる。浅い一周を先に終わらせてから、残した候補に二周目で時間を配り直す。地域に根ざした働き方を扱うFLASPOのような事業も、こうした横並びの一周を回しておくと候補として視界に入りやすい。
入口を抜けた合図は、外した業界の理由が言えること
どこまでやれば入口を抜けたことになるのか、線を決めておかないと延々と続く。基準として分かりやすいのは、残した業界について語れるかではなく、外した業界について外した理由を言えるかどうかだ。残す理由は後から取り繕えるが、外す理由は実際に中身を見ていないと出てこない。
この線を引いておくと、次の段に渡すものがはっきりする。残った二つから三つの区分について、同じ区分の中で会社ごとの違いを調べる作業に移る。ここから先は個社を見る段で、使う資料も法令に基づいて開示される書類に変わる。業界の層で得た数字は、個社の説明を外側から検算する材料として後から効いてくる。
逆に、入口の段でやらなくてよいこともある。志望順位を決めること、志望動機の文章を書くこと、面接で話す筋を固めること。これらは個社の情報が入ってから組み立てるものなので、入口で手をつけると二度手間になる。自分の側の整理も同じで、業界の全体像を見てから自己分析のやり方に戻ったほうが、照らし合わせる相手がいる状態で考えられる。
よくある質問
大学何年生から始めるべきか。学年そのものより、インターンシップへの応募が本格化する時期に間に合うかどうかで考えるほうが実務的だ。全体の日程は就活スケジュールの一覧で確認できる。
業界はいくつまで絞るのか。入口の段では絞りきらず、二つから三つの区分を残した状態で次に進んで構わない。選考が進むなかで情報が増え、外す判断は後からでもできる。早く一つに決めることが目的ではない。
統計の数字は古くないか。経済センサスの活動調査は数年ごとの実施なので、公表値と現在のあいだには時間差がある。それでも区分どうしの大きさの比を把握する用途なら十分に使える。個別の業界の直近の動きは、省庁の白書や業界団体の資料で補う。
知らない業界を候補に入れて不利にならないか。選考で問われるのは、知った時期の早さではなく、なぜその区分を選んだかの説明の筋だ。後から知った業界でも、外した区分との比較が言えていれば説明は成立する。実際の書き方は志望動機の構成の側で組み立てる。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
賞金やユニークな地域体験が獲得できるコンテストも多数。誰でも参加無料・オンライン完結で挑戦できます。


