白紙のノートを開いて、そこで止まる。自己分析でつまずく場所は、やり方を知らないことより「最初の一行に何を書くか」が決まらないところにある。性格を書くのか、やりたいことを書くのか、過去の出来事を書くのか。順番を間違えると、書いているうちに自分への評価が混ざり、手が止まる。先に決めておくとよいのは、用意する紙の枚数と、それぞれに何を書かないかである。
用意するのは3枚、評価は最後まで書かない
始め方として扱いやすいのは、役割の違う3枚を並べる形だ。1枚目は出来事の年表、2枚目は選んだ理由と変えた判断、3枚目は働く条件のうち落とせないものを書く欄にする。紙でもファイルでも構わないが、1枚に混ぜないことが肝心になる。
混ぜると何が起きるか。出来事を書いている途中で「これは強みと言えるのか」と考え始め、書き出す手が止まる。評価と記述を同時にやると、評価に値しそうな出来事だけが残り、材料が足りなくなる。年表の段階では、自慢できるかどうかを一切問わない。期間と、そこで実際にしたことだけを並べる。
所要時間の目安は、年表に2時間、理由の欄に3時間、条件の欄に1時間。一度に終わらせる必要はなく、年表を書いた翌日に理由を埋めるほうが思い出す量が増える。最初の1週間でこの3枚が埋まれば、以降は質問の形に合わせて組み替える作業になる。全体の手順を俯瞰してから入りたい場合は自己分析のやり方完全ガイド|就活生が今すぐ使える5つの方法に先に目を通しておくと迷いが減る。
1枚目は年表、高校入学から今までを横に並べる
年表は左に時期、右に出来事を置く。高校入学あたりから始めると、進路の選択が二回は入るので判断の跡が拾いやすい。部活、アルバイト、授業、サークル、資格の勉強、長期の旅行、家庭の事情。仕事に関係がなさそうなものも落とさない。
書き出しに詰まったら、記憶ではなく記録から入るのが早い。履修の記録、写真の日付、通帳の入金、メッセージアプリの過去のやりとり。これらを見ながら並べると、忘れていた期間が出てくる。特に、何もしていなかったと思い込んでいる時期に、実際には別のことに時間を使っていた例が多い。
年表が20行を超えたら、次は印をつける。続いたもの、途中でやめたもの、途中で形を変えたもので記号を分ける。この三種類の区別が、2枚目の材料になる。続いたものだけを見ていると自分の傾向は見えず、やめたものを並べたときに初めて共通点が浮かぶことがある。弱みを含めて扱う視点についてはSWOT分析の強み(Strength)の見つけ方|5つの質問で自己発見の問いの立て方が参考になる。
2枚目は理由、「なぜ続けたか」から埋める
2枚目では、年表から三つから五つを選び、それぞれについて四つの欄を埋める。始めたきっかけ、途中で迷った場面、そこで変えた判断、結果としてどうなったか。この四つがそろうと、選考で問われる形にほぼそのまま対応できる。
順番として「なぜ始めたか」より「なぜ続けたか」を先に書くほうが筆が進む。始めた動機は後から作り直した記憶になりやすく、きれいな言葉が出てきて止まる。続けた理由は、面倒だった場面と並べて思い出すので具体が残る。やめたものについては「なぜやめたか」を同じ密度で書く。やめる判断にも基準が出ているので、条件の欄を書くときに効いてくる。
ここで避けたいのは、いきなり一語でまとめることだ。粘り強さや主体性といった言葉に収めてしまうと、その下にあった具体が消える。まとめは選考書類を書く段で行えばよく、2枚目の時点では文章のままで置く。長期の実務を通じて自分の傾向を確かめたい人には実習型の経験も材料になり、インターンとは?就活前に知っておくべき基本と3つの種類で整理されている種類の違いが参考になる。
3枚目は条件、公的な診断で仮説を出してから決める
3枚目は、働く条件のうち譲れないものを書く欄だ。勤務地、休みの取り方、収入の下限、人と関わる量、転勤の可否。ここを自力で書こうとすると、働いた経験がないため手がかりが足りない。仮説を外から借りると早い。
厚生労働省が運営する職業情報提供サイト(job tag)は、500を超える職業について仕事の内容、就業に必要な学歴や資格、労働時間や賃金などの労働条件を解説文と数値で載せている。各職業には90秒ほどの動画も付く。加えて、登録なしで使える自己診断の機能が複数そろっている。job tagの自己診断ツールは結果そのものが答えになるわけではないが、3枚目に書く項目の候補を出すには向いている。
| job tagの自己診断 | わかること | 3枚目での使い道 |
|---|---|---|
| 職業興味検査 | 興味の特徴に近い職業 | 関わる対象を人・物・情報のどれに寄せたいか |
| 仕事価値観検査 | 価値観の特徴に近い職業 | 譲れない条件の候補を言葉で拾う |
| 職業適性テスト(Gテスト) | 能力面の特徴に近い職業グループ | 向き不向きの仮説を立てる |
| しごと能力プロフィール | 希望職業との適合度、不足するスキル | これから埋める項目を把握する |
数値の欄を見るときは、平均値をそのまま期待値として読まないほうがよい。就労者の平均年齢が高い職業は、掲載されている賃金に長く勤めた人の水準が含まれている。労働時間も、同じ職業名のなかに繁忙の波が大きい職場と小さい職場が混ざっている。ここで確かめたいのは水準そのものではなく、自分が想定していた働き方と桁が合っているかどうかだ。想定と大きくずれた項目が見つかったら、その職業を外すのではなく、ずれた理由を3枚目に一行書き足す。書き足された一行が、後で企業に質問する材料になる。
診断を回したら、出てきた職業名をそのまま信じずに、提示された労働条件の数値を見る。想定していた休みの取り方や収入と合っているかを確かめ、合わない項目を3枚目に書き写す。候補を増やすためではなく、落とせない条件を一つずつ確定させるために使う。
一人で詰まったら、無料で人に当てられる窓口がある
3枚のうち2枚目で止まる人は多い。自分の判断を自分で言葉にする作業なので、読み返しても何が足りないのか見えなくなる。ここは他人に読ませるのが最も早い。質問が返ってきた箇所が、そのまま説明の抜けている箇所になる。
相手が身近にいない場合、公的な窓口が使える。新卒応援ハローワークは大学や短大、高専、専修学校などを卒業予定の人と、卒業後おおむね3年以内の人が対象で、全国に56か所置かれている。就職支援ナビゲーターが就職活動の進め方や求人の選び方の相談に応じ、利用はいずれも無料となっている。大学のキャリアセンターと違い、在学している学校の就職実績に左右されないのが使いどころだ。
友人同士で読み合う方法も有効で、互いに5分ずつ質問を投げるだけで抜けが出る。このとき、良い悪いの評価は求めないほうがよい。欲しいのは「そこがなぜか分からない」という指摘だけである。勤務地を広く取って検討するなら、地域で働く選択肢に触れているFLASPOのような情報源も3枚目の材料になる。
自己分析の始め方についてよくある質問
性格診断から始めてはいけないのか。入口として使う分には問題ない。ただし結果だけが手元に残ると、裏づけのない言葉を抱えることになる。診断を回した日に年表も1時間書いておくと、結果と出来事を突き合わせられる。
書くことが思い出せない場合はどうするか。記憶をたどるのをやめて、記録を見る順に切り替える。履修表、写真、口座の履歴、過去のやりとり。思い出せないのは出来事がないからではなく、検索の手がかりがないからであることが多い。
手書きとパソコンのどちらがよいか。年表は後から行を差し込むのでパソコンが扱いやすく、理由の欄は手書きのほうが言い直しの跡が残って使える。形式より、3枚を分けて保管できるかどうかを基準にしたい。
大学1年や2年で始める意味はあるか。ある。年表に書ける出来事が少ない時期に一度書くと、空いている期間が目に見えるので、埋めるための行動を自分で選べる。就職活動の直前に始めると、空白をそのまま抱えて選考に入ることになる。
途中で内容が変わってしまったら書き直すべきか。上から直さずに、日付を入れて書き足す。変わった事実そのものが判断の材料で、どの時期にどう考えが動いたかは面接でも説明に使える。消してしまうと、その動きが残らない。
3枚が埋まった後は何をするか。企業を見る段に進む。落とせない条件の欄を求人票の読み方に変換し、合わない会社を外していく。その後で、2枚目の記述から選考書類の文章を作る。順序を逆にすると、書類に合わせて自分の基準を曲げることになりやすい。
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