進学で住む場所が変わる人の数は、転職や結婚で動く人の数に劣らない。どこに大学があるかは、18歳が県境を越えるかどうかをほぼ決めてしまう。文部科学省の学校基本調査は47都道府県ごとの大学数と学生数を毎年公表しており、2026年8月に出た最新の速報値を開くと、東京都に学生の4分の1以上が集まる構図がそのまま数字になっていた。
大学は816校、学生は300万1千人で過去最多
文部科学省が2026年8月26日に公表した令和8年度学校基本調査の速報によると、大学は816校で前年度から4校増えた。内訳は国立85校、公立104校、私立627校である。増えたのは公立が1校、私立が3校で、国立は前年度と同じだった。
在学者数は300万542人で、前年度より2万8千人増えて過去最多となった。設置者別では国立61万4,132人、公立17万3,527人、私立221万2,883人で、私立が全体の73.7パーセントを占める。学部の学生は266万4,194人、大学院は28万4,802人、うち博士課程は8万2,170人である。大学院と博士課程の学生数もいずれも過去最多だった。
女子学生の増え方が目を引く。学部の女子学生は123万7,086人で前年度から1万6,757人増え、学部学生に占める割合は46.4パーセントと過去最高になった。18歳人口が減っている中で学生数が増え続けているのは、進学率の上昇と女子の進学行動の変化が効いているためである。一方で短期大学は84校へ6校減り、学生数は6万5,684人で5,512人減った。高等教育機関の中で縮んでいる部分とふくらんでいる部分が同時に動いている。
東京都に143校、学生の26.7パーセントが集まる
同じ調査の都道府県別の統計表を開くと分布が出る。東京都は143校で全国の17.5パーセント、学生数は80万2,163人で26.7パーセントである。校数のシェアより学生数のシェアが9ポイント以上高い。規模の大きい大学が都内に集まっているからだ。
| 都道府県 | 大学数 | 学生数 | 学生数の全国シェア |
|---|---|---|---|
| 全国 | 816校 | 300万542人 | 100% |
| 東京都 | 143校 | 80万2,163人 | 26.7% |
| 大阪府 | 58校 | 26万7,183人 | 8.9% |
| 愛知県 | 53校 | 19万8,014人 | 6.6% |
| 神奈川県 | 33校 | 19万2,759人 | 6.4% |
| 京都府 | 34校 | 17万5,901人 | 5.9% |
| 福岡県 | 36校 | 12万6,337人 | 4.2% |
| 島根県 | 2校 | 8,365人 | 0.3% |
東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県を合わせると231校で校数の28.3パーセント、学生は122万1,170人で40.7パーセントになる。大学に通う人の5人に2人が首都圏の4都県にいる計算だ。これに大阪府、愛知県、京都府、兵庫県を加えた8都府県では、学生数のシェアは6割を超える。学校数は大学本部の所在地、学生数は在籍する学部や研究科の所在地で集計されるため、キャンパスが県境をまたぐ大学では両者がずれる。
島根県は2校、鳥取県と佐賀県は3校
下から見ると数の少なさに驚く。最も少ないのは島根県の2校で、鳥取県と佐賀県が3校、徳島県と香川県が4校、富山県、和歌山県、愛媛県、大分県が5校である。学生数では鳥取県の7,993人が最少で、島根県8,365人、佐賀県8,775人、香川県9,889人が続く。東京都と島根県では学生数に95.9倍の差がある。
設置者の構成も県によってまったく違う。島根県は国立1校と公立1校で、私立大学が存在しない。私立がゼロの県は島根県だけである。逆に公立大学がない県は栃木県、徳島県、佐賀県、鹿児島県の4つで、栃木県は国立1校と私立8校という構成になっている。
学生の比率に置き換えると、県ごとの高等教育の性格が見える。秋田県は学生9,789人のうち国立5,237人と公立3,421人で、国公立が88.4パーセントを占める。島根県は全員が国公立である。対する東京都は80万2,163人のうち私立が71万1,984人で、88.8パーセントが私立だ。学費や奨学金の制度が進学先の選択にどう効くかは、県によって意味が変わってくる。
定員が足りない県では、進学が転出になる
鳥取県の7,993人という数字は、県内の18歳が全員進学しようとしても県内では収まらないことを意味する。学生数が1万人に届かない県は鳥取県、島根県、佐賀県、香川県の4つで、1万人台にとどまる県が16ある。受け入れる枠が小さい県では、進学がそのまま県外への転出になる。
この構造は人口統計にも現れる。総務省統計局の令和7年国勢調査の人口速報集計では、2020年から2025年の5年間で人口が増えたのは東京都と沖縄県の2都県だけだった。同じ集計で人口が最も少ないのは鳥取県の52万4千人であり、進学期の転出が次の世代の人口にそのまま効いてくる。地方の人口が減る経路のひとつは、18歳の春に県境を越える移動である。
大学の側も縮小を前提に動いている。短期大学が1年で6校減り、学生が5,512人減ったのは、定員を満たせない学校が募集を止めている結果だ。短期大学の減少が続けば、通える範囲に進学先がある地域の数も目減りしていく。人口の面から地域の将来を見た整理は消滅可能性都市の一覧・ランキング2024年最新版を徹底解説にある。
大学のある県とない県をつなぐ関わり方
では枠の小さい県に打つ手がないのか。実のところ、移住や定住より手前の関わり方が制度として整理されてきている。住んでいなくても地域と継続的に関わる人を関係人口と呼び、総務省はこれを政策の対象として位置づけている。進学で県を離れた若者が、出身地と関わり続ける形はその中に入る。
数字の面でも接点はある。大学院の学生は28万4,802人まで増え、博士課程も8万2,170人と過去最多になった。研究のテーマとして地域の課題を扱う学生が増えれば、大学が立地していない県にも調査や実証の形で人が入る。大学数の少ない県が、学生との関わりを持てないわけではない。
首都圏の大学に通う学生の側から見ると、関わる先を選ぶ自由は逆に大きい。授業期間の合間に地域のプロジェクトへ入る形なら、住む場所を変えずに複数の地域を見られる。FLASPOのように学生と地域をつなぐ仕組みはこの層に向けて設計されている。関わり方の分類は関係人口とは?総務省の定義と大学生が関わる5つの方法を解説に整理があるので、自分の立ち位置から選べる。
よくある質問
大学数の都道府県別データはどこで手に入るか。文部科学省の学校基本調査の統計表が政府統計の総合窓口で公開されており、大学の都道府県別学校数及び学生数という表にまとまっている。学部学生数、大学院学生数、教員数も別表で都道府県別に出ている。毎年8月下旬に速報が、12月下旬に確定値が公表される。
学校数と学生数で順位が入れ替わるのはなぜか。集計の単位が違うためである。学校数は大学本部の所在地で数え、学生数は在籍する学部や研究科の所在地で数える。本部が都内にあり学部が隣県にある大学では、学校数は東京都に入り学生数は隣県に入る。神奈川県が33校で19万2,759人、愛知県が53校で19万8,014人と、校数と学生数の順位が逆になるのはこの影響もある。
大学の数が少ない県に進学するとどうなるか。選べる学部の幅は狭くなるが、国公立の比率が高いため学費の負担は軽くなる傾向がある。島根県のように私立がない県では、入学者の学費はすべて国公立の水準になる。地元に残るか県外に出るかは、学びたい分野と費用の両方を並べて考える問題になる。
学生数が過去最多なのに短期大学が減っているのはなぜか。進学先が4年制に移っているためである。学部学生は266万4,194人まで増え、同じ年に短期大学の学生は6万5,684人へ減った。資格取得の課程が4年制の学部や専門学校へ移った分野もある。高等教育全体の人数が減っているわけではなく、受け皿の種類が入れ替わっている。
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