若者が「自分だけが知る“推し地域”」の魅力を自由に綴ることを通じて、地域と若者・企業がつながる機会を生み出すエッセイコンテストを、2025年7-8月にFLASPOと地域とつながるプラットフォーム「SMOUT」 が共同開催!
全国各地から合計70以上の”推し地域”をテーマとした作品が集まりました!
第2弾の今回は、惜しくも受賞しなかった素晴らしい作品たちをすべて公開!
読むと、地域に関わりたくなる、自分も地域の魅力を言葉にしたくなる、心に残る作品ばかりです!
コンテスト概要はこちらから👇
<エッセイ紹介>
(6)「心だけが、取り残されている」(ペンネーム:ヤマ田)
大学時代を、青森県弘前市で4年間過ごした。
大学を卒業して社会人となった今、ふと弘前に戻りたいと思うことが増えた。
大学があり、若者の多い町だったので、地方にしては栄えてたように思う。
今住んでる地域がより田舎だからそう感じるのかもしれない。りんごの樹々が茂る、自然が好きだ。
商店街のある、街並みが好きだ。
歴史を感じる、あの風景が好きだ。
シンプルに暮らしやすさが好きだ。
今だからこそ、そう思う。これは懐古だ。弘前を語るなら、弘前さくらまつりは欠かせない。
弘前城のある弘前公園に立ち並ぶ桜の花々が咲き乱れる風景は、これまで見た桜景色の中で一番圧巻だった。
見渡す限りの桜。花筏。そして、桜咲き誇る弘前城。夜桜も良い。
眼を閉じれば、その風景がぶわっと拡がる。
死ぬまでにもう一度見たいものだ。けれど今、一番恋しいのはなんと言っても弘前の夜かもしれない。
夜の、少し湿った空気と涼しい夜風の中歩く夜は格別だった。
地面の独特の匂い(ペトリコール?)が鼻を通り抜けて、道沿いの木々の葉が揺れる音が聴こえる、そんな夜だった。
真っ当に大学生をしていた当時、いわゆる夜の街である“鍛冶町”で飲んだあとは、友人と深夜にブラブラ歩き回ったものである。
居酒屋で食べて、バーやスナックで飲んで、歌って、コンビニでアイスなんか買って、食べながら歩いて帰った。
夜の街を抜けた途端の、静けさ。
けれど、コンビニなどの24時間営業の店が点在していたから、いつでもなんとなくの安心感があった。温泉があるのも良かった。
せせらぎ温泉によく行った。
朝5時から営業しているそこは、近くに、りんご畑があって、昔ながらの商店や地域の神社があって、行くまでのチャリンコ漕ぎながらの道中も好きだった。
季節によっては、畑で何かを焼く匂いがあったが、それも地方ならではだろう。
早朝の温泉は実に良い。
種類豊富な内風呂も良いが、何より露天風呂が好きだった。
春も、夏も、秋も、冬も。
どの季節でも、慌ただしい日々を忘れて落ち着ける時間となった。けど、なんだかんだやはり町並みの景色が好きだったのだと思う。
弘前は歴史のまちだ。
弘前城の周りの、城下町の面影を残す古い町並みや寺・武家屋敷などの建物が並ぶ日本の古き良き町の景色に、明治時代に建てられた洋風のハイカラな建物が入り混じった和魂洋才な景観。
当時の建物を利用したレトロなカフェで、珈琲とアップルパイを楽しみながら、弘前と縁深い太宰治の小説を読むのも通な楽しみ方だ。飯も美味い。
ホタテの貝焼き味噌、イガメンチ、南蛮漬け、中みそラーメンも美味い。
昔ながらの菓子店もお洒落なスイーツショップもたくさんあるから、和菓子も洋菓子も楽しめる。
酒だって美味い。豊盃や白神もまた呑みたいものだ。きっと、4年じゃ足りなかった。
たった4年で、虜にされてしまったのだと思う。
まるで懐郷。
いつかまた、訪れる日まで。
思い出すのだと思う。
また、訪れたいと思う。推し地域= 青森県弘前市
「散歩は、弘前の歴史を見守ってきた岩木山を見ながら。」
(7)「大阪府阿倍野区西田辺に現れた発達障害メイド喫茶スターブロッサムを推してください!」(ペンネーム:花屋乃かや(かやのかや))
私は西田辺で発達障害メイド喫茶スターブロッサムを経営しているオーナー花屋乃かやです。
福祉✖️エンターテイメントを掛け合わせ、より気軽に福祉に携われる場所、
当事者が遊びに来れてリラックスできる場所
斬新なコンセプトで発達障害当事者以外にも知ってもらえるきっかけを作る場
また福祉関係者の人脈づくり、福祉イベントの開催もしているメイド喫茶です。
6月からは執事喫茶としても同じ場所でオープンし、在宅メイド喫茶も運営、音楽イベントにも出演するなど、福祉を知ってもらえる機会を作ること、障害者雇用の拡大を目指し奮闘しています。そんな私の推し地域は”西田辺”です。
御堂筋線西田辺駅。住宅街として静かに暮らす人が多い中、実はローカルでニッチなお店が揃っています。全力で猫好きをアピールし、中で町おこしをしようとしている”かもめ不動産”や、長年創業しているレトロな銭湯”いりふね温泉”。
そして新たに2025年3月には、メイド喫茶ができました!
大阪では日本橋にあるはずのメイド喫茶。
いきなり、ミントグリーンのファンシーな外装で現れたにも関わらず、地域の皆さんの協力もあり、とても幸せに過ごしています。
発達障害メイド喫茶スターブロッサムは日本橋で3年間の間借り営業、テスト期間を経て大阪府阿倍野区西田辺に2025年3月、540万円のクラウドファンディングを達成し皆さんのおかげでオープンすることができました。しかし障害を理由に不動産を断られることなどが続き、絶望してる中で
生まれ育った故郷”西田辺”に下車。近くにある、猫の看板が目印の
かもめ不動産に声をかけ、スムーズに受け入れてもらうことができました!隣の浅一さん。昔からされてる定食屋さんで、
大将がいつも「外灯ついてないで!」
「花植えといたで、かわいいやろ」と優しくしてくれます。
商店街の中に入ればスナックのママ(真っピンクのパンチパーマ)さんが「可愛い服やなあ!結婚式かい?」と声をかけてくれました。
小学生は「うわあ!メイドさんだ!」と喜んでくれます。そんなあたたかな西田辺、もっとたくさんの方に知ってほしいです。発達障害とメイド喫茶。それは真逆に思えますが、発達障害でも接客もできますし、なにより当事者同士の運営というところが新しい視点です。
支援事業者でも就労移行でもなく、西田辺で
障害者雇用を拡充させていきたいと思っています。優しい人たちで溢れる西田辺の魅力をもっと伝えたいです!
推し地域=大阪府大阪市阿倍野区西田辺町1-3-40
「” 発達障害のメイドたちを受け入れてくれたのは、
“”西田辺””だった。それが私たちの居場所。」
(8)「Tara,Space」(ペンネーム:やまぴ)
44.6m。登るとこ間違えた思たけど、腰折ってめー凝らして、一旦しゃがんでもっかい立ってめー瞑って開いて——。あかん、ギャグやなしにほんまにいっちゃん高いて書いとる。44.6m。
17:33。紅の幕あらへんし星映らんし。(仕方なく電源を切った漆黒の艶に、死角の満月が表象する。)(スマホを下す手がふっと止む。)(誘惑にくるっと背を見上げたのが運のツキ。月は私のアッと言う幕も意地悪に隠す。目線に90度ついたまま、太腿から血の気がすぅーと引いて世界がその回転を始める——。)あかん、これ——おちる————————
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月の引力見える町。九州、佐賀県太良町は、有明海を文字通りの目一杯一面に臨む海の町。地図に90度ついたら瀬戸内の故郷そっくり。「海」と思い込んで呆気なく裏をかかれたのは顔の右。蜜柑注ぐ太陽は今もきっと燦燦。奥所涼む山葵は今もきっと元気。そういや兵庫だって振り向いタラ六甲。
跨るも、右足を力む幕は海風がさらってく。いやいや、多分久々にデンドウジテンシャに乗ったから。海沿う太良高校の塀も束の間、ずぅんと海中鳥居が視界に降りる。ジテンシャに鍵するのも忘れて岸に駆ける。まさか眼前の潮が、文字通りの目一杯一面に刹那沈むことになるとは。潮「に」沈むならまだ、潮「が」沈むなんぞ。太陽系あげてして幸い、潮「が」沈むなんて訳ではありませんでした。お騒がせしました。単に潮が「引いた」ということで、めでたしめでたし、なるまい。いくらなんでも潮という潮が世紀末みたいに引いていくではないか。私は3つある鳥居の、前から順に祈る。「どうか世界からお水だけは。」「・・・」「…」
月の引力見える町。有明海沿い長細く。西側海の向いは、標高44.6m、否、多良岳はじめ、広大の緑。文字通りの実一杯太陽の陽つまる甘い甘い蜜柑に、潤沢な水と空気に包まれ香り香る山葵。山の幸恵まる。
「東京から来たと?」「はい!」聴くに毎日「祈り」来るおばあちゃん。「潮!本当に月の引力見える!何だか自分も月の方に、、、。今だとあんなにまで歩ける。つい先までここ海だったのに!」「ハハ、蟹ばもう食うたと?」「今晩宿で!」「そりゃいい。いってきんしゃい」ちょっぴり寂しそうな眼。「いってきます」
山の幸、海の幸、人の幸とが月と地球のフォークダンスに調和して。東京タワースカイツリー浅草、何にも何にも無いけど全部全部、文字通りの全部ある町、九州否、佐賀否、宇宙太良。月の引力見える町。また一つの第一故郷。
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「——、、、?」「——?」「大丈夫!?」
おちる、、、!!!
アッ。アッ、アッて言えた!「何言うとん?」「もう暗いし東京のくせここ何も無いやん!アホなこと言うとらんとはよ行こ」分かった分かった。それより、あすこ月あるやんかさ。アレ、見たことある?「何言うとん?毎日見とるし今見とる」
もっと近くで
推し地域=佐賀県太良町
「月にはだける地球の素顔と見つめ合って」
(9) 「エモいうどん屋」(ペンネーム:美冬)
私の推し地域は県立病院横の天領うどん屋さんです。普通のうどんより麺が細くて柔らかくお年寄りや子どもにも大評判です。週末や食事時は駐車場に車を停めるスペースもないくらい大人気の店です。
ただ私がこのうどん屋さんをなぜこんなに愛しているのかは、他にも理由があります。それは亡くなった祖父が天領うどんが大好きだったからです。
祖父は肺がんで県立病院に入院していました。だけど食いしん坊で、病院食は不味いと言い、しょっちゅう病院を抜け出し、天領うどんを食べに行っていました。
私達家族も病院のスタッフさんも怒っていたのですが、余命が決まっている身の祖父に好きなものを食べるなとも言いたくなかったので、先生や看護師さんに頭を下げ、どうか見逃してくださいとお願いしました。
ある日、一時帰宅が許された祖父の見舞いに親戚のおじさんが来てくれることになりました。皆で祖父に「じいちゃん、おじさんに食べてもらいたい食事処知っちょる?」と聞きました。祖父は間髪入れず、天領うどんと答えました。その一言に私も祖母も母も兄一家も全員「横浜から来るおじさんに400円のうどんを振る舞うの?」と笑いました。
肺がんで10年患った祖父は亡くなりました。最期までうどんを食べに病院を脱走していたそうです。
祖父の葬儀の後、みんなで天領うどんを食べに行きました。
うどんは変わらず美味しかったけれど、いつもより少ししょっぱかったです。推し地域=宮崎県延岡市県立病院横の天領うどん屋さん
「涙の味がするちょっぴりしょっぱいうどん屋さん。」
(10) 「地球の鼓動を全身で浴びるまち」(ペンネーム:海野礼夢)
「桜島は、地球の中身を全身で感じられるまちなんだ。」
そう聞いたのは、私が初めて桜島を訪れた日のこと。毎日のように噴火を眺めてきたはずなのに、その言葉は胸の奥にまっすぐ突き刺さった。
私にとって桜島の噴火は、ただの厄介者だった。おろしたての真っ白のセーターは黒い灰の粒々で覆われるし、コンタクトで生活する私の目に灰が入ると激痛で目が開けられなくなる。洗濯物は外に干せないし、晴れているのに傘をさして歩く日もある。
そんな毎日だったから、桜島にわざわざ足を運ぶ気なんて起きなかったし、そこに暮らす人の気持ちも想像できなかった。
ところが、そこに住む人は、桜島では噴火によって地球の内部にある元素を全身で浴びることができると話していた。また、マグマで温められた温泉に入ることで地球の熱を感じられると表現していた。
火山を「迷惑」ではなく「恵み」として受け取るそのまなざしに、世界の見え方がひっくり返るような感覚がした。
地球の中身を全身で浴びながら暮らす、そんな日常を誇らしげに語る人たちがいる場所。
桜島は、地球の声を感じながら、地球とともに生きている、素敵なまちだ。
推し地域= 鹿児島市桜島
「地球の鼓動を全身で浴びるまち」
ぜひあなたも自分の”推し”地域を想い、言葉にしてみるのはいかがでしょうか!
次回第3弾もお楽しみに!
第3弾はこちらから👇









