女性の起業はどこで支えられているか|開業者25.7%と利率が下がる条件

4年続けて最高を更新した一つの割合

融資の窓口に並ぶ開業者の4人に1人が女性になった。日本政策金融公庫総合研究所が2025年12月5日に公表した「2025年度新規開業実態調査」で、開業者に占める女性の割合は25.7パーセントとなり、調査開始以来の最高水準を4年続けて塗り替えた。

この調査が始まったのは1991年度で、そのときの女性は12.4パーセントだった。2015年度まではおおむね15から17パーセントの帯から出ず、2017年度に18.4パーセント、2018年度に19.9パーセントと動き始める。2020年度21.4パーセント、2021年度20.7パーセント、2022年度24.5パーセント、2023年度24.8パーセント、2024年度25.5パーセントと続き、直近が25.7パーセントである。30年以上かけて倍になったが、直近3年の伸びは1パーセント強にとどまる。

数字の出どころも押さえておきたい。調査時点は2025年8月、対象は公庫の国民生活事業が2024年4月から9月にかけて融資した企業のうち、融資の時点で開業から1年以内だった8,517社(不動産賃貸業を除く)で、回答は2,165社、回収率は25.4パーセントだった。開業時の経営形態は個人企業が57.0パーセント、法人企業が43.0パーセント。開業時の平均従業者数は2.8人、開業費用の平均値は975万円である。小さく始める人の集まりだと見ておくと、後に続く数字の読み方を誤らない。

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もう一つの「女性の割合」は32.3パーセント

同じ言い方で別の数字が流通している。内閣府の男女共同参画白書 令和8年版の経済分野には、1-18図「起業家に占める女性の割合の推移」があり、令和4年は32.3パーセントと記されている。公庫の25.7パーセントとは6ポイント以上離れている。

差は優劣ではなく、数えている人の範囲の違いから出る。公庫の調査が見ているのは、公的金融機関から融資を受けて開業した企業であり、借り入れを伴う規模の立ち上がりに偏る。一方の白書が引く起業家は、雇われずに事業を営み始めた人を広く拾うため、自宅で小さく始めた事業や、設備投資のほとんど要らない仕事も入ってくる。女性の起業は後者の形を取りやすいとされてきたから、範囲が広いほど割合が上がるのは自然な結果といえる。

資料を引くときは、どちらが正しいかを争わず、話題に合うほうを選ぶ。資金調達や設備投資を論じるなら公庫の系列、働き方や就業構造の話なら白書の系列が噛み合う。二つを並べて「増えた・増えない」を論じると、母集団の差を伸び率の差と取り違えることになる。

始める理由の順位が男女で入れ替わる

では、女性は何を手がかりに事業を決めているのか。同じ調査の図-9は、現在の事業に決めた理由を男女別に集計している。回答数は男性1,530人、女性532人である。

事業を決めた理由 男性 女性 全体
これまでの仕事の経験や技能を生かせるから 46.3% 36.7% 43.8%
身につけた資格や知識を生かせるから 19.9% 22.4% 20.6%
地域や社会が必要とする事業だから 14.9% 12.4% 14.3%
趣味や特技を生かせるから 4.1% 11.1% 5.9%

最も多い理由は男女とも職務経験だが、女性では10ポイント近く低い。代わりに資格や知識が2.5ポイント高く、趣味や特技は2.7倍に開く。勤め先で積んだ時間がそのまま事業の芯になりにくい人ほど、資格や個人の技能を足場に選ぶ、という形が浮かぶ。

この差は支援の設計に直結する。職務経験が芯なら必要なのは運転資金と取引先であり、資格や技能が芯なら、まず名前を知ってもらう手立てと、単価を決める材料が要る。相談窓口に行く前に、自分がどちらの型かを言えるようにしておくと、話が早い。

公庫は「女性であること」を金利の条件に書いている

支援の中でいちばん形がはっきりしているのは融資である。日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金は、新たに事業を始める人か、事業開始後おおむね7年以内の人が使える。融資限度額は7,200万円、返済期間は設備資金が20年以内、運転資金が10年以内で、いずれも据置期間は5年以内に収まる。

利率は原則として基準利率だが、一定の条件に当てはまる人が必要とする資金には特別利率が適用される。区分は次のように分かれている。

区分 当てはまる人(抜粋)
特別利率A 女性、35歳未満、55歳以上の人。認定特定創業支援等事業の証明書を取得した人。地域おこし協力隊の任期要件を満たす人。Uターン等で地方創業する人
特別利率B 証明書取得者のうち女性・35歳未満・55歳以上に当たる人。過疎地域で創業する協力隊やUターン等の人。ベンチャーキャピタル等から出資を受けている人。起業支援金の交付決定を受けた人
特別利率C 起業支援金と移住支援金の両方の交付決定を受けた人

注意したいのは、区分が属性だけで決まらない点である。資金の使いみち、返済期間、担保の有無によっても適用される区分は動くと明記されている。創業期は原則として無担保・無保証人で相談できるとされているが、条件の組み合わせ次第で手元に残る負担は変わる。担保をどうするかは、金利の話と切り離さずに窓口で確かめたい。

地域という条件は、女性という条件の上に重なる

表を眺めて気づくのは、性別と年齢の並びに、地域の条件が同じ重さで置かれていることだ。協力隊の任期要件、Uターン等での地方創業、過疎地域での創業、国の起業支援金や移住支援金の交付決定が、いずれも利率を動かす材料として並んでいる。

つまり、地方で事業を立ち上げる女性は、条件を二つ重ねられる立場にある。証明書の取得と地域の要件がそろえば区分はAからBへ動き、起業支援金と移住支援金の両方を受ければCに届く。制度を一つずつ別の窓口で聞いていると気づきにくいが、申込書の上では同じ一本の融資に乗る話である。起業家の移住先はどう絞るかで見たとおり、起業支援金は43道府県が用意しており、住む場所の選択が資金の条件にそのまま跳ね返る。

もう一段手前の段取りも要る。認定特定創業支援等事業の証明書は市区町村が出すもので、セミナーや個別相談を一定期間受けることが前提になる。開業の直前に駆け込んでも間に合わないため、物件や仕入れを決めるより先に役所の創業支援窓口を一度訪ねておくと、選べる区分が増える。学生のうちから地域で小さく事業を試す動き方については、地域起業と若者で扱った数字も合わせて読むと、踏み出す順番が見えやすい。地域と関わりながら事業を考える入口として、FLASPOのような学生と地域をつなぐ場を使う手もある。

よくある質問

女性向けの専用融資制度は今もあるのか。かつての「女性、若者/シニア起業家支援資金」は制度の整理を経て、現在は新規開業・スタートアップ支援資金に統合されている。女性であることは、独立した制度ではなく特別利率の適用条件として残った形になる。

年齢の制限はあるのか。特別利率の条件に挙がる「35歳未満」「55歳以上」は年齢で線が引かれるが、女性にはこの年齢の線がない。つまり何歳でも、女性であれば特別利率Aの対象に入りうる。

25.7パーセントという数字は、起業した女性が増えたことを意味するのか。割合の上昇は、女性の実数が増えた場合にも、男性の開業が減った場合にも起きる。公庫の調査は開業費用の平均値が長期的に下がり、開業時の従業者数も3人を割る状態が3年続いたと報告している。小さく始める形が広がった結果として女性の比率が上がった面は小さくない。

融資を受けずに始める場合、支援は何もないのか。融資以外にも、市区町村の創業支援等事業による証明書の発行、都道府県や国の補助金、地域の金融機関や支援機関による伴走がある。借りない選択をしても証明書の取得には意味があり、将来借りるときの利率や、補助金の加点に効く場面がある。


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