週11時間以上働いている学生が半分を超える
夏休みに2週間だけ地域へ行く、という話をすると、最初に返ってくるのはシフトの心配である。日本学生支援機構の令和6年度学生生活調査では、調査時前1年間にアルバイトに従事した大学学部(昼間部)の学生は86.4%で、前回調査より2.6ポイント増えた。短期大学(昼間部)も83.7%で、3.0ポイント増えている。集計は日本学生支援機構の学生生活調査に出ている。
ただ、ここで効いてくるのは人数の割合より時間の厚みである。同じ調査が授業期間中の典型的な1週間について聞いた結果を見ると、アルバイトと定職に充てた時間の分布は次のようになっている。
| 週あたりの時間 | 大学学部(昼間部)の割合 |
|---|---|
| 0時間 | 19.3% |
| 1〜5時間 | 10.4% |
| 6〜10時間 | 19.0% |
| 11〜15時間 | 23.1% |
| 16〜20時間 | 16.9% |
| 21〜25時間 | 5.9% |
| 26〜30時間 | 1.9% |
| 31時間以上 | 3.1% |
| 無回答 | 0.5% |
大学学部(昼間部)で11時間以上と答えた層を足すと50.9%、16時間以上でも27.8%になる。週3日で1日4時間入れば12時間で、最も人数の多い帯に収まる。2週間抜けるというのは、この層にとって24時間から30時間ぶんの収入が消えるという意味になる。授業との組み方はアルバイトと授業の両立の側からも整理した。
懐の事情も見ておきたい。従事者の内訳では「家庭からの支援のみでは修学がやや困難・非常に困難及び支援無し」と答えた割合が35.1%で、前回の31.5%から3.6ポイント上がっている。年間の学生生活費は大学学部(昼間部)で2,019,100円、前回調査より10.7%増えた。一方で収入は2,030,100円、3.2%増にとどまる。支出の伸びに収入が追いついていないなかで、2週間の空白を作る相談をすることになる。
5日と2週間という下限は、制度の側が決めている
何日あければ足りるのか、という問いには公的な答えがある。文部科学省・厚生労働省・経済産業省が令和4年6月13日に改正した「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」が、学生向けの取組を四つの型に整理した。タイプ1はオープン・カンパニー、タイプ2はキャリア教育、タイプ3は汎用的能力・専門活用型インターンシップ、タイプ4は高度専門型インターンシップである。就業体験が必須になるのはタイプ3から先になる。
そのタイプ3には五つの要件が置かれている。実施期間要件は、汎用的能力活用型が5日間以上、専門能力活用型が2週間以上。就業体験要件は、実施期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てること。指導要件として職場の社員が学生を指導し、終了後にフィードバックを行う。原文は厚生労働省が掲載する三省合意の本文で読める。
見落とされやすいのは実施時期要件である。学業との両立に配慮する観点から、大学の正課および博士課程を除き、学部3年・4年ないし修士1年・2年の長期休暇期間に実施すると書かれており、括弧の中には夏休み、冬休み、入試休み・春休みが並ぶ。企業が2週間の枠を置く時期は制度上そこに寄るので、バイトのシフトが固まりやすい長期休暇と正面から重なる。
もうひとつ実務で効くのが情報開示要件である。募集要項に書いて公表すべき項目として、趣旨、実施時期・期間、場所、募集人数、選抜方法、無給か有給か、就業体験の内容、求められる能力、フィードバック、当該年度の実施計画、過去2〜3年程度の実績概要が挙げられている。報酬の有無を募集要項の段階で確かめられる建前になっている。
受け入れ側の入口は、滞在日数で分かれている
地域の側にも、滞在する日数ごとに別の仕組みが用意されている。総務省が地域おこし協力隊の周辺に置いた体験制度と、働いて収入を得る形の制度を、期間と報酬で並べると性格の違いがはっきりする。
| 仕組み | 期間 | 報酬 | 内容 |
|---|---|---|---|
| おためし地域おこし協力隊 | 主に2泊3日 | なし | 行政や受け入れ地域の関係者との顔合わせ、地域の案内、交流会 |
| 地域おこし協力隊インターン | 2週間〜3か月 | 募集ごと | 隊員と同様の地域協力活動に従事し、活動を実地で体験する |
| ふるさとワーキングホリデー | 概ね2週間〜1か月 | 就労先から支払われる | 地域で働いて収入を得ながら滞在し、住民との交流や学びの場に参加する |
| タイプ3のインターンシップ | 5日間以上(専門能力活用型は2週間以上) | 募集要項に明記 | 期間の半分を超える日数を職場での就業体験に充てる |
おためしとインターンの区分は総務省が示す関連制度の整理に表で載っている。どちらも移住条件は置かれていない。令和8年度の特別交付税措置では、おためし地域おこし協力隊に要する経費が1団体あたり100万円、地域おこし協力隊インターンのプログラム作成等に要する経費も1団体あたり100万円を上限として措置される。学生を呼ぶ費用を自治体が制度の枠内で用意できる形になっている。
期間の幅も固定ではない。インターンの実施イメージには、期間や活動内容については参加者に応じて柔軟に対応可と明記されている。2週間がどうしても作れないなら、短くできるかを問い合わせること自体が制度の想定に入っている。都市型との違いは地方インターンの基本でも触れた。
有給の形なら、収入を止めずに現地へ行ける
シフトを失う問題に正面から答えるのは、ふるさとワーキングホリデーである。都市部の若者などが概ね2週間から1か月地方に滞在し、働いて収入を得ながら、住民との交流や学びの場を通じて地域での暮らしを体感する制度として設計されている。総務省の資料では、平成28年4月から令和8年3月までに6,856人が参加した。令和6年度は66団体で858名、令和7年度は59団体で877名である。
就労先として挙げられているのは、特産品づくりを含む農業、旅館やホテル、酒造業、窯業などの製造業、スキー場や伝統工芸の販売といった観光業である。滞在中には、先輩移住者や住民との意見交換会、地域の歴史や文化や産業を学ぶツアー、地域イベントの運営体験が組み合わされる。参加者の約9割が満足し、約9割が再訪の意向を示したと記載されている。制度の全体像は総務省がまとめたふるさとワーキングホリデーの資料に出ている。
財政措置の対象になるのは、都道府県と三大都市圏外の市町村に加え、大都市圏内でも条件不利地域にあたる市町村を含む1,433市町村である。募集や受付、受入準備、活動支援に要する経費が措置率0.5で措置され、参加者の飲食費は対象外とされている。滞在場所の確保は自治体側の経費に含まれるため、宿の負担が自分に来るかどうかは募集ごとに異なる。
収入の額をあてにしすぎないほうがよい。就労先の時給と勤務日数で決まるので、通っている店と同額になる保証はない。それでも、0を前提にしなくてよい点が無給の短期プログラムとの決定的な差になる。
夏に2週間をあけるなら、動くのは春である
逆算すると、最初に動く季節は夏ではない。募集情報が出てから申し込み、必要に応じて書類審査や面接を経て受け入れ先が決まるまでに時間がかかる。自治体の側も、募集・受付、受入準備、活動支援という順で経費を組んでいる。6月に探し始めて8月に行くのは、枠が残っていれば可能というだけで運任せになる。
バイト先への相談も同じ理屈で前に置きたい。2週間不在にする話を直前に持ち込めば、代わりを探す負担は店に行く。春のうちに夏の予定として伝えておけば、シフトの組み方で吸収できる余地が残る。辞める相談ではなく時期の相談として出すほうが通りやすい。
受け入れ側が選考に体験を組み込む例も出てきている。岡山県笠岡市は採用過程を1次試験、1.5次試験、2次試験の三段階にし、1.5次試験で応募者に2泊3日滞在してもらって協力隊の会議や地域協力活動を一緒に行う形をとっている。学生に限った受け入れでは、北海道森町が令和6年度に5名の大学生をインターンとして迎え、林業と木材産業に関する活動を中心に、町内事業者と連携した木育イベントなどに参加させた。うち1名は大学卒業後に町の協力隊員として活動する予定だという。
最初の1件を自力で見つけるのが難しいなら、学生と地域の間に立つ窓口から入る手もある。大学のキャリアセンター、自治体の移住定住担当課、FLASPOのような仲介の仕組みのいずれかに、希望する期間と動ける時期を先に伝えておくと、募集が出た瞬間に話が進む。休学まで含めて考える場合の数字は地方創生インターンの内訳にまとめてある。
よくある質問
2週間休むとバイトを失わないか。契約の形によるが、長期休暇の不在は珍しい事情ではない。問題になるのは不在そのものより伝える時期で、人員の手当てができる時間を渡せるかどうかで扱いが変わる。復帰後のシフトを先に約束しておくと、戻る場所を残しやすい。
交通費や宿泊費は誰が負担するのか。ふるさとワーキングホリデーでは、滞在場所の確保や実施団体内の移動費が自治体側の経費として措置の対象に入っている。ただし措置されることと参加者が無料になることは別で、負担の線引きは募集要項に書かれる。応募前にそこだけは読んでおきたい。
単位になるのか。三省合意では、タイプ2、タイプ3、タイプ4のうち実施期間等の一定の水準を満たした場合には、大学等の教育課程に位置付けられたものとして単位が認定される場合が多いとされている。個人で申し込んだ滞在が後から単位になることはまずないので、先に大学の実習科目の枠を確認するほうが早い。
1年生でも参加できるのか。タイプ3の実施時期要件は学部3年・4年ないし修士1年・2年を前提にしているが、おためし地域おこし協力隊や地域おこし協力隊インターン、ふるさとワーキングホリデーの側に学年の定めは置かれていない。学年の条件は募集ごとに異なるため、要項で確かめることになる。
無給か有給かはどこで分かるのか。三省合意の情報開示要件は、無給か有給かを実施時期や場所と並べて募集要項に記載し、ホームページ等で公表することを求めている。書かれていない募集は、問い合わせて確認してから応募する対象だと考えてよい。
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