災害ボランティアはどう動くのか|受付の仕組みと事故データで見る安全

被災地の映像を見て、何か手伝えることはないかと検索したとする。そこで最初に当たるのが「現在は県内にお住まいの方に限って募集しています」という案内で、次に当たるのが「受付は事前登録制です」という一行である。駆けつける気持ちと、受け入れる側の段取りは、はじめから同じ速さでは動かない。

現地に入る前に、受付という関門がある

災害が起きたあと、被災した市町村には災害ボランティアセンターが立ち上がる。運営を担うのは多くの場合その地域の社会福祉協議会で、被災者からの困りごとを聞き取り、作業の中身と人数を決め、集まった人を割り振るところまでを引き受ける。つまり人手を使う主体は被災した住民であり、センターはその間に立つ窓口にあたる。

規模の感覚をつかむために、令和6年能登半島地震の数字を見ておきたい。総務省中部管区行政評価局がまとめた災害ボランティア活動上の事故事例集は、この地震で石川県内に延べ約18万人が入ったとしている。出典は全国社会福祉協議会の集計で、令和7年7月末時点の数である。これだけの人数が動くからこそ、宿も道も食料も被災地の資源を使わせない「自己完結」が求められ、募集範囲が段階的に広がる運用になっている。

順番としては、募集の告知を見る、登録して日程を取る、当日は受付で保険の加入を確認される、作業班に分かれて資材を受け取る、現場へ移動する、終わったら報告して戻る、という流れになる。最初の一歩は現地ではなく、住んでいる市区町村の社会福祉協議会の窓口であることが多い。

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法律の中でボランティアはどこに置かれているか

善意の行為だから制度の外にある、というわけではない。災害対策基本法第5条の3は、国と地方公共団体に対し、ボランティアによる防災活動が災害時に果たす役割の重要性に鑑み、その自主性を尊重しつつ連携に努めなければならないと定めている。同条第2項では、国は広報や啓発を通じて関心と理解を深めるほか、休暇の取得の促進その他の参加を促すための措置に努めるとされている。働きながら参加する人の存在が、条文の側で想定されているわけである。

仕組みは近年さらに動いた。令和7年の同法改正で、被災者援護に協力する団体を国が登録する制度が新設された。第33条の2が挙げる業務は、避難所の運営、炊き出しその他による食品の給与または飲料水の供給、被服や寝具など生活必需品の給与または貸与、住宅の応急修理や土砂その他の障害物の除去、被災者からの相談への対応や情報提供、そしてボランティアの受入れの実施に係る連絡調整である。内閣府は令和8年9月4日付けで5団体を新たに登録し、登録団体は合計38団体になったと公表した。

個人が登録するものではないが、この制度は参加先を選ぶときの手がかりになる。行政と顔の見える関係を持つ団体がどこかを、国の公表資料から確かめられるからである。

けがは「がれき」より「運搬」で起きている

危ない作業といえば倒壊した家屋やがれきを思い浮かべる。ところが実際の事故の分布はそこからずれる。先に挙げた総務省中部管区行政評価局の資料は、石川県社会福祉協議会と災害ボランティアセンターを設置した12市町の社会福祉協議会から75件の事故を集め、活動の内容別と事故の型別に整理している。骨折や靱帯断裂に至った例も含まれる。

区分 内訳 割合
活動内容別 災害ごみの搬出・運搬・分別 33.3%
活動内容別 家財の搬入・搬出 20.0%
活動内容別 がれきの撤去 16.0%
活動内容別 活動前後の移動 10.7%
事故の型別 動作の反動、無理な動作 18.7%
事故の型別 切れ、こすれ 16.0%
事故の型別 転倒 14.7%

運ぶ作業が全体の半分を占め、型でみると重い物を持ったときの腰の痛みが最も多い。次に多いのが刃物やガラス、金属片による切り傷で、三番目が転倒である。つまり備えるべきは特殊な技能ではなく、持ち方と足元と手の守り方という、どの現場にも共通する基本になる。移動中の事故が1割を超えている点も見落としにくい。

この事例集は、厚生労働省石川労働局の協力を得て原因と対策を整理し、内閣府を通じて全国社会福祉協議会と全国災害ボランティア支援団体ネットワークに周知を依頼したものである。参加前に目を通しておくと、受付で渡される注意事項の意味がつかみやすくなる。

担い手は増えるどころか細っている

報道の量とは裏腹に、統計が示す参加の裾野は広がっていない。総務省統計局の令和3年社会生活基本調査によれば、ボランティア活動全体の行動者率は17.8%で、5年前より8.2ポイント下がった。このうち「災害に関係した活動」は0.8%で、東日本大震災のあった2011年の3.8%、熊本地震のあった2016年の1.5%を下回る。

都道府県別にみると、熊本県が2.5%で最も高く、佐賀県1.8%、長野県1.4%と続く。大きな被害を経験した地域ほど数字が立ち上がる構図で、裏を返せば身近に災害がない土地では関わる機会そのものが生まれにくい。受け皿の側も同じ傾向にあり、内閣府のNPO法人の活動分野別の統計では、2026年3月31日現在で災害救援活動を定款に掲げる法人は4,552件にとどまる。保健・医療・福祉の28,503件とは桁がひとつ違う。

数が細いと、発災のたびに経験のない人が大量に入ることになる。安全対策が前もって共有されているかどうかが、ここで効いてくる。参加の入口についてはボランティアの始め方を整理した記事も合わせて読むと流れがつかめる。

最初の一日を具体的に組み立てる

持ち物は作業内容で変わるが、芯になるものは決まっている。踏み抜き防止の中敷きを入れた厚底の靴、革手袋、防じんマスク、保護めがね、着替え、多めの飲料水である。泥や粉じんの中では、のどと目と手のひらが先に傷む。終わったあとに洗える服装かどうかも、現地では意外と重く効く。

保険は出発前に済ませておく。ボランティア活動保険は居住地の社会福祉協議会で年度単位で加入でき、加入日からではなく加入手続きの翌日から有効になる扱いが一般的なので、前日の申し込みでは間に合わないことがある。天災によるけがまで補償されるかは加入する型によって違うため、災害現場に入るなら補償範囲を窓口で確かめてから選びたい。

現場での振る舞いでは、三つだけ意識すれば大きく外さない。重い物は人数を増やして腰を落として持つ。足元の釘やガラスを前提にして、急いで歩かない。体調が落ちたら申し出て休む。無理をして自分が負傷すれば、救護の手が被災地から一つ減る。初回の心構えは初めてのボランティアの心構えをまとめた記事、負担の見積もりはボランティアのデメリットを扱った記事が参考になる。地域と関わる活動の広がりについてはFLASPOでも紹介している。

よくある質問

学生でも参加できるのか。多くのセンターは高校生以上を受け入れており、未成年は保護者の同意書を求められる。学校の単位や就職活動のために参加するのであっても、現地での役割は同じで、求められるのは最後まで安全に作業を終えることである。

技術がなくても役に立つのか。前出の事故データが示すとおり、現場の作業の多くは物を運び、分け、片付けることで占められている。力仕事が難しければ、受付の補助、物資の仕分け、資材の洗浄や返却確認といった後方の仕事がある。できることを先に申告したほうが配置はうまくいく。

いつ行けばよいのか。発災直後は道路も宿泊も逼迫しており、募集が始まるまで待つのが原則になる。むしろ人が減る数か月後のほうが手が足りないことが多く、片付けが一段落してからも家屋の清掃や引っ越しの手伝いは続く。センターの募集情報を定期的に見るのがよい。

費用は誰が負担するのか。交通費と宿泊費、食事は参加者の自己負担が基本で、保険料も自分で払う。被災地の商店やガソリンスタンドを使うことが地域経済の支えになる場面もあるが、営業状況は時期によって変わるため、出発前に現地の案内を確認しておきたい。


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