国際交流と語学|高校生51.6%という到達度から学び方を考える

国際交流と語学|高校生51.6%という到達度から学び方を考える

「話せるようになってから」と考えると順番が逆になる

留学説明会や交流イベントの申込みをためらう理由として、よく挙がるのが語学力である。もう少し英語が通じるようになってから、聞き取れるようになってから、と条件をつけているうちに募集期間が終わってしまう。この先延ばしは珍しいものではなく、むしろ標準的な反応に近い。

ところが語学と交流の関係は、一方通行ではない。教室で身につけた力を外に持ち出す場面として交流を捉えるなら、たしかに語学が先になる。一方で、通じなかった経験が次の学習を引っ張るという順番も成り立つ。どちらが正しいかではなく、自分がいまどちらの段階にいるのかを見分けることが要点になる。

見分けるには、手元の感覚だけでは足りない。自分の語学力が高いのか低いのかは、比べる相手がいなければ判断できず、不安が実力を低く見積もらせる。公的な調査が全国規模で測った到達度を並べてみると、自分の位置がかなり違って見えてくることがある。

ここでは、国の調査が示す中高生の英語力、学科による差、海外で日本語を学んでいる人の規模、そして日本人学生が実際に選んでいる留学期間という四つの数字を順に置いていく。語学と交流のどちらを先に動かすかを決める材料になるはずだ。

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中学生52.4パーセント、高校生51.6パーセントという現在地

文部科学省の令和6年度「英語教育実施状況調査」は、全ての公立中学校9,130校と高等学校3,241校を対象に、令和6年12月1日を基準日として実施されている。生徒の英語力を国際的な指標のCEFRに当てはめて集計した結果が、現在地を知る手がかりになる。

中学3年生のうちCEFR A1レベル相当以上、つまり英検3級相当以上とみられる生徒は52.4パーセントだった。高校3年生でCEFR A2レベル相当以上、英検準2級相当以上は51.6パーセントである。国は第4期教育振興基本計画で、どちらも6割以上という目標を掲げている。

区分 平成25年度 令和5年度 令和6年度 国の目標
中学生 A1相当以上 32.2% 50.0% 52.4% 60%
高校生 A2相当以上 31.0% 50.6% 51.6% 60%
高校生 B1相当以上 - 19.8% 21.2% 30%
中学の英語教師 B2以上 27.9% 44.8% 46.2% -
高校の英語教師 B2以上 52.7% 80.7% 82.2% -

この表から読み取れることは二つある。一つは、十年あまりで到達度がおよそ20ポイント上がっており、全体の水準は確実に押し上げられてきたこと。もう一つは、英検2級相当とされるB1レベルまで届いている高校生が21.2パーセントにとどまり、目標の3割とは9ポイント近い開きが残っていることである。

言い換えると、交流の場で求められる水準を基準に自分を測ると低く見えるが、同学年の分布に照らせば真ん中あたりという人が相当多い。準2級相当で立ち止まっている状態は、例外ではなく過半数が通る地点だと捉えたほうが現実に合う。

同じ高校生でも64.7パーセントと22.5パーセントに分かれる

全国平均だけを見ていると見落とすのが、学科による落差である。同じ調査を学科別に集計すると、CEFR A2レベル相当以上の高校生の割合は、普通科で64.7パーセント、英語教育を主とする学科および国際関係に関する学科で95.3パーセント、その他の専門学科および総合学科で22.5パーセントとなっている。上と下の差は70ポイント以上に達する。

生まれつきの素質の差とは考えにくい。同じ調査は、授業の中で生徒自身が英語を使って活動している時間の割合も調べていて、授業の半分以上の時間を言語活動に充てている高等学校は全体で56.6パーセント、前年度の54.3パーセントから増えている。学科別では国際関係に関する学科が85.5パーセントで、普通科の57.1パーセント、その他の専門学科および総合学科の51.9パーセントを大きく上回る。

調査を委託された分析でも、生徒の英語力には、生徒自身の言語活動、教師の英語使用と英語力、外国語指導助手との授業外の活動などが影響していると整理されている。つまり差をつくっているのは、英語に触れる量そのものではなく、自分の口と手を動かした時間のほうだということになる。

この構図は、学校の外にも当てはまる。教材を読む時間を増やしても伸び悩む人が、交流イベントに月1回参加しただけで聞き取りが変わった、という話は珍しくない。使う側に回る時間を確保できる場を探すほうが、順番として効率がよい。学生が国際交流を始める7つの方法では、学内から海外まで費用と難易度で並べているので、自分の手の届く範囲から選びやすい。

日本語を学んでいる人が、143の国・地域に400万人いる

語学の話になると、学ぶ側はいつも日本人だという前提になりがちだ。実際には逆向きの流れが同時に存在する。国際交流基金の2024年度海外日本語教育機関調査によれば、143の国・地域で日本語教育が行われていることが確認され、機関数は19,344、教師数は80,898人、学習者数は4,000,750人に達した。いずれも過去最多である。

学習者が400万人を超えたのは今回が初めてで、機関数は前回調査から1,072機関、5.9パーセント増えた。調査は2024年9月から12月にかけて行われ、一部の国・地域では2025年5月まで続いている。地域別に見るとアジアの学習者が全体の8割近くを占め、教育段階別では中等教育課程の学習者が約半数という構成になっている。

この数字が交流の現場で意味するのは、相手も学習者だという事実である。日本語を習っている高校生や大学生が世界中にいて、その多くは練習相手を探している。英語で完璧に話す責任を一人で背負う必要はなく、互いの第二言語を交換する関係のほうが成立しやすい。

実際の場面でも、相手の日本語と自分の英語を行き来させながら進む会話は多い。片方の言語だけで押し通そうとすると沈黙が増えるが、二つを混ぜれば情報量は保てる。語学力の不足を理由に参加を見送る前に、相手側の学習需要という視点を一度入れてみる価値がある。

6万人が選んだ「1か月未満」で何が伸びるのか

日本人学生がどのくらいの期間、外へ出ているのかも押さえておきたい。日本学生支援機構の2024年度日本人学生留学状況調査では、2024年度に留学を開始した日本人学生は91,054人で、前年度より1,875人、2.1パーセント増えた。大学間の協定等に基づくものが57,262人、基づかないものが33,792人である。

注目したいのは期間の偏りで、1か月未満の短期が60,301人を占め、前年度から3,257人、5.7パーセント増えている。それ以外の期間はいずれも前年度を下回った。全体の人数も、2018年度に記録した115,146人という最高値には戻っていない。短期に人が集まり、長期が細るという形がはっきり出ている。

数週間で語学力が劇的に変わるとは言いにくい。ただ短期で確実に変わるものもあって、聞き取りへの抵抗感、知らない単語を推測で埋める度合い、話し始めるまでの時間といった部分は、帰国直後にはっきり差が出る。文法の知識ではなく、使うときの構えが動くという理解が実態に近い。

したがって短期の滞在は、語学の仕上げではなく着火装置として設計したほうが得をする。行く前に基礎の文型を整え、帰ってから話す機会を続ける。その前後をつなげる場として国内の交流活動を置くと、短期の効果が目減りしにくい。学び方の全体像は英語学習とは何か?意味・目的・大学生が今知るべき基礎知識に、準備の進め方は英語と留学準備の進め方とは?大学生向けにやることを解説にまとめられている。

語学と交流のどちらから動かすかに正解はないが、使った時間の長さが到達度に効いているという事実は共通している。地域や学生の活動を扱うFLASPOでも、参加の入口は語学力ではなく回数だという話がよく出てくる。まずは一度参加し、そこで足りなかった語彙を持ち帰るところから始めたい。

よくある質問

どのくらいの語学力があれば交流イベントに参加してよいのでしょうか

主催者が水準を指定していない限り、下限はないと考えてよい。国の調査で高校3年生のうち英検準2級相当以上が51.6パーセントという分布を踏まえると、参加者の多くは流暢さとは縁遠い地点から始めている。むしろ事前に自己紹介と質問を三つ用意しておくほうが、当日の負担は小さくなる。

短期留学と国内の交流活動では、どちらを先に選ぶべきですか

費用と時間の制約が強いなら国内から始めるのが現実的である。1か月未満の短期を選んだ学生が60,301人に上る一方で、国内の活動は週単位で繰り返せるという利点がある。回数を積める環境を先に確保し、まとまった休みに短期を重ねる順番なら無理なく続く。

英語以外の言語を学んでいる場合、交流の機会は少なくなりますか

必ずしもそうではない。日本語学習者が143の国・地域に広がっている状況を踏まえると、相手が日本語を学んでいる場合は共通語を英語に固定する必要がない。学んでいる言語の話者と日本語で補い合う組み合わせは、かえって希少価値が出ることもある。

語学の勉強と交流への参加を両立させる時間が取れません

両者を別の予定として数えているうちは、確かに時間が足りない。言語活動の時間が長い学科ほど到達度が高いという調査結果は、使う時間自体が学習だという読み方を許す。交流の場を学習時間に算入し、机に向かう時間をその準備と復習に割り当てる形に組み替えると収まりやすい。

英検やTOEFLのスコアは交流の場で役に立ちますか

役割が分かれる。協定に基づく留学や奨学金の選考では出願要件になっているため、スコアがなければ入口に立てない。一方で交流そのものの場面では、級やスコアを問われることはほとんどない。要件として必要な場面と、実際の会話で効く力を別々に積むという整理が現実的である。


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