新歓の様子を縦型の動画で撮ってはみたものの、どのアプリに出すかで意見が割れる。この分岐は、代が替わるたびに同じ場所で起きる。総務省情報通信政策研究所が令和8年6月に公表した令和7年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書の年代別利用率を並べてみると、TikTokだけが他のサービスとは違う形をしている。その形から運用の決めごとを逆算していく。
10代だけが、20代を上回っている
同報告書の表5-1-1は、13歳から79歳までの男女1,800人(全国125地点、令和7年12月1日から7日の訪問留置調査)に主なサービスの利用の有無を尋ねた結果を年代別に並べたものだ。TikTokの利用率は全年代で36.7%、10代で67.9%、20代で61.5%、30代で44.7%、40代で42.6%、50代で32.2%、60代で21.2%、70代で11.1%となっている。
注目したいのは10代と20代の並びだ。同じ表に載っている7サービスのうち、10代の利用率が20代を上回っているのはTikTokだけで、LINEは96.4%に対して97.7%、Instagramは69.3%に対して82.6%、X(旧Twitter)は56.4%に対して73.4%と、いずれも20代のほうが高い。学生団体が高校生や大学1年生に向けて何かを届けたいとき、この一点だけが他と逆を向いている。
| サービス | 10代 | 20代 | 全年代 |
|---|---|---|---|
| TikTok | 67.9% | 61.5% | 36.7% |
| 69.3% | 82.6% | 54.8% | |
| X(旧Twitter) | 56.4% | 73.4% | 44.7% |
| YouTube | 95.0% | 96.3% | 81.5% |
| LINE | 96.4% | 97.7% | 92.9% |
前年度の調査と比べると、TikTokの全年代の利用率は33.2%から36.7%へ、10代は65.7%から67.9%へ動いている。伸びは急ではないが、年代の上のほうへ少しずつ広がっている途中にある。
見ている人は多く、出している人は2.7%
同じ報告書の図5-1-2は、利用している人のうち「書き込む・投稿する」と答えた人の割合を別に示している。TikTokは利用全体36.7%に対して2.7%。LINEは51.2%、Instagramは18.0%、X(旧Twitter)は9.6%、YouTubeは4.2%だから、投稿する側に回っている人の割合は、主要なサービスのなかでもかなり低いほうに位置する。
この数字は、学生団体にとっては悪い報せではない。見る人の層は厚いのに、出す側の人数はそれほど多くない。つまり競合しているのは同年代の個人アカウント全体ではなく、同じテーマで出し続けている少数の発信者だけだ。半年続けられるかどうかが、ほぼそのまま差になる。
逆に言えば、最初の数本で反応がないことを失敗と受け取ると、この層に残れない。投稿を止める判断は、本数ではなく期間で決めておくほうがいい。週に1本を3か月、といった形で先に区切っておくと、代替わりの引き継ぎ書にも書ける。
協賛がついた投稿は、広告の側に移る
活動資金のために企業から協賛を受ける団体は多い。ここで効いてくるのが、令和5年3月28日に指定され、同年10月1日に施行された「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」(令和5年内閣府告示第19号)だ。根拠は景品表示法第5条第3号で、消費者庁はステルスマーケティング規制のページで告示と運用基準を公開している。
責任を負うのが誰かは、消費者庁のステルスマーケティングに関するQ&Aにはっきり書かれている。規制対象となるのは「自己の供給する商品又は役務の取引に関する表示について、その内容の決定に関与した事業者(いわゆる広告主)」であり、依頼を受けて投稿する側、つまりインフルエンサーやアフィリエイターは規制の対象外とされている。違反した場合は措置命令という行政処分が行われ、課徴金納付命令の対象にはならない。ただし優良誤認表示や有利誤認表示が含まれていれば、そちらで課徴金の対象になりうる。
団体がどちらの側に立つかは、何を売っているかで変わる。協賛企業の商品を頼まれて紹介するだけなら、団体は広告主ではない。一方、自分たちのイベントチケットや物販を、第三者の感想のように見える形で出せば、団体自身が広告主の位置に来る。明示の方法として同Q&Aが挙げているのは「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」といった用語の記載や、提供を受けている旨を文章で書く方法だ。短い動画では見落とされやすいので、概要欄ではなく画面内に置くほうが安全側に倒れる。
音を載せる前に、確かめる場所がある
縦型の動画は音とセットで作ることが多い。日本音楽著作権協会は動画投稿サービスと利用許諾契約を結んでおり、TikTokも契約済みのサービスとして一覧に載っている。そのため、管理楽曲を含む動画は個別の手続なしに投稿できる、というのが原則になる。
ただし同協会の動画投稿サービスでの音楽利用の案内には、事前の手続が必要になる例外が書かれている。「特定の企業・団体や商品、サービスを宣伝するもの」に当たる場合がそれで、協賛企業を紹介する動画はここに触れる可能性がある。さらに、市販のCDやダウンロードした音源をそのまま使うときは、著作権とは別に著作隣接権、つまり音源製作者やアーティストの権利の許諾が要るとされている。アプリ内の音源ライブラリから選ぶのと、手元の音源を貼り付けるのとでは、確認すべき相手が違う。
撮影そのものにも先に決めておくことがある。写り込む人にどう確認を取るか、卒業したメンバーから削除を求められたときに誰が受けるか。この二つを引き継ぎ書に一行ずつ書いておくだけで、後任が判断に詰まる場面が減る。学生の活動と社会の接点をどう設計するかは、FLASPOが扱っているテーマでもある。
代が替わるときに切れるのは、だいたいアカウント
運用が止まる原因は、やる気よりも鍵の所在であることが多い。登録に使ったメールアドレスが個人のものだったり、二段階認証の通知先が卒業したメンバーの端末だったりすると、次の代はログインできない。作った時点で、団体名義のメールアドレスに付け替えておく手当てが要る。
通帳や名簿と同じ順番で渡すものとして扱うと取りこぼしが減る。サークルの引き継ぎで名簿と通帳とアカウントを渡す順番を整理した記事があるので、そちらと合わせて手順に落としておきたい。アカウントの帰属や投稿の承認をどこで線引きするかは、学生団体のSNS運用の全体像の側でも扱っている。
編集の手際そのものを上げたい場合は、動画編集とTikTokの作り方のような技術側の記事が参考になる。運用の決めごとと編集の技術は別の話なので、担当を分けてもいい。
よくある質問
投稿が伸びないとき、本数を増やすべきでしょうか。増やす前に、誰に向けた動画なのかを一度戻して確かめたい。前述の調査では10代の67.9%が利用している一方、60代は21.2%、70代は11.1%にとどまる。保護者や自治体の担当者に届けたい内容であれば、本数ではなく場所を変える判断のほうが効く。
協賛企業から「普通の投稿に見えるように紹介してほしい」と言われたらどうすればよいですか。その依頼は、企業側が措置命令を受ける原因になりうる。消費者庁のQ&Aが示すとおり責任は広告主に向かうため、断る理由は団体の都合ではなく相手の不利益として説明できる。明示の文言を入れた形で出す、と先に伝えるのが現実的だ。
アカウントは個人名と団体名のどちらで作るべきですか。団体名で作り、連絡先を団体名義のメールアドレスにしておきたい。個人名のまま運用すると、その人が抜けた時点で投稿も過去の動画も一緒に失われる。発信を活動の記録として残すなら、名義は最初に決めておく項目になる。
投稿の内容は誰が最終確認しますか。少人数でも、撮る人と出す人を分けておくほうがいい。撮影者は映っているものに慣れてしまい、背景の個人情報や第三者の顔を見落としやすい。出す直前に別の目を一つ通す仕組みがあれば、取り下げの回数は確実に減る。
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