業界研究と企業研究の違いとは|対象・資料・使う場面で整理する | FLASPO MAGAZINE

業界研究と企業研究の違いとは|対象・資料・使う場面で整理する

同じ会社のページを何度も開いているのに、志望動機が「成長できる環境だと感じた」で止まる。この行き詰まり方をしているとき、たいてい業界の話と個社の話が一枚に混ざっている。二つの作業は順番が違うだけではなく、当たるべき資料がそもそも別の場所にある。どちらをやっているのかを意識して分けるだけで、書ける材料の量が変わる。

対象が違うのではなく、層が違う

分け方として分かりやすいのは、答えが一社だけに当てはまるかどうかで線を引く方法だ。「この市場は国内では縮小しているが、海外では伸びている」は、同じ区分のどの会社にも当てはまる。これが業界の層の話になる。「その縮小のなかで、この会社は仕入れ側に事業を広げた」は、一社にしか当てはまらない。こちらが企業の層だ。

選考で問われる内容も層ごとに分かれている。なぜこの業界なのかという問いには、他の区分と比べてどこが違うかを答える。なぜ当社なのかという問いには、同じ区分の他社と比べてどこが違うかを答える。混ぜて答えると、業界の説明を長くしただけで社名が入れ替え可能な文章になり、面接官からは準備不足に見える。

観点 業界研究 企業研究
答えが当てはまる範囲 同じ区分の全社 その一社だけ
主に使う資料 国の統計、省庁の白書、業界団体の年報 有価証券報告書、採用ページ、青少年雇用情報
出す場面 志望業界の説明、軸の提示 志望動機の決め手、逆質問
終わりの目安 外した区分の理由が言える 同業他社との違いが二つ言える

業界の輪郭は、個社の都合では動かない

業界側を調べるときに土台になるのが、総務省の日本標準産業分類である。令和5年7月告示の第14回改定が令和6年4月1日から適用されていて、大分類20区分の下に中分類、小分類、細分類が置かれている。公的統計を産業別に表示するための共通の物差しなので、各区分の就業者数や事業所数は統計から直接取れる。

この枠組みが企業研究と決定的に違うのは、調べる側が区切りを動かせないところだ。会社が自社をどう名乗ろうと、統計上どの区分に数えられるかは分類の定義で決まる。だから業界の層で得た数字は、志望先が自社の資料でどう説明していても、外側から当てられる検算材料になる。

企業の層には、求めれば出てくる項目が決まっている

個社を調べる段で見落とされがちなのが、法律で提供の枠組みが定まっている情報の存在だ。青少年の雇用の促進等に関する法律の第13条と第14条により、新規学校卒業者向けの募集や求人申込みを行う事業主は、積極的に青少年雇用情報を提供する努力義務を負う。そのうえで、応募者や応募を検討している者から求めがあった場合には、情報を提供しなければならない。

提供項目は三つの類型に整理されていて、求めがあったときは各類型につき一つ以上を出すことが義務になる。類型は募集・採用に関する状況、職業能力の開発・向上に関する状況、企業における雇用管理に関する状況の三つで、その下に合計12の項目が並ぶ。厚生労働省の若者雇用促進法の資料に、項目の一覧と留意事項が載っている。

類型 情報提供項目
募集・採用に関する状況 過去3年間の新卒採用者数・離職者数
募集・採用に関する状況 過去3年間の新卒採用者数の男女別人数
募集・採用に関する状況 平均勤続年数
職業能力の開発・向上に関する状況 研修の有無及び内容
職業能力の開発・向上に関する状況 自己啓発支援の有無及び内容
職業能力の開発・向上に関する状況 メンター制度の有無
職業能力の開発・向上に関する状況 キャリアコンサルティング制度の有無及び内容
職業能力の開発・向上に関する状況 社内検定等の制度の有無及び内容
企業における雇用管理に関する状況 前年度の月平均所定外労働時間の実績
企業における雇用管理に関する状況 前年度の有給休暇の平均取得日数
企業における雇用管理に関する状況 前年度の育児休業取得対象者数・取得者数(男女別)
企業における雇用管理に関する状況 役員及び管理的地位にある者に占める女性の割合

この表の価値は、聞いていい内容が公的に列挙されている点にある。平均勤続年数や月平均所定外労働時間を質問するのは失礼ではないかと迷う人がいるが、制度としては提供が想定されている範囲の話だ。企業側も、ホームページでの公表や会社説明会での提供、求人票への記載によって全項目を積極的に示すことが望ましいと指針で定められている。

情報提供を求める相手は応募者本人に限られない。求人申込みを受けたハローワークや特定地方公共団体、職業紹介事業者から求めがあった場合も対象になる。学校が職業紹介事業者として関わっているなら、就職課を通じて確認する道もある。直接聞きにくいと感じる項目があるときは、この経路を使うほうが気が楽だという学生は少なくない。

読むときの注意は、数字が企業全体の雇用形態別で出てくるところにある。配属される部署ごとの実態とは一致しないことがあるので、気になる項目は面接の逆質問で部署単位の状況を重ねて聞くといい。

重なる部分は、同業他社の比較として現れる

二つの層は完全に分離しているわけではなく、競合比較のところで接する。同じ中分類に属する会社を三社並べ、売上の構成比と主な取引先と直近の投資先を横に置くと、その区分で各社が取っている立ち位置の違いが見えてくる。ここで出てくる違いは、業界の構造を踏まえた個社の選択なので、両方の層をまたいだ材料になる。

比較の対象社をどう選ぶかで手間が変わる。知名度の順に並べると大手ばかりになって差が出にくい。中分類の中から、事業の重心が明らかに違う三社を選ぶほうが輪郭がはっきりする。一社を深く掘った記事の構成を見たいなら、三菱商事とは?歴史と事業の特徴を就活生向けに解説【就活生向け企業研究ガイド】のような形が参考になる。

並べる項目は多くしすぎないほうがいい。三社を五項目で比べた表が一枚あれば、面接で比較を求められたときに必要な情報はほぼ出せる。項目を増やすと作るのに時間がかかるわりに、どこが決め手だったのかが自分でも分からなくなる。

書類と面接では、二つの成果を別々に出す

提出物に落とすときは、業界の層を前半、企業の層を後半に置く構成が扱いやすい。前半で区分を選んだ理由を書き、後半でその区分のなかでこの会社を選んだ理由を書く。前半が長くなりすぎると後半が削られ、どの社にも出せる文章になってしまうので、分量は後半のほうを厚くする。

面接では逆に、後半から話し始めるほうが通りがいい。先に個社の話を出し、なぜそこに関心を持ったのかを説明する流れで区分の話に戻る。順序を入れ替えても内容は変わらないが、聞き手が最初に知りたいのは目の前の会社との関係のほうだ。文章としての組み立て方は就活の志望動機の書き方|例文付きで企業に刺さる構成を解説が手がかりになる。地域の企業の取り組みを具体例から見たいときはFLASPOも使える。

よくある質問

どちらを先にやるべきですか。業界が先で、企業が後になる。順番を逆にすると、比較する相手が決まらないまま一社だけを見ることになり、その会社の特徴なのか区分全体の特徴なのかが判別できない。ただし知っている社名から入って、その会社が属する区分をたどり直す進め方なら問題はない。

企業研究はどこまで調べれば十分ですか。同業他社との違いを二つ、根拠つきで言えるようになったところが区切りになる。沿革や事業の一覧を暗記しても、違いが言えなければ選考では使えない。逆に違いが二つ言えるなら、残りの情報は面接の場で補える。

上場していない会社はどう調べればいいですか。有価証券報告書が存在しないので、採用ページと求人票、それに前述の青少年雇用情報が中心になる。地域の企業であれば、自治体の産業振興の資料や商工会議所の会員名簿に事業内容が載っていることも多い。

説明会で聞くべきことが分かりません。公表資料で確かめられる内容は聞かないほうがいい。調べれば分かることを質問すると、準備していないという印象だけが残る。資料に書かれている数字を挙げたうえで、その背景や今後の見通しを尋ねる形にすると、会話が続きやすい。


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