地域のことを数字で調べようとして、入口が見つからずに止まる人は多い。統計は省庁ごとにサイトが分かれ、数表はダウンロードして加工しなければ図にならない。RESASは、その手前の面倒をまとめて肩代わりする仕組みとして用意されている。
登録もお金もいらない入口
RESASは地域経済に関するさまざまなデータを、地図やグラフの形で見られる政府のシステムである。リーサスと読み、Regional Economy and Society Analyzing System の頭文字をとった名称で、2015年4月から提供が始まった。
使ううえで大きいのは、完全に無料で、ID登録も不要という点だ。ブラウザで開けばその場で動く。自治体の職員向けの道具という印象を持たれがちだが、利用者を限る仕組みは置かれていない。学生が卒業研究で使うことも、企業が出店の検討に使うこともできる。
提供の体制は複数の役所にまたがっている。搭載データの一覧は内閣官房地域未来戦略本部事務局と内閣府地方創生推進室の名義で公表され、システムの更新は経済産業省が公表する形をとる。問い合わせ先を探すときに迷いやすい部分である。
開いてから戸惑うのは、どのメニューに何が入っているかがすぐにはわからないことだろう。全体の構成を先に押さえておくと、探し物にかかる時間がかなり減る。
八つのマップという構成
分析メニューは八つに分かれている。それぞれが担当する領域は名前のとおりで、目的から逆に引けるようになっている。
| メニュー | 扱う領域 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 人口マップ | 人口の構成と推移 | 地域の輪郭を最初につかむ |
| 地域経済循環マップ | 生産・分配・支出の循環 | お金がどこへ向かうかを見る |
| 産業構造マップ | 産業別の構成 | 何で稼いでいる地域かを知る |
| 企業活動マップ | 企業の活動状況 | 担い手の層を確かめる |
| 観光マップ | 観光の動向 | 来訪者の動きを検討材料にする |
| まちづくりマップ | 人の流動と立地 | 拠点や導線を考える |
| 雇用/医療・福祉マップ | 雇用と医療・福祉 | 暮らしの支え手を見る |
| 地方財政マップ | 自治体の財政 | 施策の体力を測る |
この八つの並びは、地域を見るときの順序としてもよくできている。人がいて、稼ぎがあり、お金が流れ、それを行政が支える、という構造に沿っているからだ。
どのメニューでも、都道府県と市区町村を選んで表示する作りになっている。ただし表示できる細かさは元の統計に依存するため、市区町村まで下りないデータもある点は頭に入れておきたい。
メニューの中身は、他の仕組みと地続きになっている部分もある。地域経済循環マップに載る循環図は、環境省が整備してきた地域経済循環分析のデータが提供されたもので、自治体ごとの循環率を同じ定義で確かめられる。別々の役所の成果が一つの画面に集まっている形だ。
細かく条件を絞り込むほど、表示できない欄が増えることもある。元の統計に公表上の制約があるためで、小さな市町村を細かい産業分類で見ようとしたときに起きやすい。空欄はデータの不備ではなく、そこまでは出せないという合図として読む。
2025年に作り直され、2026年に増えた
システムは静止していない。経済産業省は2025年3月7日に新システムの提供開始を公表した。描画速度の向上、画面遷移を要する類似メニューの集約、スマートフォン対応といった利便性の改善に加えて、搭載データの精緻化による分析機能の高度化が実施されている。
さらに2026年6月18日のアップデートでは、新メニューとして「クレジットカード消費地分析」「クレジットカード消費額分析」「地域経済総合分析」が追加された。既存メニューの機能の高度化と、各種データの更新も同時におこなわれている。
搭載データの一覧は版を重ねており、令和8年6月18日時点の最新版はver.72にあたる。どの統計の何年のデータが載っているかは、この一覧で確かめられる。引用するときに必要になる情報なので、先に開いておくと後が楽になる。
画面の作りが変わった影響で、数年前に書かれた操作手順の記事は、そのままでは当てにならない箇所がある。手順を探すなら、RESAS Portalに置かれている公式のマニュアルを見るほうが確実である。
見る順番を決めておくと迷わない
項目が多いため、開いた順に眺めていると時間だけが過ぎる。何を知りたいのかを決めてから入るほうがよい。
地域の全体像をつかみたいなら、人口マップで年齢構成と増減の傾向を見て、産業構造マップで稼ぎ頭の産業を押さえ、地域経済循環マップでそのお金の向かう先を確かめる。この三つで輪郭は出る。
事業の検討に使うのであれば、観光マップやまちづくりマップのように人の動きを扱うメニューが中心になる。自治体と組む話を進めるなら、地方財政マップで相手の体力を見ておくと、提案の規模感がずれにくい。
気をつけたいのは、グラフの見た目に引きずられないことだ。色の濃さや線の傾きから受ける印象は、母数の違いで簡単に変わる。必ず数値を開き、分母が何かを確かめてから読む。市場分析の進め方で扱った手順は、ここでもそのまま使える。
一つの画面で結論を出そうとしないことも大切だ。RESASが見せるのは全国共通の統計であり、その町の事情は映らない。大きな事業所が一つ閉じただけで産業の構成が動く規模の市町村では、グラフの変化を現地の出来事と突き合わせて初めて意味が定まる。
使ってみる場も用意されている
データは開くだけでは身につかない。RESASには、実際に使ってみる場として地方創生の政策アイデアコンテストが併設されている。
このコンテストは、RESASなどのデータで地域の課題を分析し、その地域の未来をよくする政策アイデアを募る形式をとる。応募できるのは学生に限らず、自治体の職員や企業に勤める人も含まれる。2015年の第1回から毎年続いている。
受賞したアイデアがその後どうなったかを追うフォローアップの取り組みも置かれている。提案して終わりにしない仕掛けがある点は、学習用の教材との違いとして大きい。
分析だけなら、どこにいても手を動かせる。若い世代と地域をつなぐFLASPOが関わる現場でも、現地に住んでいない人がデータの整理を引き受けることは珍しくない。地方の人口減少のような大きな論点も、まず自分の関心のある市町村を一つ選んで開くところから始めると具体になる。
よくある質問
利用に費用はかかるのか
かからない。完全無料で、ID登録も不要である。有償のプランや会員向けの上位機能といった区分も置かれていない。
市区町村の単位で見られるのか
都道府県と市区町村を選んで表示する作りになっている。ただし表示の細かさは元となる統計の公表単位に左右されるため、都道府県までしか下りない項目もある。
RESASの図をレポートに使ってよいか
出典の書き方は利用規約で定められているため、公式サイトの案内を確認したうえで使う。図だけでなく、元の統計名と年次まで書き添えておくと、読む側が検証できる。
データが古いと感じたときは
データ一覧で年次を確かめる。統計によっては公表までに数年かかるものがあり、それはRESASの遅れではなく元の統計の性質である。最新の動きが要る場合は、月次で出る統計を別途あたることになる。
何から触ればよいか迷う場合は
自分が住んでいた町、あるいは訪れたことのある町を選んで人口マップを開くのが入りやすい。知っている景色と数字が結びつくと、他のメニューの読み方も早く身につく。
自治体の職員でなくても役に立つのか
立つ。就職先を選ぶときにその地域の産業構成を見る、出店や事業の検討に人の流れを見る、授業や卒業研究の題材にするなど、使い道は行政の計画づくりに限られない。誰でも同じ画面を開けることが、この仕組みの利点である。
アイデアコンテストプラットフォーム「FLASPO」

アイデア1つで、地域や企業とつながれる。
FLASPOは、全国の自治体・企業が開催する若者向けアイデアコンテストのプラットフォームです。
地域や企業が抱える課題に対して、あなたのアイデアで解決策を提案できます。
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