空家等対策特別措置法とは?2023年改正で加わった仕組みを整理

空家等対策特別措置法とは?2023年改正で加わった仕組みを整理

危ない家があっても、市役所が動けなかった時代

屋根の一部が落ちた家が通学路沿いに残っている。近所の人が市役所に相談しても、返ってくるのは「個人の財産ですので」という説明だった。2015年より前は、これが珍しくない対応だった。建物は所有者のものであり、危険に見えるというだけで行政が手を入れる根拠がなかったからだ。そこへ、持ち主が誰か分からない、相続人が十数人に分かれている、登記簿の住所に手紙を出しても戻ってくる、といった事情が重なる。危険だと分かっていても手続きが進まない状態が各地で生まれていた。空家等対策の推進に関する特別措置法、通称は空家法が2014年11月に公布され、2015年5月に全面施行されたのは、この行き詰まりを解くためである。市町村に調査と措置の権限を与え、固定資産税の課税情報を空き家対策の目的で内部利用できるようにして、所有者の特定を早めた。立入調査の根拠も置かれた。総務省統計局の住宅・土地統計調査によれば、2023年10月時点の空き家は900万2千戸、空き家率は13.8パーセントで、いずれも過去最多・過去最高である。法律はこの規模の問題を扱う土台として置かれた。

出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」、e-Gov法令検索「空家等対策の推進に関する特別措置法」。

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どこからが法律上の「空家等」なのか

半年ほど誰も泊まっていない別荘は対象になるのか。月に一度は風を通しに行く実家はどうか。判断の軸は使用の実態にある。空家法が定める空家等は、建築物またはこれに附属する工作物であって、居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの、およびその敷地を指す。常態という言葉が示すのは、たまたま数日空いている状態ではなく、おおむね年間を通じて使われていないという継続性である。電気や水道の使用実績、郵便物のたまり方、外観の傷み具合などから、市町村が総合的に判断する。国や地方公共団体が所有する建物は除かれる。対象が決まると、市町村は空家等対策計画をつくり、所在や所有者を調べてデータベースにまとめ、相談窓口を整えるという順に手を打っていく。計画づくりには、地域の住民や法務・建築の専門家が入る協議会を置くことができる。国はこうした取り組みを空き家対策総合支援事業などで財政面から支える。つまり空家法は、危ない家を取り締まる条文の集まりというより、市町村が空き家の全体像をつかんで手を打つための段取りを定めた法律だと捉えたほうが実態に近い。

特定空家等と管理不全空家等、二つの区分

空き家がすべて同じ扱いを受けるわけではない。強い措置の対象となるのが特定空家等で、四つの状態のいずれかに当てはまる家が該当する。倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態、著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態の四つである。問題は、この水準に達するまで行政が動きにくかったことだった。壁が剥がれかけている程度では手前の段階にとどまり、手をこまねいているうちに危険な状態へ進んでしまう。そこで2023年の改正が加えたのが管理不全空家等という区分だ。そのまま放置すれば特定空家等になるおそれがある家について、指導と勧告ができるようになった。改正法は令和5年法律第50号として成立し、同年12月13日に施行されている。所有者にとっては、行政の関与が始まる時点が一段早まったことを意味する。なお勧告を受けると土地の住宅用地特例が外れる点は両区分に共通で、詳しくは税の側から整理した記事に譲る。

区分 当てはまる状態 市町村がとれる措置
空家等 おおむね年間を通じて使用されていない建物とその敷地 調査、データベース化、情報提供、活用の相談
管理不全空家等 放置すれば特定空家等になるおそれがある状態 指導、勧告
特定空家等 保安上危険、衛生上有害、著しい景観の悪化など四つの状態のいずれか 助言・指導、勧告、命令、行政代執行

助言から代執行まで、階段は四段ある

市町村の措置は、いきなり重いものから始まらない。まず助言または指導があり、改善されなければ勧告、それでも動きがなければ期限を定めた命令、最後に行政代執行という順で進む。命令に従わなかった場合は50万円以下の過料が科されることがある。代執行は、所有者に代わって市町村が除却などを行い、かかった費用を所有者から徴収する仕組みだ。所有者が分からないときには公告を経て行う略式代執行があり、2023年の改正では、命令などの手続をとるいとまがない緊急時に使える緊急代執行が新たに設けられた。あわせて、略式代執行と緊急代執行の費用徴収を円滑にする規定も置かれている。もう一つ実務を変えたのが、市町村長に財産管理人の選任を家庭裁判所などへ請求する権限が与えられたことだ。相続人が誰も名乗り出ない家について、管理と処分を担う人を立てられるようになった。費用は最終的に所有者や相続人に請求される。段階を踏む設計になっているのは、途中で改善すればそこで終わるという意味でもある。連絡が来た段階で動くほど、選べる手は多く残る。

出典:国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)について」。

取り締まるだけの法律ではない

2023年の改正でもう一方の柱になったのが、使える空き家を使えるようにする仕組みである。中心市街地や観光の拠点、地域再生の核となる地区を市町村が空家等活用促進区域として定め、活用の指針を示したうえで、用途の変更や建て替えを進めやすくする。前面道路の幅が足りずに建て替えができなかった区域で、特例的に建築が認められる道が開かれるなど、規制の側を調整する条文が置かれた点が新しい。もう一つが空家等管理活用支援法人の指定制度だ。地域で空き家に取り組んでいる特定非営利活動法人や社団法人に公的な位置づけを与え、所有者からの相談対応や情報提供、所有者と使い手のつなぎ役を担ってもらう。行政が直接動かなくても、地域の担い手が間に入れるようにした仕組みである。所有者の責務も明確にされ、国や地方公共団体の施策に協力するよう努めることが定められた。移住希望者と物件を結ぶ入口としては、自治体の空き家バンクとは?仕組み・利用法・メリット5つ・デメリット4つで扱った制度が現実的な受け皿になる。人口が減る地域ほど空き家の出方は早く、その背景は過疎地域とは?指定基準・移住のメリット・仕事・補助金まとめと重なる。地域に入って現場を見てきたFLASPOの経験でも、法律の存在を知った所有者ほど早く相談に動いていた。

よくある質問

空き家を持っているだけで法律の対象になりますか。
おおむね年間を通じて使われていなければ空家等に当たる。ただし空家等であること自体に罰則はなく、指導や命令の対象になるのは管理不全空家等または特定空家等と判断された場合である。

特定空家等かどうかは誰が決めるのですか。
家屋のある市町村である。外観調査や立入調査をもとに、保安上の危険や衛生上の問題、景観への影響などを国のガイドラインに沿って判断する。

命令に従わないとどうなりますか。
50万円以下の過料が科されることがあり、そのうえで行政代執行に進む場合がある。代執行の費用は所有者に請求される。

相続人が複数いて話がまとまりません。
まず相続登記を済ませて名義を確定させたい。2024年4月から相続登記は義務化され、正当な理由なく期限内に申請しないと10万円以下の過料の対象になる。話がまとまらない場合は、市町村や支援法人の相談窓口を使う方法がある。

遠方に住んでいて管理ができません。
管理代行サービスや空家等管理活用支援法人に相談する道がある。郵便物の整理、通風、草木の手入れといった最低限の管理を続けているかどうかが、管理不全空家等と判断されるかの分かれ目になりやすい。

2023年の改正で所有者がすぐ対応すべきことは何ですか。
管理不全空家等という区分が増えたため、屋根や外壁の傷み、伸びきった草木など、外から見て分かる状態を先に直しておくことが実質的な備えになる。

市町村から連絡が来たら、まず何をすればよいですか。
担当課に連絡し、どの状態が問題とされているのかを具体的に確認する。改善の見通しを伝えれば、次の段階に進まずに済む場合が多い。改修や除却の補助制度を案内してもらえることもある。


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