自治体がSWOT分析を使う理由:行政計画策定での役割
自治体の行政計画にSWOT分析が組み込まれるケースが増えています。その理由と具体的な役割を解説します。
2015年の地方創生法施行以降、各自治体が策定する「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に現状分析の義務が課されました。SWOT分析はその分析ツールとして内閣府・総務省のガイドラインでも紹介されており、多くの自治体が活用しています。
①まち・ひと・しごと創生総合戦略(5年計画)。②第〇次総合計画(10年計画)。③観光振興計画・産業振興計画(個別計画)。④空き家対策・移住促進計画。これら計画書の「現状分析」セクションにSWOT分析が入ることで、計画の根拠が構造化されます。
就活やビジコンの場面では、SWOT分析と自治体が直接役立つ状況が多くあります。フレームワークを知っているだけでなく、実際に使って考えることが提案力の底上げにつながります。
なぜこのフレームワークを使うかを理解した上で分析を進めると、各要素を書く際の基準が明確になります。「これは本当に内部の強みか」と問いながら埋めることが精度を高めます。
SWOT分析と自治体の実践では、各要素を「一文で表現する」習慣が有効です。「コミュニケーション力がある」ではなく「3人以上のチームをまとめた経験が2件ある」のように、短く・具体的に・事実ベースで書くことが、クロスSWOT分析への接続をスムーズにします。
自治体向けSWOT分析の作り方:市民参加・若者参画を組み込む手順
自治体のSWOT分析を「使える分析」にするためには、市民・若者の参加が重要です。行政職員だけで行うSWOT分析は「内部視点の偏り」が起きやすいため、外部の視点を積極的に取り込みます。
STEP1:テーマ別のグループを作る(農業・観光・移住・高齢化・教育など)。STEP2:付箋を使ってブレインストーミング(各自の認識を付箋に書く)。STEP3:付箋を4象限に分類・整理する。STEP4:グループ発表→全体でのすり合わせ。STEP5:SWOT表にまとめてクロスSWOT分析に進む。
若者は「この地域から出て行く側」の視点を持つため、「なぜ若者が地域を離れるのか(弱みと脅威の発見)」という貴重な視点を提供できます。また「どんな地域なら戻りたいか」という観点から機会を発見することもできます。自治体のSWOT分析ワークショップへの若者参加は、地方創生の当事者意識を高める効果もあります。
自治体の行政職員だけでは気づきにくい「外部環境の変化」を、地域外の専門家・研究者・NPOの視点で補完します。大学との連携では、学生のフィールドワーク結果をSWOT分析に組み込むことで、若者視点と学術的根拠が加わります。
実際に手を動かしてみると、「強みと思っていたものが実は思い込みだった」と気づく瞬間があります。その気づき自体が、SWOT分析の重要な効果のひとつです。
自治体のSWOT分析事例:総合計画・まちづくり計画への導入実例
実際に自治体がSWOT分析を活用した計画策定の実例を紹介します。実際に例を2つ挙げます。
- ある地方市の産業振興計画策定プロセス:市民ワークショップ・経済団体ヒアリング・大学との共同調査を経てSWOT分析を実施。強み(地場産業の高い技術・豊富な農産物・観光資源)×機会(インバウンド拡大・DX化への補助金・移住支援策)→SO戦略として「地域特産品の海外EC展開と体験型観光の一体化」という産業振興の重点施策を設定。
- ある中山間地域の自治体が大学と連携し、学生20名が3日間のフィールドワークを行い、地域住民へのヒアリング・RESASデータ分析・現地調査を基にSWOT分析を作成した事例。学生視点からの「強みの発見」(地域の人々の暖かさ・農業体験の貴重さ)が、それまでの行政視点の分析では出てこなかった新しい強みとして計画書に採用されました。
2022年以降、「デジタル田園都市国家構想」に対応した自治体計画でSWOT分析が活用されるケースが増えています。「デジタル化の機会(DX推進補助金・テレワーク環境整備)」と「デジタル対応の弱み(高齢者のデジタルデバイド・行政システムの老朽化)」を整理することで、デジタル田園都市実現に向けた施策の優先順位が明確になります。
SWOT分析と自治体に取り組む際、最初から完璧な表を作ろうとせず「ドラフト→レビュー→修正」という流れで進めることをすすめます。一度書き出してから客観的に見直すと、「これは本当に強みか」「機会と脅威の分類は正しいか」という視点が生まれ、精度が高まります。
自治体のSWOT分析に若者・学生が関わる方法と実践的なアクション
SWOT分析と自治体を実践で使う上でよくある失敗と、それを防ぐための具体的なアプローチを紹介します。
よくある失敗の一つ目は「分析対象が広すぎる」ことです。「会社全体」「地域全体」という漠然とした対象では、情報が散漫になり使えない表になります。「この事業の新規顧客獲得」「この地域の農業観光」のように具体的に絞ることが精度を高める第一歩です。
二つ目は「強みを過大評価すること」です。「コミュニケーション力がある」という記載は強みになりません。「3人以上のチームマネジメント経験が2件ある」「関係者20名のイベントを主導した」のように、比較可能・検証可能な形で書くことが必要です。
三つ目は「外部環境の主観的な解釈」です。機会・脅威は「自分たちに都合のよい情報だけを集める確証バイアス」が働きやすい領域です。PEST分析やRESAS(地域経済分析システム)などの客観的なデータを使って外部環境を整理することで、分析全体の信頼性が高まります。
また、一度完成した分析を時間をおいて見直すことも有効です。最初は見落としていた要素が後から見つかることも多く、ドラフト→見直し→修正という二段階で進めることが実践的なアプローチです。分析対象が変わっても同じステップが使えるため、繰り返し使うことでスキルとして定着します。
よくある質問(FAQ)
Q: 自治体がSWOT分析を総合計画に取り入れるとき、住民にどう説明すればわかりやすいですか?
A: 「地域の現在地(強み・弱み)と周囲の環境(機会・脅威)を一枚の表で整理するツールです」という説明が最もシンプルです。専門用語を使わず、「強み=この地域が得意なこと」「機会=外から来ているチャンス」のように言い換えることで、住民ワークショップでも使いやすくなります。付箋を使ったグループワーク形式が住民参加型のSWOT分析では最も効果的で、「自分の意見が反映される」という実感が参加者のエンゲージメントを高めます。
Q: 自治体のSWOT分析を若者・学生チームが行う場合、地域住民と視点が違いすぎて困ることがあります。どう調整すればいいですか?
A: 視点の違いはむしろ強みです。住民が「当たり前」と感じているものを、外からの若者が「強み」として発見するケースは多く、これがSWOT分析の価値の一つです。調整方法としては、①若者チームが独自にSWOT表を作成した後、住民代表と合同でレビューする②「若者目線の強み」「住民目線の強み」を別々に書き出してから統合する、という二段階プロセスが実践的です。意見の違いを対立ではなく「異なる情報源」として捉えることが重要です。
Q: 大学生が自治体のSWOT分析ワークショップに参加する方法はありますか?
A: ①自治体の市民参加型計画策定ワークショップへの応募(自治体のホームページで公募)。②大学と自治体の連携プログラム(ゼミ・フィールドワーク・インターン)への参加。③地方創生コンテスト(FLASPO・各省庁主催)への応募。④地域のNPO・まちづくり団体への参加。これらを通じて自治体の政策プロセスに関わる機会が増えています。
Q: 自治体のSWOT分析に若者が参加することの具体的なメリットは?
A: 若者側のメリット:①実際の政策立案プロセスを学べる。②地域課題の深さを体感できる(地方創生への理解が深まる)。③大学のゼミ・就活のガクチカ・ビジコンの事例として活用できる。自治体側のメリット:①若者の視点から新しい強みや機会が発見できる。②計画への市民(若者)の共感・当事者意識が生まれる。③将来の移住・就職・関係人口候補としての若者との関係構築。
Q: 自治体のSWOT分析は外部に公開されていますか?参考にできますか?
A: 多くの自治体は総合計画・地方版総合戦略を公式サイトで公開しています。「〇〇市 総合計画 SWOT分析」などで検索すると、実際の自治体のSWOT分析事例を参照できます。内閣府・総務省の地方創生ポータルサイトにも優良事例が掲載されています。ビジコンや授業での地域分析の参考資料として活用できます。
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