プレゼンスライドの作り方の大前提──「主役は話し手」という発想の転換
スライドを作り始めるとき、多くの人が「スライドに全部書けばいい」という発想で取り組んでしまいます。その結果、文字がびっしり詰まったスライドが完成し、聴衆は「どこを読めばいいの?」と迷いながら、話し手の声を聞き逃してしまいます。
プレゼンスライドの大原則は「主役は話し手であり、スライドはあくまで補助資料(脇役)」だということです。テレビの情報番組のフリップを思い浮かべてみてください。文字がびっしり詰まったフリップは見たことがないはず。キーワードと図解で直感的に理解できるつくりになっています。
スライドに書くのは「キーワード・データ・図」だけで十分で、細かい説明は話し手がします。この役割分担を理解するだけで、スライド作りの方向性がガラリと変わります。「このスライドがなくても、この言葉を話せるか?」を常に問いかけながら制作することが、シンプルで伝わるスライドへの近道です。
主役が話し手だと考えると、スライドの役割は補助線に変わります。話す内容を全部書いてしまうと、聞き手は読むほうに意識を取られ、話し手は不要になります。書かないことを決める作業が、スライド作りの中心です。
この発想の転換ができているかどうかは、資料を見れば一目でわかります。読めば全部わかる資料は、配布物としては優秀でも、発表用としては話し手の居場所がありません。読ませる資料と見せる資料は別物だと分けて考えてください。
スライドの作り方4ステップ──目的設定→構成→デザイン→見直しの正しい順番
スライドを作る前にPowerPointを開いてはいけない。まず「何のために作るか」から始めることが、完成度を大きく左右します。
「このプレゼンで聴衆に何をしてほしいか」を一文で書きます。この目的がスライドの内容選択の判断基準になります。
スライドの内容を紙に書き出します。「タイトル→目次→本論(各ポイント)→まとめ」という流れで、各スライドで言いたいことを一文ずつ書きます。この段階でパソコンは開かない。
構成が決まってからPowerPointやCanvaを開き、各スライドのレイアウトを決めます。「1スライド1メッセージ」「フォントはゴシック24pt以上」「色は3色以内」が基本ルールです。
完成したら、一度「聴衆の立場」で全スライドを見直します。「意味がわかるか」「情報が多すぎないか」「流れは自然か」を確認し、削ぎ落とすことを惜しまない。
4ステップで最も省かれやすいのが、最後の見直しです。作り終えた直後は良く見えるので、一晩おいてから見返してください。翌日に見ると、削れる要素がいくつも見つかります。
目的設定を飛ばして構成に入ると、後で必ず戻ることになります。順番を守るのは面倒に見えて、結局いちばん速い進め方です。
伝わるスライドのデザイン3原則──フォント・色・余白の正しい使い方
デザインの知識がなくても、3つの原則を守るだけで「それっぽく見える」スライドが作れます。デザインで大事なのはセンスより「ルールを守ること」です。
プレゼン資料に明朝体は不向きです。スクリーンに投影すると文字がかすれ、読みにくくなります。Windowsなら「メイリオ」または「游ゴシック」、Macなら「ヒラギノ角ゴシック」が推奨です。本文の最小フォントサイズは24ptを目安にします。「後ろの席の人でも読めるか」を基準にしましょう。
使用する色は「メインカラー(強調色)1色+サブカラー1色+背景色(白か黒)」に限定します。色を増やせば増やすほど「煩雑」「まとまりがない」という印象を与えます。強調したい箇所だけにアクセントカラーを使い、それ以外は同じ色で揃えます。
スライドの情報密度は低いほどよい。1スライドあたりのテキスト量は目安として100文字以下を目指します。「もっと情報を入れなければ」という強迫観念を捨てて、見やすい余白を意識しましょう。余白は「空白」ではなく「呼吸」です。
3原則のうち、最も効果が出るのは余白です。詰め込みをやめるだけで、同じ内容でも読みやすくなります。デザインの鉄則で詳しく扱っています。
スライドで「見せる化」するグラフと図解の正しい選び方
「数字はただ並べるより見せる化する」のがスライド作りの鉄則です。データを視覚化することで、聴衆が情報を処理するスピードが格段に上がります。
・「時系列の変化を見せたい」→折れ線グラフ
・「複数のものを比較したい」→棒グラフ
・「全体の中の割合を見せたい」→円グラフ
・「2つの相関関係を見せたい」→散布図
グラフを使う際のポイントは「タイトルに結論を書く」ことです。「売上が30%増加した」とタイトルに書いてグラフで示すと、聴衆が一瞬で内容を把握できます。
流れや手順を説明するときはフロー図、2軸で分類するときはマトリクス図、重なりや共通点を示すときはベン図が有効です。図解を使う前に「言葉でうまく説明できるなら図解は不要」と判断する習慣をつけよいます。無理に図解化すると、かえってわかりにくくなることがあります。
FLASPO MAGAZINEで紹介するビジコン入賞チームのスライドも、この「見せる化」が徹底されています。
グラフと図解の使い分けは単純です。数値の大小を示すならグラフ、関係性を示すなら図解。どちらでもない情報は、そのまま文字で置いたほうが速く伝わります。
図解を入れるかどうか迷ったら、その内容を言葉だけで説明してみてください。3文以上かかるなら、図にしたほうが速く伝わります。
大学生のスライド作り方Q&A──ビジコン・ゼミ発表・就活の場面別ポイント
プレゼンスライドの作り方は場面によって変わります。よくある疑問に答えるQ&A形式で、場面別のポイントをまとめます。
A. 一般的に5〜10分の発表であれば、スライドは7〜15枚が目安です。「1枚1分」を基準にすると、持ち時間に合わせた枚数が自然と決まります。情報を詰め込みすぎず、各スライドの内容を1つのメッセージに絞ることが重要です。
A. ゼミ発表は「研究の正確性と論理展開」が評価基準のため、データと引用を丁寧に示す必要があります。一方、就活の自己PRスライドは「簡潔さ・具体性・インパクト」が重要で、テキストより図や写真を使った視覚的な訴求が有効です。
A. 積極的に使うべきです。PowerPoint・Googleスライド・Canvaにはデザイン済みのテンプレートが多数用意されており、デザインの基礎知識なしでも統一感のあるスライドが作れます。テンプレートを「出発点」として使い、色・フォント・メッセージをカスタマイズするのが効率的です。
スライドを作る力は、FLASPOのTRYで自分のアイデアを整理して届ける際にもそのまま活きます。地域・企業の課題に対して視覚的に伝わるアイデアをまとめる経験を、FLASPOのコンテストで積んでみましょう。選ばれたアイデアには賞金や地域訪問の機会も用意されています。
場面別では、ビジネスコンテストは根拠を厚く、ゼミ発表は前提を丁寧に、就活は自分の判断を中心に。配分を変えるだけで、同じ型が使い回せます。
どの場面でも共通するのが、提出前に投影して確認することです。手元の画面で整って見えても、投影すると文字が小さすぎたり、色が飛んだりします。一度でも映して確認しておくと、当日の事故が減ります。
身につけた考え方は、実際のお題で一度使ってみると定着します。自治体や企業が出したお題に企画を応募できるFLASPOのTRYで、募集中のものを探せます。
