Adobe XDとは?かつてのUI/UXデザインツール
少し前まで多くのデザイナーが使っていたのに、今ではあまり名前を聞かなくなったツールがあります。それがAdobe XDです。かつてAdobe社が提供していたUI/UXデザインツールで、WebサイトやアプリのUI設計から、実際に操作できるプロトタイプの作成まで、一つのソフトで完結できる点が特徴でした。
ただし2026年7月時点では、Adobe XDは新規ユーザー向けの単体販売がすでに終了しており、これから学び始めるツールとしては積極的に推奨できない状況にあります。かつてはPhotoshopやIllustratorと並ぶAdobeのデザインツール群の一角として紹介されることも多く、UIデザインの入門ツールとして名前を挙げる記事も少なくありませんでした。しかし現在その位置づけをそのまま参考にすると、実際には入手できないツールを目指してしまうことになりかねません。
情報が古いまま更新されていないWebサイトや記事も少なくないため、ツール選びの際は公開日や更新日を確認する習慣も大切です。大学の授業で「UIデザインツールの代表例」としてAdobe XDが紹介されている教材も一部残っており、情報の更新が追いついていないケースも見受けられます。学ぶ際は、教材の発行年も確認する習慣をつけるとよいでしょう。情報の鮮度を見極める習慣を持っておくことが、変化の速いデザインツール業界で振り回されないための防御策になります。
Adobe XDの現在の提供状況
Adobe XDは2023年6月に単体アプリとしての新規販売が終了し、2024年初頭にはAdobeが「今後の機能開発への投資を行わない」ことを正式に表明しました。現在は「メンテナンスモード」という位置づけで、既存のCreative Cloud All Appsサブスクライバーには引き続き提供されていますが、新規機能の追加は行われていません。
新しくアカウントを作成してAdobe XDを単体でダウンロードすることはできず、Creative Cloud All Appsプランに含まれる形でのみアクセス可能です。これからUI/UXデザインを学ぶ人にとって、Adobe XDは現実的な選択肢とは言えなくなっています。Adobe自身も、現在の公式な案内としてXDを新規学習者に積極的に勧める姿勢は取っていません。
ツールを選ぶ際は、必ず各サービスの公式サイトで現在の提供状況を確認する習慣をつけることが大切です。Adobeの公式コミュニティフォーラムでは、既存ユーザーからも「新規インストールができなくなった」「Creative Cloudのアプリ一覧から見えなくなった」といった報告が多数寄せられており、実務上のサポートも縮小傾向にあることがうかがえます。サポートが縮小したツールを学習の入り口に選んでしまうと、疑問点を調べても最新の解決策が見つかりにくいという実務上の不便も生じます。こうした一連の出来事は、テクノロジー業界における競合とM&Aの動きが、個々のツールの寿命に直接影響を与えることを示す典型的な例といえます。
なぜAdobe XDは開発終了に至ったのか
Adobe XDが開発終了に至った背景には、いくつかの要因があります。
一つめは、Figmaとの競争激化です。ブラウザベースで共同編集に強いFigmaが業界標準として急速に普及し、Adobe XDのユーザー基盤が縮小していきました。二つめは、Adobe自身のFigma買収計画です。Adobeは2022年にFigmaの買収を発表しましたが、独占禁止法上の懸念から2023年に計画は撤回され、多額の解約金を支払う結果となりました。三つめは、開発リソースの再配分です。買収計画の失敗後、AdobeはXDへの投資を打ち切り、Illustrator・Photoshop・Adobe Expressといった既存製品の強化と、AI機能(Adobe Firefly)へ開発の重心を移しています。
この経緯は、デザインツールの世界がいかに速いスピードで変化しているかを示す象徴的な事例でもあります。数年前の情報をそのまま信じず、常に最新の状況を確認する姿勢が求められます。Figmaへの買収計画が独占禁止法上の理由で撤回された際、Adobeは巨額の解約金を支払う結果となり、この一件がAdobeのUIデザインツール戦略全体を見直す契機になったとも指摘されています。買収計画の撤回は業界内でも大きな話題となり、UIデザインツール市場におけるFigmaの優位性を一層印象づける出来事になりました。この一連の流れを知っておくと、なぜ今Figmaが標準になっているのかという背景も理解しやすくなります。
これからUI/UXデザインを学ぶ人が取るべき選択
これからUI/UXデザインを学び始める場合は、現在も活発に開発が続いているツールを選ぶことが重要です。
一つめは、Figmaを選択肢の中心に据えることです。ブラウザベースで無料プランもあり、業界標準として最も広く使われているため、学習リソースも豊富です。二つめは、Adobe製品との連携を重視するならIllustratorです。ベクターデザインの基礎を学びたい場合は、現在も開発が続いているIllustratorが選択肢になります。三つめは、既存のAdobe XDファイルがある場合の対応です。過去にAdobe XDで作成したファイルは、Figmaなど他のツールへの移行を検討する必要があります。FLASPOのような地域コンテストのアイデア提案などでUI画面のイメージを作る場合も、現在はFigmaを使うのが現実的な選択です。
ツールは今後も入れ替わっていく可能性があるため、特定のソフトの操作方法だけでなく、UI/UXデザインの基礎的な考え方を身につけておくことが、長期的には最も応用の利くスキルになります。ツールの操作方法を覚えることよりも「なぜこの配置が使いやすいのか」「情報をどう整理すれば伝わるか」といった普遍的な考え方を身につけておけば、今後別のツールに切り替わっても対応しやすくなります。操作画面が変わっても本質的な考え方は変わらないため、基礎さえ押さえておけば新しいツールへの移行もスムーズに行えます。
よくある質問(FAQ)
Q. Adobe XDは今から新規で使い始められますか?
A. 単体アプリとしての新規販売は終了しており、既存のCreative Cloud All Appsサブスクライバー以外は新規に入手できません。すでにAll Appsプランを契約している場合は引き続き利用できますが、これから新しく契約してXDだけを目的に使うことは想定されていません。
Q. Adobe XDの代わりに何を学べばいいですか?
A. 現在最も広く使われているFigmaが第一の選択肢です。無料プランもあり、学習リソースも豊富です。操作感がAdobe XDに近い部分も多く、これまでAdobe製品に触れてきた人でも比較的スムーズに移行できます。
Q. Adobe XDはいつ完全になくなりますか?
A. 明確な終了時期は公表されていませんが、新規機能開発は行われておらず、長期的な利用は推奨されません。最新情報はAdobe公式サイトで確認してください。デザインツールは数年単位で栄枯盛衰があり、ある時点で「定番」とされていたツールも、数年後には状況が変わっていることが珍しくありません。学習を始める前には、必ずAdobeおよびFigmaなど各社の公式サイトで現在のプラン内容を確認する習慣をつけましょう。
Adobe XDは、かつてUI/UXデザインの現場で広く使われていたツールですが、現在は新規販売が終了し、事実上の開発終了状態にあります。これからUI/UXデザインを学ぶのであれば、Figmaを中心に据え、必要に応じてIllustratorなど他のツールを組み合わせるのが現実的な選択です。ツールの栄枯盛衰が激しい分野だからこそ、特定のソフトの操作よりも、伝わる配置や整理の考え方といった基礎を身につけておく姿勢が長期的には役立ちます。
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