「グロース」という言葉が指す意味を理解する
ベンチャー企業の求人票や採用サイトで、「グロース」という言葉を目にすることが多くあります。グロースとは、英語の「Growth」、つまり「成長」を意味する言葉であり、事業やサービスの利用者数、売上、企業価値などを継続的に拡大させていく取り組み全般を指す言葉として使われています。
単に「事業を成長させる」という漠然とした意味だけでなく、データに基づいて仮説を立て、施策を実行し、その効果を検証するというサイクルを高速に回すことで、効率的に成長を実現しようとする、より実践的な考え方を伴う言葉として使われることが多いのが特徴です。マーケティングや営業だけにとどまらず、プロダクト開発やカスタマーサクセスなど、複数の職種が連携して取り組むテーマとして位置づけられています。
就活生にとっては、「グロース」という言葉が、単なる抽象的なスローガンではなく、具体的な職種名や部署名として存在するケースも多いことを理解しておくことが重要です。この記事では、グロースという考え方の中身と、それに関わる職種の役割について解説していきます。
「グロースチーム」や「グロース部門」といった名称で組織図に明記している企業もあり、こうした部署の存在は、その企業が事業成長に対してどれだけ組織的に取り組んでいるかを示す一つの指標にもなります。就活生としては、志望企業の組織構成にも目を向けてみるとよいでしょう。
採用ページの職種一覧に「グロースマネージャー」「グロースエンジニア」といった名称が並んでいる場合、その企業がグロースを専門的な業務として体系化していることの表れです。こうした具体的な職種名にも注目しながら企業研究を進めるとよいでしょう。
グロースを担う専門職の広がり
近年、多くのベンチャー企業で「グロースハッカー」や「グロースマーケター」といった、グロースを専門に担う職種が設置されるようになってきました。こうした職種は、データ分析の知見とマーケティングの知識を組み合わせながら、限られた予算やリソースの中で、いかに効率よくユーザー数や売上を伸ばすかを追求する役割を担います。
グロースを担う職種の特徴は、単一の施策に固執せず、多くの仮説を短期間で検証し、効果のあるものを見極めていくという実験的なアプローチを重視する点にあります。広告運用やSNSでの発信、価格設定の見直し、プロダクト内の導線改善など、多岐にわたる施策を組み合わせながら、成長のボトルネックとなっている要因を特定し、一つずつ解消していく地道な作業が求められます。
就活生としては、こうしたグロースを担う職種に興味がある場合、データを扱う分析力だけでなく、仮説を立てて素早く検証するスピード感、そして施策がうまくいかなかった際にも粘り強く次の仮説を試し続ける忍耐力が求められることを理解しておくとよいでしょう。
また、グロースの現場では、部署の垣根を越えて周囲を巻き込みながら施策を進める場面が多くあります。就活生としては、こうした職種で活躍するために、コミュニケーション能力や調整力もあわせて磨いておくとよいでしょう。
グロースの成果は、一人の力だけで生み出されるものではなく、チーム全体の連携によって初めて実現するものです。就活生としては、個人としての分析力だけでなく、チームで成果を出す経験を積んでおくことも、選考でのアピールにつながります。
グロースの前提となる「PMF」という考え方
グロースというテーマを理解するうえで欠かせないのが、次の記事で詳しく解説する「PMF(プロダクトマーケットフィット)」という考え方との関係です。PMFとは、提供するプロダクトやサービスが、特定の市場のニーズに適合し、顧客から強く求められている状態を指す言葉です。
一般的に、グロースに本格的に取り組むのは、このPMFが達成された後の段階であるとされています。プロダクトが市場にまだ適合していない段階で、無理に広告費を投じてユーザー数を増やそうとしても、多くのユーザーがすぐに離脱してしまい、効果的な成長にはつながりにくいという考え方が背景にあります。
就活生としては、志望する企業が現在、PMFを達成した段階にあるのか、それともまだPMFを模索している段階にあるのかによって、グロースに関わる業務の性質が大きく異なる点を理解しておくことが重要です。企業の成長段階を意識した企業研究を進めることをおすすめします。
PMFという言葉の詳しい意味については次の記事で改めて解説していきますが、グロースとPMFはセットで理解しておくべき重要な概念です。企業がどちらの段階にあるのかによって、求められる働き方や成果の出し方も大きく変わってきます。
説明会や採用ページで「グロースフェーズ」という表現を見かけたら、その企業がすでにPMFを達成し、事業拡大に本格的に取り組んでいる段階にあると理解してよいでしょう。こうした表現の違いにも注目してみてください。
グロースに関わる職種で求められる資質
グロースに関わる職種で活躍するためには、いくつかの資質が求められます。まず、データを客観的に読み解く分析力です。感覚や経験則だけに頼るのではなく、実際の数字に基づいて施策の効果を判断し、次のアクションを決定していく姿勢が欠かせません。
また、複数の部署や職種をまたいで連携する調整力も重要です。グロースの取り組みは、マーケティング部門だけで完結するものではなく、プロダクト開発部門や営業部門、カスタマーサクセス部門など、さまざまな立場の人々を巻き込みながら進める必要があります。異なる専門性を持つ人々と円滑にコミュニケーションを取りながら、共通の目標に向かって施策を進めていく力が求められます。
就活生としては、こうした資質を自分自身がどの程度持ち合わせているかを自己分析しておくとともに、学生時代にデータを活用した経験や、複数の関係者を巻き込んでプロジェクトを進めた経験があれば、それを具体的なエピソードとして整理しておくとよいでしょう。
サークル活動やアルバイトの中で、数字を用いて改善提案をした経験や、複数のメンバーをまとめてプロジェクトを推進した経験があれば、それらはグロース職種の選考においても十分にアピール材料になります。
特別な経験である必要はありません。日常の中で「なぜこうなっているのだろう」と疑問を持ち、データや事実を集めて自分なりの仮説を立てた経験があれば、それもグロース的な思考の芽生えとして評価される場合があります。
グロースというテーマへの向き合い方
グロースというテーマは、華やかな成功事例が語られることが多い一方で、実際には地道な検証作業の積み重ねであるという実態も理解しておく必要があります。多くの施策は期待した効果を生まず、うまくいかない仮説の方が、うまくいく仮説よりもはるかに多いというのが、グロースに関わる実務の現実です。
就活生としては、こうした試行錯誤のプロセスを前向きに捉え、失敗を恐れずに次々と仮説を試していける姿勢を持てるかどうかを、自分自身に問いかけておくとよいでしょう。短期間で成果が出ないことに焦りを感じやすいタイプの人にとっては、精神的な忍耐力が求められる場面も多いテーマです。
次の記事では、グロースの前提となる「PMF」というテーマについて、より具体的に掘り下げて解説していきます。プロダクトが市場に適合するとはどういう状態を指すのか、あわせて理解を深めていきましょう。
グロースというテーマは、就活生にとって少し専門的に感じられるかもしれませんが、実際の業務の中で日々向き合う身近なテーマでもあります。焦らず一つずつ理解を積み重ねていってください。
グロースという考え方を理解しておくことは、グロース職種を志望しない学生にとっても無駄にはなりません。事業を成長させるという視点は、営業やプロダクト開発など、あらゆる職種において共通して求められる重要な思考法だからです。
どのような職種を志望するにしても、事業全体の成長にどう貢献できるかという視点を持っておくことは、面接の場でも評価されるポイントになります。ぜひこの視点を大切にしてください。
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